天使を見た記憶 いつか秒針のあう頃 14 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

「こんばんは、松本です。

遅くにすみません。」

「いや、大丈夫だよ。

君らと同じで私も夜更かしだからね。」

 

電話の相手は相変わらず温和で穏やかだった。

あんたのために

辛い役割を引き受けたこの人は、

口には出さないけれど、

かなり苦しんだはずだ。

あんたが心配でね。

でもそれは俺も同じだ。

 

あんたがまたも同じ間違いを

おかそうとしていることを伝えないと。

 

最初はいいんだよ、だれでもさ。

自分をよく見せたいから。

だけど、あんたが温和で優しいって知ると

本性を現してくる。

すぐに相手を信用して

裏なんかないと思いこむし。

恋人には一生懸命尽くして、

大事にするから。

相手は自分の思い通りにできるって

勘違いするんだよね。

優しいけど、頑固なあんたは、

そのうち疲れ果てて・・

相手はあんたが思い通りにならないと

知った途端に掌をかえして・・

 

いい加減学習しろよ・・

さみしいからって

人のぬくもりが欲しいからって

そんな理由で

適当に相手が選べる立場じゃないんだよ。

俺たちはさ。


いつまでたってもあんたは

自分が普通の男だって認識のままだけど。

俺をスターだって思うなら、

あんたもスターなんだよ。

 

自分だけ違うわけないだろう、

同じグループだったんだから・・

あの人は特別扱いだったけどさ・・

 

 

「松本君、どうした?

何か心配ごとでもあるのかい。

私に電話をしてくるとは・・


彼のことだね。」

 

黙り込んだ俺に

当然のように指摘してくる院長。

 

「はい。

柳田先生のお時間があるときに

お会いしたいのですが。」

 

聞きながら、

俺が病院に伺ったら迷惑だろうか?

夜に自宅はもっと迷惑だろうなと

いろいろと思い悩んでいた。

 

「私はいつでも君の都合に合わせるよ、

君こそ、忙しいのではないか?

彼がいつも忙しいってこぼしていたよ。」

 

あんたは気持ちの切り替えが

得意じゃないからね。

分刻みはつらかっただろうな。

 

「先生、グループの仕事がなくなったから

暇ですよ、俺は。

それじゃ、週末でいかがですか?

場所はどこでも構いません。」

「わかった、大丈夫だよ。

土曜日の夜8時に私の部屋でいいかな。

君の部屋にも伺いたいが、

スクープされると困るからね。」

 

笑いながら暇だといった俺に、

院長も笑いながら返事をくれた。

 

 

 

 

 

「松本です。」

 

インターフォンに向かってお辞儀をした。

 

「松本君、開いているよ。」

 

俺はロックの外れたドアを開けて

エントランスに入った。

 

 

「お邪魔します。」

 

広いリビング。

モノトーンの配色で構成された

最小限の家具類。

濃紺のソファに腰かけた俺の前に柳田院長は、

切子のグラスとガラス瓶の炭酸水を置いた。

 

「これは、江戸切子の○○屋ですね。

さすが、仕事が丁寧ですよね。

アッ、これはフランス××社の炭酸水。

俺好きなんですよ。炭酸の強度が俺好みで。

こっちではなかなか手に入らないでしょう。」

 

綺麗な切子のグラスといい、

炭酸水をだすなんて、おしゃれな上に

健康志向の俺には嬉しい限りだ。

早速、注いて飲み始めた俺に

柳田医師はニッコリとほほ笑みながら

つぶやいた。

 

「切子が高級品だという

感想しか持たない彼とは

全く違うな、君は。」