circle 6 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

すみません、結局すごく長くなってます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜僕は、

11年ぶりに家族でクリスマスを楽しんだ。

翔君や、潤君のことは忘れて

つかの間の幸せを味わっていた。

 

料理もケーキもほとんど食べ終わり、

そろそろお開きにしようかという時、

トイレから戻った涼介が

僕の鞄のポケットにいれたスマホが

チカチカと着信を知らせているのに気が付いた。

 

「にいやん、電話じゃないの?」

 

涼介に言われて、スマホを取り出すと

相手は工房の社長だった。

 

この時期はとても忙しいから、

まだ仕事中だろうに

何の用事だろうか・・。

今日、工房の前にいたことを怒られるのだろうか?

恐る恐る電話にでる。

 

「もしもし、大野です。

今日は、す、すみませんでし・・・

えっ、・・・はい・・

そうです。

はい・・。

はい・・・。

えっ、・・

そんな・・

はい・・

はい

わかりました。

あ、ありがとうございます。」

 

どうして?

どうしてなの?

すぐに確かめたい。

 

「急用ができたから、今日は帰るよ。」

 

僕は廊下で受けていた電話を終えると、

3人に声を掛けた。

 

「にいやん、帰るの?」

 

涼介が寂しそうに尋ねる。

両親も泊まらないのかというように僕を見た。

 

「父さん、義母さん、涼介。

今夜は楽しかった。

これからは、もっと帰ってくるよ。

だってここは僕の家だから。」

 

僕が笑顔を見せると

3人がそろって、笑い返してくれた。

嬉しいよ。

 

でも、今は・・とにかく、

早く、翔君に会わないと・・

 

「じゃ、おやすみなさい」

「おやすみ」

「にいやん、プレゼント早く持ってきてね」

「気を付けて、智さん」

 

僕は3人に手を振って玄関を出た。

 

スマホを見ると翔君から何回も着信があった。

ラインも・・・何回も送られていて・・

 

 

智君、どうしたの?

智君何があったの?

智君何処にいるの?

智君、かえってきて。

 

今日はクリスマスだよ。

雪子さんも心配しているよ。

潤も探している。

智君に渡したいものがあるんだよ。

 

 

翔君の馬鹿・・

僕に優しくしないでよ。

 

僕は、走りながら、スマホを耳に当てた。

掛けた相手、翔君はすぐに出た。

 

「智君、どこにいるの。

迎えに行くから

すぐに行くから。」

「翔君、どうして社長に電話したの。

 

もう僕のことは、ほっておいて。

翔君は自分のことだけ考えてよ。」

 

僕は、心にもないセリフを叫んでいた。

僕が首になったことを知らない翔君は、

僕が仕事に戻りたいだろうと社長に電話をして、

僕が曖昧な返事を返していた訳を知ったんだ。

そして、所長に、僕が無断で休んでいた理由を説明して、

社長の誤解を解いたんだ。

きっと翔君でなければ説得出来なかったはず。

一生懸命頼んでくれたんだって僕はわかっている。

でも・・

 

翔君のそばにいたあの女性。

いつも帰りの遅い翔君。

僕を避けるようにすぐに部屋に戻ってしまう翔君。

 

鈍い僕でもわかるよ。

だから・・

だから・・・

 

翔君にさよならって言おう。

大丈夫、もう僕には家族がいるから

翔君を失っても、大丈夫。

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

息を切らしながら、翔君の家の門を抜けると、

玄関の前のスロープで翔君は僕を待っていた。

 

「智君、よかった。

潤から智君の様子が変だったって聞いて。

心配したよ。」

「翔君、さっき言ったよね。

もう僕のことはいいから。

 

 

社長のことは、ありがとう。

お礼をいうよ。

 

でも、でも、もういいから。

僕が鈍いせいで、迷惑をかけたけど・・

彼女と幸せになって。」

 

心から安堵したように微笑む翔君に、

わざと素気無い返事を返した。

 

「智君?

何を言っているのか、わからないよ。

誰の事?」

 

翔君が本当にわからないんだと

僕に言うから、悲しくなってきた。

そうまでして隠さなくてもいいよ。

僕は、そこまでいじわるじゃない・・

 

「昨日、ホテルで会っていたでしょう。

綺麗な女性と。

毎日遅くなっていたのも、休みの日に居ないのも

彼女と会っていたからでしょう。

 

もう、いいから。」

 

僕は後ろを向いて、しゃがみこんで、

泣きそうなのを必死にこらえた。

 

「智君、ごめんね。俺が悪かったよ。

俺が何も言わなかったからだよね。

 

たしかに、俺は毎日彼女と会っていた。」

 

翔君が、しっかりとした声で断言する。

ああ、もう終わりだ・・

 

僕は両手で顔を覆った。

涙がこぼれてくる。

 

はっきりとは、聞きたくなかった。

 

「でもね、それは、智君にクリスマスプレゼントを

あげたかったから。

きっと何よりも喜んでくれるものを。」

 

翔君が優しい声で僕に語りかける。

何をくれるっていうの?

今、僕は一番悲しいのに。

 

「智君、こっちを向いて。

これが俺のクリスマスプレゼントだよ。

 

さぁ、早く俺の方を向いて、

俺のプレゼントを受け取って。」

 

そんなものいらないって思ったけど、

何度もせかされて

僕はノロノロと立ち上がって振り返った。

 

「しょ、翔君・・」

 

言葉が出なかった。

目に入ったのは車椅子の前に立つ翔君。

 

「この間の手術の時に、

以前怪我した時にできたと思われる

神経を圧迫していた血種が見つかって

取り除けたんだよ。

 

リハビリすれば、杖で歩ける可能性があるって言われて。

俺、絶対に歩けるようにするって決意したんだ。

智君にために。

あの人は、あの病院の院長の娘で

手術した病院の理学療法士さんだよ。

彼女じゃない。

俺のリハビリを二人三脚で後押ししてくれていたんだ。

 

昨夜、やっと立ち上がることができた俺のこと

祝福してくれていたんだ。

 

喜んでくれるよね、智君。」

「翔く・・ん。

僕は・・・」

 

翔君が立っている。

彼女じゃなかった・・

 

頭の中はぐちゃぐちゃだった。

何も考えらない・・

 

「智君、僕のプレゼント受け取って」

 

翔君が両手を広げて、僕を呼んでいる。

 

「早く・・智君。」

 

僕は引き寄せられるように、翔君の胸に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

「愛してる、智君。

もう離さないからね。

僕の愛しい人。」

 

 

翔君、僕も、愛してる。

 

 

 

終わり