(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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キム・ポッシブル
(原題:Kim Possible)
2002-2007年
製作総指揮
マーク・マッコークル
ボブ・スクーリー
データ
2002年〜2007年に制作・放送された全87話のディズニーのテレビアニメーションシリーズ。
ウォルト・ディズニー・テレビ・アニメーションにより制作されディズニーチャンネル独占放送にて公開されました。
日本でもディズニー・チャンネルの放送をはじめ、2005年〜2007年にかけては地上波放送も実施されています。
ミドルトンという町を拠点に世界中を飛び回る女子高生ヒーローキム・ポッシブルとその相棒ロン・ストッパブルの活躍を描いたスパイヒーロー風アクションコメディ。
これまで人気作品やキャラクターのスピンオフ続編を中心に制作してきたディズニーチャンネルシリーズにおいて…
【完全なオリジナル作品】
【強い女の子を主役としたシリーズ】
【子供だけじゃなく大人の人気も獲得できるコンテンツ】
…を生み出す事を目的として制作が開始されました。
全シーズンに渡り制作を指揮したのは「アラジン」「ヘラクレス」「ベイマックス」等のTVシリーズ、「ライオン・キング2」「ティンカー・ベル」シリーズや「魔法にかけられて」等多数のディズニー作品を手掛けてきたコンビ、ボブ・スクーリーとマーク・マッコークル。
監督には「ティンカー・ベル」シリーズや「ムーンガール&デビルダイナソー」でも知られるスティーブ・ローターや「ミッキーのアルバイト危機一髪」を監督し「リトル・マーメイド」「ライオン・キング」等でアニメーターとして活躍したクリス・ベイリー等の実力者が名を連ねています。
主人公キム・ポッシブル役を務めたのはディズニーチャンネルのコメディドラマ「おとぼけスティーブンス一家」でも知られていたクリスティ・カールソン・ロマノ。日本語版は小笠原亜里沙さん。
キムの相棒ロン・ストッパブルを演じたのはシットコム「ボーイ・ミーツ・ワールド」やディズニーゲーム「キングダムハーツ」のサイファー役等も務めるウィル・フリードル。
日本語版は日野聡さん。
ハダカデバネズミのルーファスを演じたのはナンシー・カートライト。
「パパはグーフィー」のピートの娘ピストル役や「リロ・アンド・スティッチ」のいくつかの試作品役等、特徴的な声を持つキャラクターを多く担当している実力派声優です。日本語版はまるたまりさん。
ヴィランの一人であり人気キャラクターであるシーゴーは「ルイスと未来泥棒」のフラニー役などのディズニー作品以外に多数の映画やドラマでも活躍するニコール・サリバンが演じます。
もともと彼女をイメージして当て書きのように生み出されたキャラでした。日本語版は佐藤ゆうこさん。
他にも超実力派声優のジョン・ディマジオや「フルハウス」のテディ役で有名なタージ・モウリー等バラエティ豊かなキャスト陣がレギュラーとして集結しています。
一般的に【ディズニーアニメーションの低迷期】と言われている時代に放送されたテレビアニメーションシリーズながら、当時のディズニーチャンネルやケーブルアニメーションの歴史を塗り替える程の圧倒的なヒットを生み出した事で有名な作品。
放送初回から5年後の最終回まで非常に高い視聴数を獲得し続け、〜14歳までの女子をメインターゲットとしながらも子供だけではなく大人、さらに男女問わない幅広い層からの多数の人気を獲得した事で、ディズニーチャンネル史上類稀なる一大ブームを巻き起こしました。
全65話の3シーズンで終了する予定でファイナル用のスペシャルエピソードも公開されましたが、ファン達からの熱烈な支持と要望によりシーズン4が急遽制作されるという異例の事態も発生。
批判家陣からの評価もすこぶる高く、誰もが簡単に楽しめる単純明快なストーリーとアクションに絶妙に盛り込まれたシットコム風の畳み掛けるセリフとギャグ、ユーモアセンスとキャラクターの魅力、何よりキム・ポッシブルのヒーロー像が絶賛されました。
多数のメディアミックスやグッズ化、アトラクション化等が多方面で行われ、本家のディズニースタジオによるアニメーション映画の不発が続く中、ディズニーを財政面でも評価面でも大きく支えた立役者でもあります。
日本でも地上波放送が行われ、大きな人気を博しました。
そして放送終了から15年以上が経過した現在でもその圧倒的な人気と認知度は衰えることなく、ディズニー及びディズニーチャンネルに多大な功績をもたらした伝説のテレビカートゥーン作品として沢山の人達から愛され続けています。
2019年にはディズニー・チャンネル・オリジナル・ムービーとして実写映画化も実現。
こちらも大きな話題となりました。
あらすじ
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キム・ポッシブルはミドルトン高校に通うイマドキの普通の女の子。
チアリーダー部に所属し、恋に友情に奮闘しながら高校生活を謳歌している。
