リフレイン 白い雨 115 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツー、ツー

 

電話は呼び出さずに話し中になった。

 

間違えたかと、電話を耳から離してみてみるけど、

やはり間違ってない。

僕の授賞式を見ていてくれたんじゃないの?

最初に翔に伝えたいのに。

僕の演技が評価されたって、

褒められたんだよって。

あの大舞台に立てたよって。

 

しかし、かけなおしても話し中は続く。

 

「大野君、早くいきましょう。」

 

最優秀新人賞を取った岸君が僕を呼ぶ。

 

「うん、今いくね。」

 

僕は電話を鞄にしまうと岸とともに会場に向かった。

 

 

「受賞おめでとうございます。」

 

演劇大賞を受賞したのは、大御所東川万作だった。

 

僕ら新人はみなで大御所の席に挨拶に伺う。

 

「ありがとう、いい作品に恵まれたおかげだよ。

君らもこれからが正念場だ、頑張って。」

 

大御所が、にこにこと笑顔で祝福を受けている。

その横で同じテーブルのニノがすごく不愛想な顔で

近くの人と話をしている。

 

これは、不味い。

逃げよう。

僕はさっと向きを変えた。

 

 

「大野さん、お疲れ様でした。」

 

ぐるりと、丸テーブルの間をすり抜けながら、

ドアに向かっていると後ろから声を掛けられた。

 

振り向くと、『演劇世界』のインタビューの時に

お世話になった女優さんだった。

 

「こんばんは、小池さん。

先日はお世話になりました。

本当に助かりました。」

 

深々と頭を下げた。

あの時は、彼女が女神に見えたくらい

心強かったんだ。

感謝してもしきれないよ。

 

そうだ、小池さん受賞したんだ。

 

「最優秀助演女優賞おめでとうございます。」

「ありがと、大野さん。

ふふふ、あいつの顔が見たいわね。

きっと『演劇世界』の記事

ボロクソに書かれているはずだから。」

 

小池さんは楽しそうに笑う。

 

あっ、あの嫌なやつのこと?

たしかに考えられる。

だけど、そのおかげで僕は

頑張ろうって思ったんだから。

差し引きゼロって感じかなぁ。

 

「大野さんは残念だったわね。

絶対に貴方が取ると思ったのに・・

あ、そうだ、あのねまだ内緒なんだけど、

再演が決まった善養寺家の人々に

出させてもらうことになったのよ。

大野さん、負けないわよ、私。

いい舞台にしましょうね。

稽古に入る日が楽しみよ。」

「小池さん決まったのですか?

嬉しいです。

はい、僕も頑張ります。

よろしくお願いします。」

 

続々と決まっていくお正月公演の詳細。

僕も早く演出家の先生に会わなくては、

 

僕が本当に出演できるかは、

演出家の先生にかかっているんだから。