(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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魔法にかけられて2
(原題:Disenchanted)
2022年
監督
アダム・シャンクマン
データ
ウォルト・ディズニー・ピクチャーズにより制作・公開された2007年のヒット作「魔法にかけられて」の15年ぶりの正統続編として2022年にディズニープラスで独占配信公開された実写+アニメーション映画。
制作指揮には前作から引き続きバリー・ジョセフソンとバリー・ソネンフェルド、さらにジゼル役を演じるエイミー・アダムスが自ら制作にも加わっています。
監督は「ヘアスプレー」「ウェディング・プランナー」や人気ドラマ「モダン・ファミリー」を手掛けた事で知られるアダム・シャンクマン。
脚本はブリジット・ヘイルズ。
アニメーションを担当したのは前作に引き続きリトル・マーメイドのアリエルや美女と野獣のベル、ノートルダムの鐘のカジモド等錚々たるキャラクターを担当してきたジェームズ・バクスター率いるジェームズ・バクスター・アニメーション。
音楽も前作からの続投である、ディズニーミュージックレジェンドのアラン・メンケン。オリジナル楽曲もアラン・メンケンと作詞はノートルダムの鐘やポカホンタスも担当したスティーヴン・シュワルツが務めています。
前作で現代のニューヨークに飛ばされ、慣れない現実社会で生きていく事になったジゼルが禁断の魔法に手を出してしまう「ハッピーエンドのその後」の事件を描いた、現実社会とおとぎ話の対比を映し出すミュージカルファンタジー。
前作同様原作の無い完全オリジナルストーリーですが過去のディズニープリンセスストーリーのオマージュがふんだんに盛り込まれたセルフパロディムービーとなっています。
主人公ジゼル演じたのは「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」等に出演し前作でブレイクを果たしたエイミー・アダムス。
ロバート役をテレビドラマ「グレイズ・アナトミー」でも有名なパトリック・デンプシー。
エドワード王子役は「X-MEN」シリーズや「ヘアスプレー」等のジェームズ・マースデン。
ナンシー役には今や「アナと雪の女王」シリーズのエルサ役で著名であるイディナ・メンゼル。
等、多数のメインキャラクターが15年前の前作からの続投を果たしています。
ジゼルとロバートの娘モーガン役は今作では新人女優のガブリエラ・バルダッキーノへ交代。
前作でモーガンを演じたレイチェル・コヴィーはモンロレーシアの町人役としてカメオ出演しています。
さらに今回のヴィランとなるモンロー婦人は「50回目のファーストキス」や「ベイマックス」のキャスおばさん役でも知られるマヤ・ルドルフが演じています。
前作のすぐ後から続編制作に向けて企画立案や計画が練られていましたが、思うように話が前進せず開発地獄に陥り、実に15年の期間を経て2022年にようやく日の目を見たのがこの「魔法にかけられて2」。
当初は前作同様劇場公開の予定でしたが、コロナ禍等の様々な要因が重なり、最終的にはネット公開という形へ変更。
ディズニープラスでの独占配信としてリリースされました。
ファンが待ちに待った続編作品として大いに話題になり、視聴者数も好成績を記録しましたが、評価としては【前作との根本的な矛盾や作品としてのテーマの乖離】【構成力と脚本力の低下】そして【アニメーションの劣化】など批判的な声が多く上がりました。
一方で、主演のエイミー・アダムスの見事な演技やアラン・メンケンによる楽曲、ヴィラン2人によるデュエット、意外性のあるストーリーや前作同様散りばめられたパロディ等は高く評価もされています。
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あらすじ

