魔王84 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サト・・そうです。

ストームでの僕の名前・・」

 

呟くような微かな声・・

 

「あなたは・・・やはり・・

そうだったのですね。

俺は、全然わからなかった。

丸い大きな眼鏡と、

サラサラのおかっぱ頭。

何も言わずに、

静かに後ろで、

メンバーの話を聞いていましたね。

カズがいつもそばで

あなたの世話を焼いていた。」

 

成瀬さんが、そっと

自分の手を握っていた

俺の指を解く。

 

「ストームに

僕の居場所はなくなった。

グループの進む方向に

僕は必要なくなっていたから。」

 

淡々とした言葉・・

 

「そ、そんなことはないでしょ!」

 

あのイベントで俺は初めて見たけど、

サトのダンスと歌は素晴らしかった。

普段の姿からは想像もできなかった。

 

「櫻井さん、あなたもサトである僕には

なんの興味も示さなかった。

いえ、存在すらなかったでしょう。

だって一度も会話したことないですよね。」

「うっ・・い、いやそれは・・・

そもそもカズが・・」

「いいんです。みんなそうだから。」

 

ふっと自虐的な笑みを浮かべる貴方。

 

「な、成瀬さん・・」

「あいつらが、

自分たちの欲を

満たすために作ったロボット成瀬領。

成瀬領になっている時の僕は

幸せだった。

皆が僕を見てくれたから。

名前を呼んで、

甘い嘘を囁いてくれるから。

愛しているって・・・

僕に天国を見せてくれた。

僕を女王様のように扱ってくれた。

 

 

僕と櫻井さんの出会いは最悪でしたよね

カズが目撃者である櫻井さんを脅すために

罠を仕掛けて、

僕を抱かせたっていう、ふふ。

よく覚えています。

自分が抱いている相手が

男だったって知った時の

櫻井さんの驚いた顔を。

でも、

あの夜から

僕は櫻井さんを忘れられなくなった。

初めてでした。

あんなに溺れたのは。

体には相性があるって

聞いたことがあったけど、

本当なんだって実感しました。

だから、カズに頼んで、

何回も櫻井さんを騙してしまった。

抱かれたくて我慢できなくて。

 

僕の欲望のために苦しめた。」

 

な、成瀬さん・・

いや、本当はサトか・・

ううん、俺にとって彼は成瀬さん・・

成瀬領・・・

 

俺が出会って、夢中になった人。

それが作られた架空の人間だったなんて・・

 

「それなのに、

櫻井さんは僕のことが好きだと、

僕と会いたいと・・・・

僕は怖かったんです。

僕は、女王様のように男たちにふるまい、

それによって、

感じるようにしつけられてきた。

最初は怖くてできなかったのに、

段々その快楽に溺れていって・・

もう僕は昔のサトには戻れない

だから、ストームは辞めます。

その方がいいんです。」

 

下を向いているからその表情は見えない。

でも、その声は震えている。

 

「なんで・・なんで・・

ストームはこれからです・・

あなたがいなければ

ストームは立ちいかなくなる。」

「そんなことは絶対にないです。」

「成瀬さん・・俺は・・・

俺はあな・・・・ううう‥痛い」

 

興奮してまた腹に力が入ってしまったらしい。

ズンと腹に響く痛みが襲う。

 

「櫻井さん、

僕がいるとあなたの体調に悪いようですね。

帰ります。」

「な、成瀬さん・・待って・・」

「おやすみなさい、櫻井さん。」

 

伸ばした俺の腕は空を切り、

彼は、振り返ることもなく

静かに部屋を出て行った。