天使を見た記憶 いつか秒針のあう頃 D4 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、君が開けたドアを抑えると、

ゆっくりと静かに話しかけた。

 

「突然、訪問して悪かったね、大野君。

どうしても、

君と話がしたくて来てしまった。

少しだけ、時間が取れるかい?

私を中に入れるのが、嫌ならば、

そこに見える海岸を、

歩きながらでも構わない・・」

 

君が誰かと住んでいるってこともある・・

そう気が付いたのは、

ここに来る飛行機の中だった。

人見知りではあるが、

アイドルだったくらいだ、

魅力的であるし、

穏やかで、優しい君は、

昔から皆に声をかけられていた。

新しい恋をしているなら

それもいい・・・

 

「誰もいないから、先生。

ここに来るのは

大家のおばさんだけ・・

この家は

絵を描くために借りたアトリエだから・・」

 

しかし、君は

私の言いたいことがわかったようで、

誤解だと説明してくれた。

 

「どうぞ。」

 

4人がやっと座れるほどの

小さいダイニングテーブル。

君が珈琲を出してくれた。

 

「先生の淹れてくれた

美味しい珈琲が飲みたい・・」

 

私の前に座った君が、

ぽつりとつぶやく。

 

「いつでも淹れてあげるよ、

君が飲んでくれるなら。」

「先生・・」

 

君は驚いたように、

私を見た。

カップを持とうとしていた君の手を

私が掴んだから。

 

「今も一人なんだね?」

 

私の問いかけにコクンと頷く。

 

「実は、明日櫻井君がここにくる。」

「えっ・・・翔が・・」

 

やはり知らなかったようだ。

 

「君には彼が来る理由が

わかるかな?」

「わ・・わからない・・・

だって翔は俺のこと憎んでいるのに・・

結婚したってネットで見たし・・

余計・・会いたくない・・はず」

 

本当に分からないようで、

君は狼狽して、

必死に頭を捻っている。

結婚したことも

ネットの記事で知ったのか・・

では子供がいることはまだ・・・

 

「肖像画を取りにくるそうだ。」

「肖像画?な、なんで・・

俺の書いた絵なんていらないだろう・・」

 

私が松本君から聞いた経緯を話すと、

がっくりとうなだれた。

 

「翔の絵は・・ない・・

取りに来られても渡せない・・・」

 

かなりのショックを受けて

暗くなっている。

その落胆ぶりに

私は何か引っかかるものを感じた。

 

そもそも3人は描いて、

あの男は描かないなんてことは考えられない。

多分肖像画は君の皆への想い。

自分の手元に置きたかったもの。

では、どうして3人ところに贈られたのか・・

そうか・・・

君の意志ではなく贈られたのか・・・

君の中の別人たちの手で・・・