日程:2024年1月19日

場所:兵庫県立美術館

展示:安井仲治 僕の大切な写真

 

 

1920年代~1940年初期に活躍したアマチュア写真家・安井仲治(やすいなかじ)の生誕120年を記念して開催された本企画展。

カメラ勉強中の私に、なにか吸収できるものはないかと思って久々に兵庫県立美術館へ。

 

 

■アクセス

JR灘駅・南口から出て直進。徒歩10分程度。

※阪神・岩屋駅からも約10分、阪急神戸線・王子公園駅西口だと約20分くらい。

 

■入場料

1,600円 ※現金orクレジット

 

 

2024年行きたい美術展】でもご紹介した企画展なのでとりあえず1コ達成!

ついでに今月すでに3か所の美術展に行っているので、今年の目標【月に2回美術展に行く】の1月分も達成!

いえーい。

 

 

では本題へ。

 

安井仲治 僕の大切な写真

入り口前

 

チケットを購入して、一眼レフカメラ以外のものをコインロッカーに入れたら

 

会場までの階段を上ります。

 

会場到着

 

 

 

安井仲治 

 

早速【安井仲治】という人物をご紹介。

 

 

▼以下公式HPより原文ママ(一部引用)

 

安井仲治(1903-1942)は大正期から太平洋戦争勃発に至る激動の時代に、写真のあらゆる技法と可能性を追求し、心震わせるような忘れがたいイメージの数々を印画紙に焼き付けた写真家です。
1903(明治36)年に現在の大阪市中央区に生まれた安井は、親から与えられたカメラに魅せられ、10代にして同好の士が集う関西の名門、浪華写真倶楽部の会員となり、瞬く間に日本全国にその名を知られる写真家となります。ピグメント印画の技法を駆使した作品や、1930年前後の日本で流行した新興写真と呼ばれる絵画とは異なる写真ならではの画面を志向する作品など、安井の作品は時代の潮流に敏感に反応しながらも、カメラを介して世界と向きあった時に生じる心の震えを繊細に、時には激しく受け止めている点において一貫していました。卓越した作品とともに温厚篤実な人柄から人々に慕われた安井はしかし、1942(昭和17)年に病によりこの世を去ります。38歳の若さでした。

 

この人、たった38年という短い生涯だったんですね…(私ももう近い年齢…)

 

その中でたくさんの作品を残していて、

あくまで”アマチュア写真家”としての活動記録を見ることができました。

 

先日の入江泰吉の写真作品もすごくよかったけど、(詳しくはこちらで記事にしてます

安井仲治の写真もユーモラスで素敵で楽しかった!!

 

 

▼展示室内とお気に入り作品

 

Ⅰ. 1920s:仲治誕生

 

 

 

 

「クレインノヒビキ」

プロムオイルならではの表現が船の鈍い動きと蒸気の描写で分かる作品。

これ見た時、【ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー】の《雨、蒸気、速度-グレート・ウェスタン鉄道》(1844年)

を思い出しました。本当にまるで絵画のような描写でいわれないと写真って気づけないかも…。

 

 

 

 

 

こちらは「猿回しの図」のシリーズ。

上「眺める人々」

中「猿回しの図」

 

 

この言葉、すごく素敵。

 

 

 

「横たわる女」

これも見た時、西洋絵画の「グランド・オダリスク」を思い出しました。

「グランド・オダリスク」と違うのは腰が長くない?みたいな違和感がないことと、

「グランド・オダリスク」は派手だけど、こちらは地味で儚さもあること。

ただ、女性の背中とおしりの滑らかさと、しっとりした質感の、吸い込まれるような妖艶さ艶めかしさが共通しているような?

