天使を見た記憶 いつか秒針のあう頃 D5 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵のことはともかく、

諸々のことから、

君は明日あの男には会いたくないはずだ。

絵がないとしたら、

またはもらえないと知ったら、

今のあの男は容赦なく君を非難し、

さらには絵を描けと

強要するかもしれない。

あの男と

会わせたくない。

 

 

「大野君、

私がここに来ることになったのは、

松本君に頼まれたことが発端だった。

いきなり櫻井君が来たら

君が動揺するだろう。

心配だと。

自分が行けないことが悔しいと・・・

だから私に頼むと・・・

彼は見た目と違って優しいね。

彼に頼まれた時、私は悩んだよ。

考えた。

久しぶりに自分に向き合った。

そして、ここに来た。

君を連れて帰ろうと決めたからだよ。

私のところに来て欲しい。

一緒に暮らしたい、君と。

君は十分苦しんだ。

これからは私が君を守る。

守らせてほしい。」

 

私は君の手を強く握りしめた。

君は、顔を上げてじっと私を見た。

泣きそうな顔で声を震わせる。

 

「俺・・そんな・・そんな・・・

資格・・な・・い」

 

君はいきなり立ち上がった。

私の手を振り払い、

速足でキッチンの隅にあったドアを開けると

その中に逃げ込む。

私もそのあとを追った。

 

「待って!」

 

開けた先はガレージだった。

しかしいまは

彼のアトリエになっているようだ。

壁には沢山のキャンバスが並べられ、

小さな机の上には、

絵の具や筆、パレットが所狭しと置かれていた。

そして、

君は1枚のキャンバスの前で

うずくまっていた。

 

「大野君・・」

 

後ろからそっと肩に手を置いた。

細いその肩が震えて、

小さく嗚咽が聞こえる。

 

「この絵がそうなんだね。」

「・・うう・・・・・うう・・」

 

私は絵に掛けられていた布に手をかけた。

布はするりと床に落ち、

その絵が露わになった。

 

「これは・・君の幸せだった記憶だね」

 

私は彼の横にしゃがみこむと

後ろから彼を抱きしめた。

 

「いいんだよ、

君はこの男を愛していたのだから。

嫌いになって別れた訳じゃない

まだ、気持ちの整理ができないのは当然だ。」

「最低・・だ、気持ち悪い・・

きっと翔は・・そう・・言う・・・。

別れたくせにこんな絵をかくなんて

・・最低だ・・って」

 

泣きながら、

自分に言い聞かせるように話す。

あの男に非難されることが、

怖くて辛いのか・・

すでに、君はあの男の中で

過去の汚点になっているというのに・

まだ、嫌われたくないのか・・

 

私は久しぶりに

怒りの感情が沸き上がるのを感じていた。