しかし彼女にはもう一つの顔があった。
それは世界中を飛び回り悪者と闘うエージェントヒーロー。
今日も協力者の天才少年ウェイドからキムニケーターに連絡が入ると、ちょっと間抜けな幼馴染のロン・ストッパブル、そのペットであるハダカデバネズミのルーファスと共に彼女は任務に急行する。
立ちはだかるのはひと癖もふた癖もある因縁の悪者たち。
しかし、キム・ポッシブルにできない事はない。
今日もどこかで、どこにでもいる普通の女の子がシレッと世界を救うのであった…。
感想
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大好きですね。
もう…アニメーションシリーズの、カートゥーン作品の、一つの完成形、最高到達点と言っても過言ではないんじゃないでしょうか。
単純明快なストーリー、往年のカートゥーン然としたアクション、キャラクターのカリスマ性、そして小気味良いいかにもアメリカンコメディ的な会話による数々のユーモアとギャグ、、その中に隠された大人向けのちょっとしたスパイス。
誰もが本当に何も考えず楽しめる「全てが冗談」のようなエンターテイメントの中に、子供が魅了されるヒップなカリスマ性と大人の気持ちを擽るユーモアやオマージュ・そして懐かしさを内包させた正に完璧なパッケージです。
「全てが冗談」かのように、簡単に適当に作られているように見えて実は全編に渡って非常に巧妙に計算し尽くされており、考え抜き拘り抜かれた作りが成されている、本当に見事な作品。
間違いなく後世に残るテレビカートゥーンのお手本でしょう。
実際に今作が確立した基本スタイルは後の数多のテレビカートゥーン作品に多大なる影響を与えました。
観た後に何かが残るわけじゃないけれど、誰がいつ観てもちゃん楽しい。
これは往年のディズニー…特に〜1990年頃までのディズニー映画が目指していた物の一つのゴールとも言えるんじゃないでしょうか。
大袈裟かも知れませんが…
【テレビアニメなんて全部こんなんで良いんじゃないか】
と、、この作品を観てると本気でそんな事を思ってしまいます。
それ程の傑作である事は間違いありません。
練り込まれたスタンダード
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一見しただけだと
「そんなに言うほどかね…」「良くある普通のカートゥーンじゃん…」と思う方も多いかもしれません。
その現在においての「よくあるカートゥーン」の雛形を作ったのがキム・ポッシブルなんです。
そして、ぜひとも騙されたと思ってある程度の話数は観て頂きたいですね。
キム・ポッシブルが、例えば今日着る洋服に迷うのと同じくらいのテンションでサクサクと世界を救う薄くかる〜いコメディアクションアニメです。
が、単純なようで実は非常に色々な事を考えて作られている作品だということがすぐに分かると思います。
ジェームズ・ボンドやマーベル等をパロった所謂オマージュ系の、大人には懐かしく子供には普通に楽しいヒーローモノ。
主人公は高校に通い青春を謳歌するイマドキのティーンガールでありながらカリスマ性が高く、任務の時はスーパーパワー等ではなく生身の身体能力とドライヤーやグロスを改造した武器で闘うその姿に女の子は大いに憧れました。
そして男の子はそのアクションや毎度登場する特殊メカやハイテク描写に夢中になり、それら全てを意図的に【軽く】描写する事で親にも安心なファミリーカートゥーンとして成立させ、アメリカンコメディドラマの要素を多分に取り入れた軽妙なトークによるユーモアとギャグ、密かに忍ばされたメッセージ性やマニアックな縦軸の繋がり等は大人達をも虜にしました。
基本は1話完結でいつ何話から観ても楽しめる作りになっていながらも、通して見た人だけが解る小ネタや繋がりが盛り沢山であり、キャラクターの関係性や心情や状況の変化もしっかりと反映されていきます。
だから観ている人はついつい全部見たくなってしまうし、一つ一つの作風が非常に軽いタッチで描かれている為基本マンネリ化しやすいお約束プロットでありながらいくら観ても食傷しにくいのもポイントです。
また、視聴者を飽きさせない工夫として悪役を一組ではなくいくつも用意しており、一度逮捕された悪役は数話出てこない…等細かな捻りも加えることでパターン化を回避しています。
同様にレギュラー以外の個性的な登場人物も豊富で、多数のキャラクターが複数のエピソードで再登場しキム達に影響を与えてくる事もシナリオの単純化を防ぐことに貢献しています。
…こんな感じで本当に隙のない、巧妙に計算された作りが素晴らしい作品なんですが、もっと凄いのはそれを一切感じさせない事なんですよね。
あくまで軽く、ラフに、ともすれば適当な感じで作ってるようにすら感じさせるカートゥーン然とした作風を崩さず、気が付いたら作品にひっぱられてる中毒性が…本当に見事なんです。
カートゥーンシリーズとして
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240420/22/yuzupill/2f/04/j/o0853048015428407106.jpg?caw=800)