この事後のような空気感も相まって見ていて虜になってしまう…。

 

 

 

Ⅱ. 1930s-1:都市への眼差し

モダニズム写真が隆盛した1920年末~1930年代前半頃の作品を紹介。

 

 

 

 

「草」

 

「工事場」

 

安井はこの作品について語る。

「大きなビルディングを建てるのは、蟻が塔を築いているのと同じだ。

 (中略)これはその極めて部分的な視覚だ。」

(出典:『アサヒカメラ』1936年9月号)

 

なんかこの言葉、すごくいいな。

 

 

「工事場ニテ」

 

「建築物逆光線」

三角と丸と直線と楕円線、自然のものなのになんだか作り込まれたような配置の絵みたい。エッシャーみたいな。

でもグラデーションの影と四角の白(たぶん人工的な光の蛍光灯)のバランスが妙。

 

 

「凝視」

有名な作品。本作のオリジナルプリントは戦災で失われたそうだけど、多重露光に使われた3枚のネガが同定されたとのこと。

この作品を分解すると以下になる。

 

 

こんな風に、自分の手で、組み合わせて”ひとつの写真作品です”って言っていいんだ!って気づかされた。

 

「斧と鎌」

これもそう。

安井はこの写真のように、【半静物】なる新たな取り組みについて語っていた。

その場にあった道具を何気なく動かしているうちに興が乗って撮影した本作。

物と物を組み合わせて、あるいは秩序ならざる秩序を示す「もの」を見つけ出し撮影することでシュルレアリスムの手法

デペイズマン(異化作用)に通じる効果を持つ作品を生み出していく。

 

 

 

「即興」

これめっちゃ好き。

 

「影」

 

 

 

 

 

ところどころ、こうやって関係資料から引用した言葉が素敵。

 

 

 

 

Ⅲ. 1930s-2:静物のある風景

 

 

 

「少女と犬」

 

 

「秩序」

 

 

 

 

Ⅳ. 1930s-3:夢幻と不条理の沃野

※沃野(よくや)…地味のよく肥えた平野

 

「夜」

この作品に「夜」ってタイトルつけるのがめっちゃセンス感じる。

 

 

「背広」

首元には梟がいるユーモア。これ英題だと「suit」になっちゃって、日本人でも”スーツ”ってカタカナで読んでしまいそうだけど

あくまでこれは”背広”。

 

 

 

「構成 牛骨」

 

 

「地上」

地面のぬかるみを見て、「地上」ってタイトルつけるのすごくない??

 

 

 

「恐怖」

ここから安井の人物写真が増えてくる。これまで風景写真ばかりだった彼の作品の中に、

戦争や社会的事件を機に、モデルに様々なポーズを取らせて心理表現する作品が増えてきた。

 

 

 

 

 

 

Ⅳ. 1930s-1942:不易と流行

「惜別」

国全体が戦争へと傾斜する中、出征兵士を見送る女性を取った作品。

少し前に、映画「あの花が咲く丘で君とまた会えたら」を観て、大号泣したんですけど、まさにこの写真のようなシーンがあって。切なかった。でもこうやって記録を残してくれてることが大事なんだと思う。

 

 

 

「緑陰」

白衣勇士の写真。

 

 

「流氓ユダヤ 告示」関連作品

 

流氓ユダヤ(りゅうぼうゆだや)…1941年、ナチスによる迫害を逃れ神戸にたどり着いたポーランド系ユダヤ人

 

彼らを撮影した安井の作品が並ぶ。

 

 

「流氓ユダヤ 顔」

 

 

「流氓ユダヤ 顔」

 

 

 

 

 

本当にとてもいい作品展だったので、

かなり長文になってしまいました…。

 

しかも(飲みの予定もあったという言い訳もしつつ)記事を凝っていたら

行ってから2日も経っちゃってました。(えへ)

 

 

 

昨年の10月、Perfume COSTUME MUSEUM(詳しくはこちら)で行って以来の兵庫県立美術館。

楽しかった~!

平日なら静かに鑑賞できるのもいいですね。

 

※本企画展では写真撮影可(一部書物などの資料を除く)