ジゼルがニューヨークにやってきてロバートと結ばれてから数年の月日が流れた。
ロバートとジゼルの間には娘のソフィアが産まれ、モーガンはティーンエイジャーとなっていた。
ニューヨークでの暮らしに馴染もうとするがなかなか上手くいかず、モーガンの反抗期も重なり悩んでいたジゼルは、ある時故郷であるアンダレーシアによく似郊外の街、モンローヒルを見つける。
再出発を図り家族と共に郊外に移り住んだジゼル。
しかし慣れない田舎の暮らしにモーガンは馴染めず、ロバートは遠距離の電車通勤に苦しみ、意地の悪そうな町議会長まで現れ、再出発もなかなか上手くいかない。
そんな時引っ越し祝のためにアンダレーシアからエドワードとナンシーがやってきて、アンダレーシアの子供にしか扱えない伝統の願いの杖をジゼルに贈る。
ついにモーガンと決定的な喧嘩をしてしまったジゼルは、最後の手段としてその願いの杖を頼ることに…。
そしてこの願いが、ジゼルやモーガンはおろかモンローヒル全体を揺るがす大事件に発展してしまうのであった…。
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感想

待っていた人達の期待値が高かった分、賛否両論かなり真っ二つに分かれてしまった感のある15年ぶりの続編。
一作目が本当に革命的な、ディズニーの歴史を大きく動かした傑作で、しかも現在でもカルト的な人気を誇る作品なだけに、この反応は仕方ないでしょうね。
色々言われていますが、個人的にはこの続編は概ね良かったと思ってます。
このブログでも何度も語っている事ですが、おときちが続編作品で大切だと思っているのは…
【1本の作品としてやりたい事やテーマを持ちそれを表現できているか】
【前作を観た人が見たいと思っている物を見せれているか】
という2点です。
この2点に関して今作はギリギリですがしっかりクリアしてると思います。
ただやはり15年という長い年月が開いた事や監督や脚本等主力制作陣が前作と違う事もあり、1作目のファンであればあるほど納得できない部分も多々あるのはとても分かりますが。
しかしそれでも、全体のプロットやテーマとして今作は前作を踏まえたうえで新たな問題定義と新たなテーマ、つまり新たな魅せたいものをしっかりと生み出せているので、その点は本当に素晴らしいと思いました。
これが出来ない続編って、ホントに多いんですよ。
「前作を理解してない」という人も多いですが個人的には決してそんな事はないと思いますよ。
'おとぎ話の肯定'のその先。

前作「魔法にかけられて」は、一見過去作を皮肉って馬鹿にしているように見せかけて実はディズニーがこれまでやってきた事を称えているというテーマ性や、現実社会におけるおとぎ話を否定しているようで肯定しているというその構成が多くの絶賛を獲得しました。
そして続編となる今作で描こうとしたもの。
それは「おとぎ話」を肯定した…その先です。
今回のテーマはズバリ…
【続いていく日常にも魔法はかけられる。】
です。
おとぎ話ではハッピーエンドを迎えるとその後は何もおこらない。ずっと魔法にかかったままでいられる。
しかし現実は違う。
一度ハッピーエンドを迎えたとしても、辛いことも悲しい事も生きている限り起こる。
魔法は素晴らしい。おとぎ話は素晴らしい。
だけど魔法は必ずいつか解けるときがくる。
だけど魔法よりも強い力【愛】と魔法にかかっていた時の【思い出】があればそんな日々も幸せに変えられる。
魔法にかけられたように。。
要約するとこんな感じです。
まさに【魔法にかけられた】その先を見事に描いたと、個人的には思いますね。
これを【1作目で受け入れた魔法を否定している】という人がいますがそれは違います。
この2作目が言いたいのは【魔法は解ける。だけど魔法にかかっていた時を思い出という力にかえて生きていこうよ!】という事です。
決して魔法やおとぎ話を否定しているわけではないんです。
これは、辛く悲しい事も多い現代を生きる人々へのエールなんです。
ディズニーランドを例に出している人がいたのですがそれで言うと…
【ディズニーランドに永遠にはいられない。だからディズニーランドでの楽しい思い出を力にかえて日々を生きていこう!】
という事です。
脚本は確かにあまり良くなくて、このテーマがしっかり伝わりきれてない感はあります。
それとこのテーマを伝えるために1作目で成長した筈のジゼルが、RPGで言うところの初期状態に戻っていたりして、前作に思い入れが強い人にとってはキツイでしょう。
だけど個人的には、この前作を踏まえさらにその先のテーマやメッセージをしっかり掲示した制作陣には、素直に拍手を贈りたいですね。
子供は成長し夫婦関係も変わっていく。
人は老ける。災害も起こる。
そう。魔法は解ける。
だけどそれにすがるんじゃなくて、それを思い出という力に変えて、愛を持って生きていこう。
この作品はそう言っています。
脚本がわかりにくいんですけどね。
本当に。
随所に見られる煩雑さ

