JR東日本は30日、JR京葉線のダイヤを9月1日(日)から一部修正することを明かしました。今回はこれについて考察します。なお、記事中の画像は、JR東日本プレスリリースから引用しています。

https://www.jreast.co.jp/press/2024/chiba/20240530_c01.pdf

 

 先日の3月ダイヤ改正で、JR東日本は京葉線の通勤快速の廃止と快速の大幅減便(各駅停車化)を実施しましたが、これについて千葉県や沿線自治体が反発の声を上げ、JR東日本は対応に追われました。

 そこでこのたび、JR京葉線のダイヤを修正し、快速列車を復便することとなりました。

 

 

 

 

<チャプター>

1.ダイヤ修正の内容

2.沿線自治体の反応~好意的な受け止め~

3.沿線自治体の反応~反発~

4.考察と総括

5.小話~なぜ京葉線のダイヤ改正はここまで騒動が大きくなったのか~

 

1.ダイヤ修正の内容

(1)朝・夜時間帯

 内房線からの直通列車(上総湊6:56発東京行き)、外房線からの直通列車(上総一ノ宮6:28発東京行き)各1本が、各駅停車から快速に変更となります。

 また、東京発20時台に内房線・外房線直通列車各1本が各駅停車から快速に変更となります。

 これにより、朝時間帯に蘇我から東京へ向かう快速列車は、蘇我発6:43,6:51,7:09,7:56の4本となり、通勤が便利になります。

 なお、夜間帯には、20時台に内房線・外房線直通列車が設定されることとなりました。最も混雑する17~19時台は各駅停車のみとして、運転間隔や混雑の平準化を図りたいという意図があると思われます。

 

(2)日中時間帯

 快速の運行時間帯を拡大し、9時台及び土休日16時台に2本ずつ快速が設定されます。これも、3月ダイヤ改正で各駅停車化したものの一部を、快速に戻す変更になるとみられます。

 

2.沿線自治体の反応~好意的な受け止め~

 今回のダイヤ修正について、好意的な見方がなされる一方で、「十分ではない」との声も見られました。

 

>大網白里市の金坂昌典市長も「満足のいく内容ではないが、一定の評価はしたい」と話した。千葉市の神谷俊一市長は「1年を待たず異例の対応」とする一方、「全体で70点。必ずしも十分ではない」と話した。夕方の上り快速の回復が図られていないことを指摘し「市が進める企業立地やイベント開催への影響に懸念が残る」として、引き続き協議を続ける考えを示した。

 

 

 

 大網白里市は、通勤快速をそのまま復元することが一番の要求と思われるだけに、十分ではないとの見方

を示したと思われます。また、千葉市は夕方の東京行き快速の復元がされていないことを指摘していますが、これは幕張エリアでのイベント終了時刻(17時以降)に東京へ速く行く手段が確保されていることが、企業やイベントを誘致する上で必要だと認識しているからでしょう。

 

3.沿線自治体の反応~反発~

 一方で、新習志野駅がある習志野市の宮本市長は、今回のダイヤ修正の内容に反発しています。

 

 

習志野市長としては、せっかく新習志野駅(快速通過駅)の停車列車が増えたと思ったら、たった半年で減らされる―その点が不満なのでしょう。

 今回のダイヤ修正は、各駅停車化した列車を快速に戻すもので、普通列車の増発は特にないようです。JR東日本としては、一部時間帯で快速通過駅の停車本数が3月ダイヤ改正以前に戻るだけという認識から、習志野市からの反発は予想外のことと受け止めているかもしれません。

 実際のところ、3月ダイヤ改正で普通列車を何本か減便しているので、2024年3月以前に比べると停車本数は微減になるとみられます。普通列車も数本復便できていれば、という感は否めません。

 ただ、京葉線のダイヤ改正はあれほどの騒動になり、今年秋ごろにダイヤの修正をすることを検討することは既に報じられていました。修正となれば、快速列車をいくらか復便するということは想定できたと思われるので、習志野市としては事前に「快速通過駅が不便にならないよう配慮してほしい」とけん制しておくとよりよかったかな、と思います。

 

4.考察と総括

 昨日出ていた報道では、かつての通勤快速や現行の快速に代わる快速列車が設定されるとの報道もありました。それを見て、私は次の2つのいずれかの形を予想していました。

①通勤快速停車駅に海浜幕張を追加し、海浜幕張で各駅停車と乗り換えられるようにする。

②通勤快速停車駅に海浜幕張~蘇我間の各駅を追加し、海浜幕張以西の利用者と以東まで向かう利用者を分ける。

 

 しかし、実際のところは新たな快速列車の設定はなく、現行の快速列車が増発される形となりました。東京に近いエリア(東京~西船橋・海浜幕張)の利用者のほうが圧倒的に多いこと、房総エリアから東京への通勤客が減少していることを踏まえれば、停車駅を追加して通勤快速を再設定するよりも、快速列車を一部復元させるほうがより混雑集中を防ぎ、少ない本数でラッシュを捌けると考えたとみられます。

 また、今回のダイヤ修正を巡る報道がきっかけで、習志野市は3月ダイヤ改正(快速の各駅停車化)の内容を評価していたことが新たに判明しました。同じ千葉県内の自治体でも、東京に近いエリアと、東京から離れている房総エリアとで、考えが完全に分かれており、改めて千葉県における南北、東西での違い(というよりは格差というべきか)が浮き彫りになったともいえます。

 ダイヤ修正により流動がどのように変化するのか、そして来春のダイヤ改正でどのようなダイヤづくりを行うのか、引き続き注目です。

 

5.小話~なぜ京葉線のダイヤ改正はここまで騒動が大きくなったのか~

 最後に、なぜ京葉線のダイヤ改正の騒動はここまで大きくなったのでしょうか。以前の記事でも少し触れましたが、最大の理由は、房総半島の自治体にとって、通勤快速はいわば最後の砦であり、これがなくなると更なる人口流出や移住定住者の減少が危惧されるというところにあるからだと思います。

 とはいえ、京葉線は東京と千葉を結ぶ路線であり、京葉線ダイヤの問題はもっとローカルな話題のはずですが、なぜか全国ニュースでも大きく取り上げられました。

 その理由はずばり、ディズニーランドと幕張メッセの存在にあると思います。

 「幕張メッセでのコンサートが終わって帰ろうとしたら、京葉線が各駅停車しかなくて時間がかかったあせる」「快速があれば、もっとディズニーランドから東京駅までさっと行けるのに…」

 そう感じたことがある人が、全国各地にいらっしゃるでしょう。それゆえ、京葉線のダイヤをめぐる問題のうち、快速の大幅縮小については自分事として捉える人が多かった、それゆえにニュースバリューが大きくなったのではないでしょうか。