はいどうも。
今回は【ディズニーの実写映画作品】を一本語っていきます。
個人的な見解なんですが、実写映画に関してはアニメーション映画程「これはこうで、あれはこうで、」と不用意に語れるものでもないと思っているんですよね。
それとやはり基本的にディズニーの最近のアニメーションの実写化押しには正直抵抗があります。
アニメーションに比べて諸々事情や要素が複雑であり、作品単体のみと向き合えない作品が多い気がするんですよね。
ただもちろん中には全てを超越するくらい素晴らしい作品も沢山ありますし、アニメーションではなく実写という手法で表現されるディズニーの世界というのはやはりまた違った広がりや魅力を持っているのも事実です。
という事で今回はそんなディズニーの実写作品の中から、決して大ヒットではないものの異彩な存在感を放ち続けるこちらの作品について語っていきたいと思います。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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トロン
(原題:Tron)
1982年
監督
スティーブン・リズバーガー
データ
ウォルト・ディズニー・プロダクションズとリズバーガー・クシュナー・プロダクションズ制作により1982年に公開されたSFハイブリッドムービー。
これまでとは一線を画する大胆な映画を模索していたディズニーに、兼ねてから今作の草案を温めていたスティーブン・リズバーガーが企画を持ちかけた事から制作が開始されました。
リズバーガーが拘り続けたコンピューターの中の世界という異色な設定を、ディズニーのノウハウを駆使する事で、当時まだ創世記であったCG映像・手描きアニメーション・そして実写映像の組み合わせにて表現した一風変わったSF作品です。
世界でほぼ初めてCGIを大々的に使用した作品として映画史上でも大きな意義をなす1本とされていますが、当時のコンピュータ技術は現在とは全く違う限定的な物であり、この作品もそのイメージとは裏腹に実際にはそのほとんどがバックライトや手描きアニメーション等の非常に伝統的で地道な技術によって制作画成されています。
監督と脚本を務めたのは原案者であるスティーブン・リズバーガー。「アニマリンピックス」というアニメーション作品で注目を浴び、現在はトロンシリーズの生みの親としてその地位を確立しました。
音楽は「時計じかけのオレンジ」「シャイニング」等の有名映画手掛けた事でも知られているウェンディ・カルロス。
又、著名なデザイナーであるシド・ミードやブレイク前のティム・バートン、クリス・ウェッジ等も制作に参加しています。
主人公であるケヴィン・フリンを演じたのはアカデミー賞俳優であるジェフ・ブリッジス。
もう一人の主人公トロン(アラン)役にはブルース・ボックスライトナー。
この主要キャスト2名はこの後続く続編等でも同役を再演し、長年に渡りシリーズを支えています。
ヒロインのローラ(ヨリ)にはシンディ・モーガン。
ヴィランであるディリンジャー、サーク司令官、MCPの三役を演じたのはデビッド・ワーナー。
ディズニー内外実に様々な役で映画界に貢献し「メリー・ポピンズ・リターンズ」でのブーム提督役が最後の映画出演となりました。
興行収入としてはそれなりのヒットを記録しますが、その画期的な内容と制作に費やした尽力と見合う程の話題にはならず。
評価面でも批判家陣からは技術面等が好評を獲るものの、特に一般層からはストーリーの雑さや全体のチープさが嫌煙され、芳しい物にはなりませんでした。
しかし公開から10年以上経った頃からその先進的な姿勢や映像表現等に対して再評価が進み、著名人の中にも今作の影響を強く受けたとする人物が多数表れます。
特にジョン・ラセターは「トロンが無ければトイ・ストーリーは生まれなかった」と公言し話題になりました。
さらにディズニー随一の人気ゲームシリーズ「キングダムハーツ」に今作が登場するとその一般認知度も急激に拡大。
約30年ぶりの続編も制作され、現在では数あるディズニー作品の中でも独自の異彩を放つ人気シリーズとして沢山のファンの心を掴んでいます。
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あらすじ
大手ソフトウェアメーカーのエンコム社。
社長のディリンジャーはかつて自身が発表したいくつかのゲーム作品のヒットにより目覚ましい出世を果たした人物。
しかし実際にはそのゲームの開発者はディリンジャーでは無かった…。
一方…とあるゲームセンターを営む元エンコム社員フリンは、かつてディリンジャーに自身が考案したゲームを奪われた事を根に持っており、データ盗用の証拠を見つける為にエンコム社へのハッキングを何度も試みていた。
しかしその度にエンコム社の心臓・マスターコンピュータープログラムに妨害されてしまい成功しない。
そんな時、彼のもとにエンコム社の元同僚であるアランとローラが訪れる。
