リフレイン 透明な光 14 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当日は快晴だった。

 

俺は、以前智から

よく似合うよと褒められたシャツと

ジャケットを羽織った。

 

「智、行ってくるよ。

紅嵐先生の作品を飾る場所を見てくる。

智の入選した作品も飾ろうな。」

 

智の写真に話しかけると、

ふふっと笑ったように見えた。

 

 

 

 

 

 

「あっ、成瀬さん!こっちです。」

 

俺は、駅前の通りを

向こうから歩いてくる彼の姿を見つけて

大きく手を振った。

待ち合わせしたのは、

俺のマンションの最寄り駅。

俺が、自宅まで迎えに行くと言うと、

彼はそれを固辞した。

 

「本来であれば、

こちらがお迎えに行く立場です。

櫻井さんのご自宅まで伺います。」

 

自宅に行く、

いえ、それは申し訳ないの平行線から、

では駅でとなったんだ。

 

 

「おはようございます。櫻井さん。

申し訳ありません、お待たせして。」

 

小走りに掛け寄ってきた成瀬さんは、

すぐに頭を下げる。

 

「遅れてないですよ、成瀬さん。

俺が早すぎただけです。」

 

俺はにこりと笑って、

停めた車に案内した。

あれ?さっき彼、

改札から出てきていない?

どこに行ってたんだろう?

しかし、車に乗った途端に

そんなことは忘れていた。

 

伊豆に向かう車中では、

彼とたわいのない話で会話が弾んだ。

彼は話を引き出すのが上手だった。

 

俺は、聞かれるままに仕事の苦労話や、

紅嵐先生と出会った事件のことなどを

話していた。

しかし、俺が聞きたかった彼のことは、

全く聞けないまま

目的地についていた。

 

「櫻井さん、あの建物です。」

「あれ?想像と全然違う。

これ、財前教授の

趣味じゃないですよね!」

 

失礼な感想がぽろりと、

口からこぼれる。

 

財前教授の伊豆の別荘は

駅に近い高台にあった。

レンガ造りの洋風建築の建物で、

柵でできた小さな門から建物に続く道は

木立の中を通るようになっていて

とてもお洒落だ。

 

「可愛いですね。女性が喜びそうだ。」

 

口にしてから

財前教授は女性に興味がないってことに

気が付いた。

 

「既存の物を買ったのですか?」

「違います、櫻井さん。

先生が20年前に

昔のものを建て替えられたのです。」

「そ、そうなんですね。

で、でも教授のイメージじゃないので

つい・・すみませんでした。」

「櫻井さんは、

先生とあまり仲が良くなかったって

聞きました。」

 

成瀬さんがくすっと笑う。

初めてみた、成瀬さんの顔に

俺はドキとして思わず顔を背けていた。

 

「中にはいりましょうか。」

成瀬さんは、

そんな俺を気にすることもなく、

いつもの表情に戻って

先に玄関に向かって行った。

 

 

「とてもいい物件でした。

財前教授に感謝します。」

「それはよかったです。

先生は大野さんのことが大好きでしたし、

いつも、紅嵐先生の才能を

もっと世に示したいと

おっしゃっていましたから。

櫻井さん、

財前先生の想いを

どうぞ、叶えてください。」

 

俺は、財前教授の別荘ということで、

改装を念頭に置いていたが、

いい意味で裏切られたことで、

嬉しくなっていた。

どうしても顔がにやける。

 

しかし俺は、彼、成瀬さんを見て驚いた。

いつも感情を見せることのない彼が、

静かに涙を流していた。