はいどんも。
今日はディズニーの原点である短編映画シリーズについて1本語っていきたいと思います。
ディズニーは元々短編カートゥーンが主戦場の小さな映画制作会社でした。
「白雪姫」の大成功後そのメインは長編アニメーション制作へと移行していく事になります等のキャラクターシリーズやシリー・シンフォニーシリーズ等をはじめ、数は減っていきながらも原点である短編アニメーションの制作は今日まで継続して行われ続けています。
最近ではディズニーの長編作品と併映という形でコンスタントにリリースされていますよね。
何かのシリーズや続編も多いのですが、そのどれにも属さない単発の短編作品の中にも、あまり知られてはいませんが素晴らしい物が沢山あります。
特に2000年代〜の短編作品は、メインである長編アニメーション浮き沈みとは裏腹に非常にクオリティと評価の高い物がとっても多いんです。
アカデミー賞受賞作品もいくかあったりするんですよ。
今回はそんな作品群の中から、ディズニーが誇る偉大なアニメーターの唯一の監督作品であるこちらの1本について語っていきます。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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ジョン・ヘンリー
(原題:John Henry)
2000年
監督
マーク・ヘン
データ
ディズニーが2000年にハリウッドのエル・キャピタン・シアターで初公開した短編アニメーション映画。
日本では後2015年にDVD&Blu-ray「ディズニー・ショートフィルム・コレクション」に収録されて初リリースされました。
1998年の長編アニメーション
「ムーラン」後にディズニーが誇る名アニメーターの
マーク・ヘン発案で製作が始められた作品で、彼が幼少期に慣れ親しんだ
民間伝承【ジョン・ヘンリーの伝説】を原作とした
フォークヒーローミュージカル。
ゼログラフィ技術が全盛期であった1960年〜1970年代までのディズニー長編アニメーションの画風を再現する為に、敢えて粗い鉛筆線をアニメーションに残すその映像表現が大きな特徴の1つとなっています。
監督は発案者であるマーク・ヘン。
アリエルやジャスミン、ポカホンタス、ムーラン、ティアナ等数々のディズニープリンセスを生み出したレジェンドとして知られ、2023年にそのアニメーター活動に幕を下ろしました。
脚本とストーリーは「ムーラン」や「ポカホンタス」などの製作にも携わったティム・ホッジ、そしてブルース・ジョンソンとシャーリー・ピアース。
ディズニーのテレビ作品や様々な映画で劇伴を手掛ける作曲家です。
楽曲はゲイリー・ハインズとビリー・スティール。
ジョン・ヘンリーの妻であり物語の語り手でもあるポリー役を「ダイナソー」や実写版「ライオン・キング」にも出演しているアルフレ・ウッダードが演じました。
ジョン・ヘンリー役をジェフリー・ジョーンズ。
又、本作のストーリークリエイターであるティム・ホッジは職長のマクタヴィッシュ役で声優として出演もしています。
本国でもほとんど劇場公開は行われず、ソフトリリースでの公開がメインとなっている為にあの名匠マーク・ヘンのほぼ唯一の監督作品でありながら、ディズニーの2000年代以降の短編映画の中でも特に認知度の低い作品です。
しかしながら、ファンの間では評価の高い作品であり、地味ながらもディズニーらしさの溢れた偉人伝作品としてコアな人気を獲得。
特に一世代前のディズニーアニメーションを再現する為に工夫を凝らしたその映像表現とパワフルな楽曲と演出は現在でも高く評価されています。
又、数々のディズニーキャラクター達が共演を果たした2023年の短編作品「ワンス・アポン・ア・スタジオ」では、低い認知度の作品でありながら今作のジョン・ヘンリーもしっかりと再登場を果たしました。
あらすじ
偉大なる英雄ジョン・ヘンリー。
その妻であるポリーが彼の残した功績を自身の息子へ語りはじめた。
時は2人の出会いに遡る…。
出会った当初、2人は奴隷として生きていた…。
自由となった2人は結婚し、ポリーはその祝いに自分達を縛っていた足かせから作ったハンマーをジョンにプレゼントする。
彼は「自分はこのハンマーを握ったまま死ぬ」と彼女に誓った。
定住の地を探すジョン達は、鉄道建設に雇われた元奴隷達と遭遇する。
この出会いがジョン達の運命を大きく変える事になるのであった…。
感想
偉人伝をワリと
忠実に描いたストーリーになっていて
キャラクター力も弱くファンタジー要素もほとんど無い地味な作品ですが、非常に
玄人好みの