マスターコンピュータープログラムの暴走を止めること、そして盗作の証拠を掴むこと、それぞれの目的の為に手を組んだ三人は直接社内コンピューターからの侵入を行うため、夜な夜なエンコム社に侵入する…。
しかしそこではマスターコンピュータープログラムの罠がフリンを待ち受けていた…。
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感想
個人的には何気にワリと好きなんですよね。
ハッキリ言ってストーリー・キャラクター・構成…お粗末な部分を上げたらキリがなく1本の映画としては決して面白いとは言えない作品かもしれません。
ただ、いかにも当時のコンピューターやゲーム好きな人達が脳内で作り上げたゲーム的な映画といった感じがして、ある意味ではとても面白いです。
こういう少しマニアックな、自分の脳内にあったやりたい事をディズニーという大手を使って見事に形にして、しかもそれが結果的に後の映画業界に多大なる影響を与える作品になっているというのは、ディズニー作品の中ではなかなか珍しい特殊な、そして幸せな作品のような気がしますね。
自分の心からやりたい事や脳内イメージしっかりと形にできてそれがちゃんと評価されてる映画って、実は結構少ないと思うので。
それでもディズニーとの兼ね合いで色々と譲渡はしたらしいですけどね。
一番やりたかった事であろうコンピューター世界の描写に関しては、当時できたあらゆる手法や技術を駆使して拘り抜いた作りが成されていて、エンターテイメントとして見ていてとても楽しいです。
とはいえ映像表現や世界観の提示に労力を全フリしてしまって、ストーリーや脚本、キャラクター描写にまったく手が回ってない事実はやっぱり否めませんが。
もう少しこの辺がなんとかなっていたら、間違いなく文句なしの名作となっていたでしょうね。。
独自の映像世界
何と言っても今作の一番の特徴はこれでしょう。
CG全盛期な現代に観るとそれはやっぱりものすごくチープなのは間違いないす。
何せまだCGと実写を組み合わせる事も、CGを自在にアニメーションさせる事も出来なかった時代の代物ですからね。
最先端のコンピューター世界を表現している筈なのですが、あくまでも当時の発想と技術力なのでその溢れ出るチープ感は半端ないです。
世界初のCGによる本格作品と良く言われる今作ではありますが、実際にはCG映像(しかもホントに初期のテレビゲームのような質感)は10分〜15分程度しか使用されておらず、あとは特殊な撮影方法と手描きアニメーションを組み合わせて作られていて、個人的にはこの映像努力はホントに素晴らしいなと思いますね。
今見るとまた違った意味での見応えがあります。
この辺の独自の世界観を受け入れられるかどうかが、結構好き嫌いの別れ目だとは思いますが、ライトサイクルとかフリスビーバトルの描写とかは良く出来てるな〜と今観ても思います。
煩雑なストーリー
ストーリー関連に関しては、ちょっと流石に陳腐な部分が多々見受けられるのは否めないところです。
ロマンス、友情、人間ドラマ、テーマ性…色々な要素を打ち出してはいますがどれも全く上手く扱えてないのは間違いないですね。
全体の筋とかも決して悪くはないんですけど、細部が全くカバーできていないし魅せ方が良くないのでちょっと見てるほうが付いていき辛いんです。
それこそとっても【ゲームっぽいストーリー】だなというのは強く感じました。
一世代前のムービーゲームにそのまんまありそうというか…。
少なくともプロの集団が作った1本の映画として耐えられるストーリーと脚本ではないかなぁ…と。
これはやはり制作陣も納得いってなかった部分の1つだったようで、以降の続編等で大きく改善されていく事になります。
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まとめ
この作品そのものは本当に人を選ぶと思いますし、ハマらない人も多いでしょう。
現代に見れば尚更です。
良い意味でも悪い意味でも、ある人の頭の中の空想をお金と時間をしっかり使ってガッツリ形にしちゃった、大人のお遊びのような作品。
実際にこのトロンという作品を作るためにリズバーガーは会社まで立ち上げ、お金を出してくれる会社を探し断られまくった末ディズニーとの契約にこぎつけたという経緯があります。
ただそんな男のロマン的なものの延長上にある作品が、現在の映画世界、映像世界に大きな影響を与えてる事は間違いなく、そして改めて観てみると【コンピューターと人間】という今の時代の正に大きなテーマともなっているトピックを果敢に描いている事にも驚かされます。
コンピューターの中に自分のクローンのような存在がいて、それが自分とは違う意思を持ってコンピューターの中で活動している…
という概念は、正に現代の問題と直結しているような気がして色々と考えずにはいられませんでしたね。
決して名作とは言えないですが、今の時代だからこそ一度改めて観てみるのも面白い1本だと思います。
未見の方はぜひ一度チェックしてみて下さい♪