リフレイン  白い雨 41 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

智20


 


 


 


 


 

泣きじゃくる僕を

先生はぎゅっと抱きしめてくれた。


 

「泣きたいときは泣け。

気が済むまで泣けばいい。

泣けるうちは大丈夫だ・・」


 

優しい声、温かい胸。

僕と同じような背格好の先生が

何故だかとても頼もしくて、大きく感じる。

そう思ったら、安心できて僕は泣き止んだ。


 

「喉が渇いただろう。もう1杯飲むか?」


 

先生が僕のカップに紅茶を注いでくれる。


 

「先生、どうして僕にそんなにも優しいの?」

「言ったろう。

わしの若いころにそっくりだからな、智は。」


 

それだけじゃないよね。

それはあの写真の人のせいだよね。


 

大切な人だったといった先生の哀しい顔。

翔によく似た男性。


 

「先生、あの写真の男性のこと・・」

「好きだった。

他の誰よりも。

いや、

あいつを愛していた。

櫻井國比呂を。」

「櫻井?

翔と同じ名字なの?」

「そうだろうな、櫻カンパニーの創設者だから。」

「櫻カンパニーって、まさか翔のお父さん?」


 

僕はカップを落としそうになった。


 

「違う。

國比呂には子供はいない。

結婚してはいない。」


 

先生の声が低くなる・・

氷つくような冷たい響き。


 

「あいつには2人弟がいたから、

櫻井翔の父親はどちらかだろう。」

「そ、そうだよね。

先生のことが好きだったんでしょう、

結婚するはずがない。」

「わしは自分の気持ちを伝えた。

國比呂が良いと言ってくれるなら、

家を出て國比呂のそばに行きたいと。」

「流石、先生。

ちゃんと言えたんだ。

僕とは違うね。」


 

じゃあ、何があったの?

先生と國比呂さんの間に。

なんでその人と別れたの。

誰かに邪魔されたの?


 

「あいつは、迷惑だといった。

金持ちのボンボンの道楽には付き合えないと。

自分は人並みな生活を望んでいる。

二度と近づかないでくれと。」


 

先生の顔が能面のように無表情になって、

言葉もまるで棒読みのセリフのよう・・


 

怖い、怖いよ、先生。

恨んでいるんだね、その人を。

勇気をもって告白した自分を全否定されて。

そして、多分、苦しむ先生を助けてくれる人はいなかったんだね。

だから、先生は僕を?

自分と同じ思いをさせないために・・

僕の相手が自分を苦しめた人とそっくりだから、

いえ、同じ櫻井の人間だからだよね。

 

疑問が解けたものの、

僕には何も返す言葉が見つからない。

辛すぎる。

先生が、強いのはこんな経験をしたからなんだ。

 

 

重い沈黙が部屋を包み込む。

時計の針はすでに真上で重なる寸前だった。