見応えのある短編アニメーションになっています。
一世代前の、しかもワリと地味な時期のディズニーの作風を再現しようとしていて、「101匹わんちゃん」「ジャングル・ブック」「くまのプーさん」等の特長的な画風と2000年代の技術が融合した、ノスタルジックだけど新しい不思議な映像表現がとても魅力的です。
オープニング等のキルト風のアニメーションもメアリー・ブレアなどのアートセンスを踏襲している様な感じで、非常に良かったです。
パワーのあるミュージカル楽曲がグイグイ物語を引っ張っていくその構成もディズニー黄金期を彷彿とさせてくれました。
ディズニーの得意な映画題材は、大きく分けるとアニマル、プリンセス、そしてこの偉人伝の三つかなぁと思っているんですが、個人的にはこの偉人伝というジャンルが実は一番ディズニーのアニメーション映画スタジオとしての本領が発揮されているジャンルだと思うんですよね。
長編で言うと「ムーラン」と「ポカホンタス」「王様の剣」「ロビン・フッド」くらいしか無いのですが、おとぎ話や寓話を原作とした作品よりも個人的にはこの偉人モノのディズニー映画が好きだったりします。
偉人伝と言うのは往々にして実際の時代背景が深く投影されたシビアな物語が多くて、端的に見るとディズニー映画としては向いているジャンルとは言えません。
だからこそ、そんな物語をどう【ディズニーの魔法】を使って料理するかが非常に重要ですし、それが凄く見ていて楽しいんですよね。
ロビン・フッドを狐にしたり、王様の剣を超シュールコメディにしたり、ポカホンタスをラブロマンスにしたり…。
そして題材が固く暗めでシビアだからこそ、ディズニーのアニメーションや音楽、ミュージカル等のファミリーエンターテインメント力が問われるし、それが光るんです。
と同時に恐らくディズニーとしては最も作りづらいジャンルである事も間違いないですよね。
実際にムーランやポカホンタスも、映画として高く評価されている一方で、歴史背景的側面から現在でも根強い批判を受け続けている作品でもありますし。
そんな中でもこの「ジョン・ヘンリー」という作品は、特に地味でディズニー作品には向かない題材だと思います。
なので当然長編作品にならなかった事も頷けはするんですが、個人的には【長編で観たかった】と思うくらい、良い作品だと思いました。
ディズニーらしさの選択が非常に絶妙な塩梅なんですよね。
物語自体は伝説にかなり忠実であり、余計なものを削ぎ落とした物語がダイレクトに伝わる構成になっています。
無理にディズニーちっくな子供向けへの配慮やファンタジー要素・ギャグは捩じ込まず、ミュージカルとアニメーションを往年の作風に敢えて寄せることであくまでそちらの方向でディズニーの本質のらしさを魅せるスタイル…。
まさに玄人好みです。
演出も細かいところに拘っていて非常に良いんですよね。
蒸気ドリルの運転手が一切顔を見せず台詞も発しない所とか、トンネル内でのジョンのハンマー捌きの描写とか…
魅せ方が非常に巧みなんです。
ただまぁこれをそのままもし
長編化していたら、まず間違いなく
大ヒットはしなかったでしょうね。
この物語自体がディズニーアニメーション映画にはそもそも基本的には向いてないですし、如何せん地味すぎます。
しかし、そういう作品も出来ちゃうのがまさに短編の良さ。
興行収入の大きなプレッシャーに煩わされる事も少なく、クリエイター達が【ホントに今したい事】を形にできるのが短編作品の面白いところなんです。
この作品もまさにそんな1本。
華やかなプリンセス達を生み出してきたマーク・ヘンが唯一監督を務めてまでこの時ホントにやりたかった事は、この元奴隷のアフリカ系アメリカ人による愚直で泥臭い伝説だった…という事ですね。
短編作品には、長編ではなかなか観ることができないクリエイター達の素直なイマジネーションが詰め込まれているわけです。
ぜひ、もっと沢山の方々に知ってほしい、そして見て欲しい作品達ですね。
「ジョン・ヘンリー」は現在残念ながらディズニープラスをはじめ一切の配信リリースがありません。
日本では「ディズニー・ショートフィルム・コレクション」というDVDやBlu-rayでのみ鑑賞する事ができます。
このソフト作品は個人的に非常にオススメです!
アナ雪やラプンツェルの続編等も収録されています。
少々観るのが手間な作品ではありますが、気になった方、そしてディズニーアニメーションのコアな部分も知りたい!という方には是非とも一度はチェックして頂きたい1本ですね。
はーい。
というわけで今回はこの辺で!
今回も長文駄文にお付き合い頂きありがとうございました♪
しーゆーねくすとたぁいむー。