最近はアメリカのキッズ向けケーブルカートゥーンでも、複雑に練り込まれたストーリーや設定の脚本重視の作品が増えてきました。
それはそれで決して悪いことではないし、素敵な作品も沢山あるのですが…
過去に色んな作品の記事で語らせて頂いた通り、やはり個人的にはアニメーションの真骨頂はあくまで【子供】と【子供心を持った大人】の為のエンターテイメントであると思っています。
「ロジャー・ラビット」で言っていた通り、それこそがアニメの唯一にして最大の武器だからです。
見た後に何も残らない。
だけど確実に見た人を楽しい気持ちにさせてくれる。それがアニメの原点。
深みのある作品、社会性を押し出した作品、ストーリーで大人達を唸らせるような作品も良いですが、この原点をアニメーションは忘れちゃいけないと思っています。
ただし「見た後に何も残らない」という事と「見ても見なくても変わらない」という事は決して同じではありません。
そういう意味でこの作品はやはり、古き良きカートゥーンを正当進化させた完成形だと思います。
見た後に何も残らない。
別に深いテーマや捻ったストーリーがあるわけでもない。だけど間違いないなく見れば見るほど楽しい。
それがキム・ポッシブルです。
前述のように縦軸の壮大なストーリー等はまったくなく1話完結で、別にどこを切り取っても楽しく見れる。
ただし、見れば見るほどその世界にしっかり引き込まれるように作られていて、個性的なキャラクター達はどんどん魅力を増していき、見ている方はそんなキャラ達をどんどん好きになっていきます。
そしてそんなキャラクター達はエピソードを追うごとに確実に変化し、成長していくんです。
キムのロンに対する心情の変化。
ヴィランのシーゴーとドラッケンの関係性。
引きこもりの天才少年ウェイドの変化。
そしてキムの相棒であるロン・ストッパブルの成長。
実はそれらが全エピソードを通してゆっくりと、驚くほどきめ細やかに描かれています。
1話完結の単発ストーリーの積み重ねにも関わらず、深い脚本やテーマがあるわけではないにも関わらず、最終話まで見切った時、まるで壮大な何かを見終えたような充実感を感じるんですよね。
何かが残るわけじゃない。
何かを考えさせられるわけでもない。
基本はあくまでも薄く軽いコメディカートゥーン。
にも関わらず、それでもこの作品を最後まで見て良かったと心から思える…
そんなシリーズなんです。
この絶妙な作品バランスは本当にただただ圧巻なんですよね。
これはやはり全4シーズン通して第一線で制作に携わり続けた総指揮のマーク・マッコークルとボブ・スクーリー、2人の努力の賜物だと思いますね。
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まとめ
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240420/23/yuzupill/cb/ac/j/o1080060715428432846.jpg?caw=800)
まぁ、色々ぐだぐだ書きましたが…
要はほんとにただただ楽しくて面白い、そして出来る事ならば通して見た方がよりその面白さが増す、そして大人が見ても子供が見ても「何も考えずに」ただ楽しめる…
そんな素敵なカートゥーンシリーズだと言う事です。
もう普通に何も考えないで大人が今見てもギャグとかメッチャ面白いです。
アメリカンコメディやシットコムが好きな人はきっとツボるでしょう…w
あと何気に大人向けのちょっとした遊び心やメッセージが、結構沢山隠されていたりもするのでそこにも注目して欲しいですね。
キャラクターもホントに悪役から脇役まで皆クセのある魅力的な人達ばかり。
個人的にはキム達の教師であるバーキン先生とかツボっちゃって、大好きでしたねw
この後、今作によってこのコンテンツに自信をつけたディズニーチャンネルでは様々なオリジナルの名作が生まれる事になりました。
ただ、キッズ・ファミリー向けのケーブルカートゥーンシリーズにおいて、未だにこの作品を越える物は他に無いような気がしています。
それくらいの、間違いなくディズニーが誇る傑作テレビアニメーションです。
小難しいアニメが多くなったこの時代。
ぜひ、まだまだ沢山の人にこの作品を通してカートゥーンの面白さ・楽しさに触れて頂きたいなぁと、強く思いますね。
お子様にも大人にも、心からオススメしたいそんな名作シリーズです♪
「キム・ポッシブル」は現在ディズニープラスで配信中です♪
ちょっと長いですが、個人的にはイッキミ全話視聴をやはりオススメしたいです。
ぜひぜひ一度はご覧になってみて下さ〜い。
※それとスペシャルエピソードである「キム・ポッシブル ザ・ムービー ドラマチック・ナイト」は時系列としてはシーズン3とシーズン4の間に位置します。これを見ておかないと少々シーズン4で面喰らうかもしれないのでご注意を!
こちらもディズニープラスで配信中です。
はい。
というわけで!
今回はこの辺で。
いつも長文駄文にお付き合い頂き本当にありがとうございます。感謝です!
では、また次回!
しーゆーねくすとたぁーいむ。