とは言えやはり1本の続編作品としてはちょっといただけない部分も結構あります。
前述の脚本の散らかりっぷり、ジゼルのキャラ変、ジゼルとモーガンのラストへ向けての関係性の伏線不足、ロバートの王子道が本本筋にうまく絡められていない、、などなど…。
それと個人的に一番残念だったのはアニメーションの劣化です。
まるでディズニーチャンネル用のテレビアニメのようなクオリティ…。
前作と同じバクスター・アニメーションのはずなんですがどうやら今回はそのさらに下請け会社が担当していたようで…。
いくら配信用映画とはいえ、ここをおざなりにした事は本当に残念でした。
エンタメ作品として

これはまぁ基本的には流石のクオリティでしたね。
役者陣がほぼカムバックし素晴らしい熱演を魅せてくれますし、エイミーは相変わらず完璧に役に入り込んでて、ヴィラン顔との表情の使い分け等も最高でしたね。
ミュージカルシーンも流石の出来栄えで街中でのシークエンスなど見応え抜群です。
メンケンの新曲も堪能できます。
いやぁやっぱり外さない。
流石レジェンドです。
さらにヴィラン2人による圧巻のデュエットシーンはまぁこの映画のハイライトでしょうね。
めちゃくちゃ格好良く仕上がってました。
ディズニー映画のパロディ等も相変わらず盛り沢山で、やはり中でも「アナと雪の女王」エルサ役を務めたイディナ・メンゼルの圧倒的な歌を堪能できてしかもあの名曲を意識したフレーズまで飛び出すサービスは、ディズニーファンには堪らないですよね。
不自然な程イディナの出番が増えていた事も、これも言っちゃえばメタオマージュの1つでしょう。
素晴らしかったです。
あとは前作でモーガンを演じたレイチェルのカメオ出演もファンには嬉しい小ネタでしたね。
といった具合に。
脚本が微妙な分ミュージカルや小ネタ等エンタメとしての見所はかなり多い作品には仕上がっていました。
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まとめ

トータルで言うと決して傑作とは言えない続編作品だとは思います。
1作目が何しろ革新的な傑作でしたし、それに比べると今作は色々粗も多いですからね。
ただ、制作陣は変わってはいますがこの「魔法にかけられて」という作品が捉えていた物、伝えたかった事は少なからず今作にも継承されてるとは思います。
そしてそれとしっかり向き合い、新たな課題と答えをしっかり捻り出した全体プロットとテーマは、ファンにとっては一見の価値有りだと思いますよ。
評判が悪いから…とか配信映画だから…という理由で見ないのは勿体ないと思いますね。
最初見始めたときに「何で折角幸せに終わったのに続けちゃうの〜しかも悲しい感じに〜」と思うかもしれません(自分も前半そう思って見てました)が、それがまさしくこの作品のテーマであり狙いなんですよね。
1作目を見た方には、ぜひ1度は観てほしい続編です。
あと、そんな難しい事はいいから楽しいエンタメとミュージカルとパロディが見たいんだよ!
という人には、まさにうってつけの内容になっていますよ〜。
(重ね重ねアニメーションだけは残念でしたが…)
何にせよ。
15年の月日を越えて、オリジナルキャストが元気なうちにしっかりその精神を受け継いだ続編を制作してくれたことに、いちファンとして心から感謝…ですね。
「魔法にかけられて2」は現在ディズニープラスで配信中です♪
はーい。
というわけで今回はこの辺で!
今回も長文駄文にお付き合い頂きありがとうございました♪
また次回。
しーゆーねくすとたぁいむー。