魔王48 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

遅くなりました・・

 

 

カズ

 

 

 

 

「サト、上手くやれよ。

どっぷりと深い沼に堕したら、

今度は同情を誘うんだからな。」

「うん。」

 

成瀬領の姿になったサトが

出ていく後ろ姿に俺は声をかけた。

 

今日は櫻井翔とデートだそうだ。

何がデートだよ櫻井翔。

生意気なやつ。

 

昨日の言葉どおり、

サトは家の前に迎えに来た、

櫻井翔の車に乗り込んだ。

俺はそれをベランダから

見下ろしていた。

くそ、ボンボン野郎が、

外車かよ・・

 

だが、騙すのはたやすいかもな。

世間の怖さを知らないだろうから。

 

最後に対峙するあいつが、

金を握っている。

それをどのようにして奪うか。

まあ表には出せない金だから、

奴の元から持ち出せれば、

いいんだけど。

会社名義にしてある預金も、

ネットで俺の口座に移すだけ。

そのためには、

IDとパスワードを

盗まなきゃならないが・・

そこは、サトの体を使って・・・うん。

 

とにかく早く金を手に入れないと、

俺が10年かけて

準備してきた計画が無になってしまう。

それにことが済めば、

サトも自由になれるしな。

 

ストームの活動を

サトが続けていくかは、

定かじゃないけどよ。

あんな目にあって、

半分壊れているからな、サトは。

俺が好きだった

昔のサトにはもう戻れない・・だろうな。

 

俺は、

サトが飲んじゃってごめんと言って

買ってきた、

俺が買ったものよりも高い

ドリップ珈琲を飲んでいた。

 

「櫻井翔のやつ、

今日は土産なしかよ。

ケチが・・」

 

悪態をつきながら、

今日のロケで余ったパンを口に運ぶ。

 

「きっと、あいつのことだから、

どこかのレストランを予約してさ、

デレデレした顔で、

サトの機嫌を取っているんだろぜ。

成瀬領が

サトだと気が付かずにな。」

 

俺は、2つ目のコッペパンをかじりながら、

2杯目のドリップ珈琲の袋を開けていた。

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

ソファに寝転んで

ゲームをしている俺の頭の上で

声がした。

 

「はい、これお土産。」

 

サトが、

大きな紙袋を俺の横に置いた。

開けてみると、

中にはバナナと、オレンジと、キウイ。

 

「食事したのが寿司屋だったから、

帰りにスーパーで買ってきた。」

「ふ~ん。

悪いなサト。」

「ううん、櫻井さんが買ったから。」

「へえ~、あいつがね。

俺の土産だと知ってか?」

「そうだよ、僕が買おうとしたら、

会計してくれた。」

 

何でもないことのように、

冷蔵庫から麦茶を取り出しながら

サトが振り返った。

 

これは、いけるかも。

 

「サト、櫻井翔には言ったのか?」

「言ったよ。

脅されているから

助けて欲しいって。」

「それで、あいつは。」

「助けるって。

あいつと別れないと

付き合えないっていったから・・」

 

よくやった、サト。

よし、シナリオどおりだ。

俺は、口元が緩むのを隠せなかった。