天使を見た記憶 いつか秒針のあう頃 D3 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

島の空港に降り立ったのは夕刻だった。

空は茜色に染まっていた。

私は、ふいに君の笑った顔を思い出した。

 

 

 

電話を受けてから、3日間

私は考え続けた。

そして、決めた。

見守る男からそばで支える男になると。

彼が誰かを忘れられないなら、

それでもいい。

でも、そばに居たい。

彼はもう十分に苦しんだ。

もういいはずだ。

そして私も彼を放っては

おけなくなっていた。

 

 

一度決めたら、

そのあとは迅速に動いた。

彼の居場所をまず知らなくてはならない。

そのために佐藤に協力を頼んだ。

そして、心を痛めていた一方の男には

自分が行くことを伝えた。

 

「松本君、君の言葉に決意した。

私が彼を支える。

それでかまわないか・・」

「柳田先生、お願いします。

あの人が幸せなら

俺はそれでいいんです。」

「明日、島に向かう。

向こうが着く前に

彼と会ってどうしたいのか、聞くつもりだ。」

「あの人は本心を隠す・・・

だから・・先生」

「わかっている。

よくわかっているから・・」

 

夜遅く自宅から掛けた電話。

絞り出すような声に

自分ができないってことが

辛く悲しいんだろう・・

わかりすぎる苦悩・・・・

その想いの深さがわかる。

 

彼だけじゃなかったのか、

苦しんでいたのは・・

私は、受話器を置くと目を伏せた。

 

 

 

 

旅客機を降りて、

観光客の人波に紛れるように外に出た。

私はタクシーに乗り、

佐藤から聞いた住所を告げた。

明日の便で島に来る男と君が会う前に

君の気持ちを確認したい。

会いたいのか、会いたくないのか。

今、一人になって

少しは元気になったのだろうか・・

 

 

「ここですね。」

 

運転手の言葉と同時に

タクシーが1軒の住宅の前で止まった。

 

「ありがとう。お世話様。」

 

私が車を降りるとすぐに

タクシーは走り去った。

 

 

目の前にあったのは、平屋の家

ビルトインガレージの洒落た作り。

私は、玄関の脇にあった鐘の鎖を引いた。

 

カラン・・カラン・・

 

「はい・・今行きます。」

 

10秒ほどで中から返事が返ってきた。

懐かしい君の声。

 

「なんですか・・・・・せ・・・先生・・」

 

ドアが開いて顔をのぞかせた君は、

私の顔を見た途端、言葉を詰まらせた。