魔王47 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

「どうぞ」

 

俺は、珈琲カップに添えられた

彼の綺麗な指に釘付けになった。

 

「ケーキ、いただきます。」

 

ケーキの箱を開けた

彼の動きが止まる。

 

「どうしましたか?

あっ、好きなのが無かったですか?

俺ケーキに疎くて・・」

 

心配になって声をかけた俺に

彼は首を振った。

 

「綺麗

このケーキ食べたかったんです。

どうしよう、全部素敵で選べない。」

 

頬がぽっと紅く染まって、

キラキラと瞳が輝いている。

綺麗なのはあなたですよと

口から出かかってどうにか抑えた。

 

「また買ってきますから。

順番に食べればいい。

俺が選びましょうか?」

「ハイ・・お願いします。」

 

俺の提案に素直にうなずくと

箱を俺の方にそっと動かした。

俺はその中から、

店の店員に聞いた

一番の売れ筋ケーキを取りだすと、

皿に乗せた。

 

「これが一番人気だそうです。

俺はこの2番人気のプリンにします。

食べましょう。

アッ、珈琲ありがとうございます。」

「いえ・・・

いただきます。」

 

恥ずかしそうに眼を伏せて、

ケーキを口に運ぶ彼。

ベッドの上でみせる妖艶な姿とは

あまりにかけ離れた姿に

俺は戸惑いながらも

さっきまでの敵意が

すっかり影を潜めたことに安堵していた。

 

「成瀬さん、俺とまた会ってくれますか?」

 

ケーキを食べ終えて、

珈琲カップを熱そうに吹いている彼に

俺は、頼んだ。

 

「ベッドをおりた僕は

何のとりえもない、

つまらない男です。」

 

彼は、

ぼそっと呟くように言うと、俺を見た。

また、元に戻ってしまったのか?と

思うような暗い目だった。

 

「成瀬さんは、素敵な人です。

俺、今日の成瀬さんと話せてよかったです。

いままで知らなかった成瀬さんを

見ることができたから。

成瀬さんて、

優しくて可愛いんだなあって。」

「そ、そんなことはない・・・」

 

さらに声が暗くなる。

 

「成瀬さん、

成瀬さんが

こんなにも自分に否定的なのは

何か理由があるのですか?」

 

ふっと頭の片隅に浮かんだことを

口にしただけだったけれど、

彼は過敏なくらいの反応を見せた。

 

「櫻井さん・・」

「成瀬さん?」

「助けてくれるのですか?」

「えっ・・」

 

またもや、想像もしなかった彼の言葉に

俺は、何も言えずにただ彼を見つめた。