魔王45 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

切れなくて長いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘だろ・・・

なんで・・・

 

「ここは俺の家だから

俺がいて当然だろう。

お前が会いたいやつも

ちゃんといるから安心しろよ。」

 

ニヤニヤと

小馬鹿にしたように笑うカズ。

たしかに、

ここはこいつの家だ。

それにちゃんと

成瀬さんは来ているらしい。

俺はほっとした。

だが、カズが続けた言葉に

俺は絶句した。

 

「じゃあ、俺は出かけるから。

1時間後な」

「ええ~」

 

そんなに、短いのか。

彼の都合だって言っているが、

どうせお前の嫌がらせだろう。

俺は、手土産に手を伸ばしたカズを

キッと睨んだ。

 

「これは成瀬さんに買ったんだ。」

 

おまえになんかやるかよ。

腹の中で、毒づく。

 

ふんと口をゆがめて、

カズが出て行った。

 

 

 

 

「お邪魔します。」

 

俺は奥に向かって挨拶すると、

中に入った。

短い廊下の突き当り。

ドアを開けると、

キッチンのテーブルに

背中を向けて成瀬さんが座っていた。

 

 

「こ、こんばんは、成瀬さん。」

 

恐る恐る、声をかけると、

黒いシャツに

黒いスキーニー姿の彼は

俺の声に反応するように

ゆっくりと振り向いた。

 

「櫻井さん、

取引したいってことですね。」

 

ゆっくりとした話し方だったけど、

声は低く、

その顔は無表情だ。

 

「取引?」

 

思ってもいない言葉が

彼の口から発せられて

俺は、一瞬意味が解らなかった。

 

「警察に訴えない代わりに、

あの動画を取り戻したいということですよね。」

「えっ・・・」

 

そんなこと、

俺は微塵も考えていなかった。

甘いと言われれば、

返す言葉もないが、

今となっては、

俺はカズが

あの動画を悪用することはないと

思っていたからだ。

俺は仲間になったんだ。

 

「そんなこと考えてもいなかった・・・

どうして、

成瀬さんはそう思ったのですか?」

「・・・・・・・」

 

彼は口を閉ざしてしまった。

言いたくないんだ・・

だったら、無理には聞かない・・

だって今日の俺の目的は

そんなことじゃないんだから。

 

「俺が今日、

成瀬さんに時間を取ってもらったのは

そんなことじゃないんです。

 

成瀬さん、

出会いは最悪だったけど、

俺、成瀬さんのことが

忘れられないんです。

好きになってしまったんです。

俺と付き合って欲しい。

カズを介するのではなくて、

二人で会いたい。」

「それは、

体が好きってことでしょう。

櫻井さんも皆と同じ。

抱きたいってだけ・・

よかったから、

またしたいってことですね。」

 

ふっ、と成瀬さんが嘲笑した。

 

「違う!

違います。

たしかに

体の相性はいいと思います。

今まで感じたことがないくらい

気持ちよかった。

だけど、それだけじゃない。

こうやって話をし、

どこかに出かけたり、

食事をしたりしたい。

隣に座って、

お茶でも飲みながら、

ぼんやりと空を眺めていたい。

ベッドの中で

刹那的な時を過ごすのではなく、

日常の中でいつも貴方と一緒に

過ごしたいって思ったから。」

 

緊張することなんか

そうそうない俺なのに。

初めて告白した時のように

言葉が出ない。

 

「裸になって、

足を開いて待つんじゃないのですか?

わかりません。

櫻井さんは、

僕に何をしろと?」

「誰のことを言っているのか

知りませんが、

俺はそんなことだけを

望んではいない!」

 

興奮して声が大きくなった。

成瀬さんが、

驚いたように、俺を見た。

 

「す、すみませんでした。

驚かせて。

 

あっ、そうだ。忘れていた。

 

これ、お土産です。

パティスリーマサキの

ケーキ買ってきました。

食べませんか?

俺、甘いものは

あまり好きじゃないんだけど、

ここのは美味しいって思います。」

 

俺は、袋をテーブルに上に置いて

中からケーキの箱を取り出した。

 

彼は、じっと俺の手元を見ているだけ。

何も言わない。

 

「あっ、やっぱり嫌いでしたか、

甘いものは。

ごめんなさい、

次から違うものに・・」

 

ケーキの箱を

袋に戻そうとした時だった。

 

「大好きです、ケーキ。

この店のケーキ有名ですよね。

高いけど、美味しいって聞きました。

食べてみたかったんです。

 

珈琲いれますね。」

 

初めて彼が俺に微笑んでくれた。