魔王82 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

さっき俺の前に現れたのは

本当は、そのことを

話すためだったんじゃないのか。

だったら、用件を済ませろよ。

悪態をつきながら、

何度か電話をしたが、カズは出なかった。

どこに行ったんだ、あいつは。

仕方ないまた掛けるか・・・

俺は携帯を置くと、疼く腹を摩った。

 

まだ、完治もしていない傷が

突然のストレスにキリキリと痛みだしていた。

医者も無理はするなと言ってたのに・・・・

 

くっそ、これじゃ寝られない。

明日出社できなくなる。

痛み止めが欲しい。

しかし、俺は元来丈夫で、

病休など取ったことがない。

二日酔いにもなったことがない体。

当然鎮痛剤などあるはずもない。

 

薬を買ってきてくれと、

また、雅紀を呼び出すわけにもいかず、

俺は、背に腹は代えらないと、

携帯だけを掴んで、マンションを出た。

 

薬局なんて引っ越してきてから、

行ったことがない。

この辺にあっただろうか?

えっと・・ドラッグストアは、どこに・・・

夢中でネット検索していた俺は、

目の前に立つ人物に全く気がつかなかった。

 

 

「よし、ここが一番近いな。

20分くらいなら楽勝だな・・」

 

痛む腹を押さえ、

気合いを入れて歩きだそうとした俺は、

目の前に佇む人に、やっと気が付いた。

 

「えっ・・どうして・・・・・」

 

いつものように黒いシャツに

黒いズボン姿の彼が、

じっと俺を見つめていた。

 

「櫻井さん、すみませんでした。

病院に行かないで・・」

「な、成瀬さん、どこにいたのですか?

電話に出てくれないから心配してたんです。」

「色々と有って・・、

櫻井さん、怪我の具合はいかがですか?」

 

すみませんと謝っているのに、

俺の怪我を案じているのに、

その言葉に感情が感じられない・・・

俯いているので、その表情もよく見えない。

 

「一体、何があったのですか?

俺が気を失って倒れた後に・・いったい・・

芹沢とは話がついたのですか?」

「櫻井さん、そんなに興奮しないほう。

傷口が開きます。」

「へ、平気です。

成瀬さん、俺はあなたが・・・

心配なんだ・・・うう・・うっ・・」

 

興奮したせいか、腹に力が入って

ブチんと鈍い音がしたような気が・・

すると激痛が・走る。

 

「櫻井さん、大丈夫ですか・・」

 

うぅっと唸って

俺は腹を押さえてうずくまった。

俺の体を支えるように彼の手が

腰に回ったことは分かったが、

俺はうずくまったまま立ち上げれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「すみませんでした、迷惑かけて・・」

「そんなことないです。

元はといえば櫻井さんに

無理なお願いをした

こちらが全部悪いのですから。

危険な男と知りながら、

櫻井さんを芹沢に合わせたのは僕です。

本当にすみませんでした。」

 

最初にあったころとは段違いな低姿勢な彼。

それだけ、俺のことを信頼してくれてるんだ・・

痛いのに俺は顔が綻ぶ。

冷静に考えれば、

そんな都合よくいくはずないのに・・

 

「いいんだ、

成瀬さんの役に立てたなら、それで。」

 

俺の入院していた病院の

救急外来の処置室のベッドで、

俺は彼の手をそっと握りしめた。

 

「櫻井さん・・」

 

彼も、微笑んで俺の手を握り返す

俺は、意を決して彼に問いた。

 

「成瀬さん、おしえてください。

あなたは、ストームのサトなんですか?」

 

聞きたくはない・・

でも、

知らなくてはならないことだ。

成瀬さんがサトなら、

カズと一体何を企んでいたんだ・・

 

「櫻井さん、

そうだと言ったら、貴方も僕を捨てますか?」

「えっ・・」

 

俺は、想像もしなかった返事に、

ただ、ポカンと口を開けて固まった。