はいどんも。
今日はディズニーの原点である短編映画シリーズについて1本語っていきたいと思います。
ディズニーは元々短編カートゥーンが主戦場の小さな映画制作会社でした。
「白雪姫」の大成功後そのメインは長編アニメーション制作へと移行していく事になりますが、ミッキーマウス等のキャラクターシリーズやシリー・シンフォニーシリーズ等をはじめ、数は減っていきながらも原点である短編アニメーションの制作は今日まで継続して行われ続けています。
最近ではディズニーの長編作品と併映という形でコンスタントにリリースされていますよね。
何かのシリーズや続編も多いのですが、そのどれにも属さない単発の短編作品の中にも、あまり知られてはいませんが素晴らしい物が沢山あります。
特に2000年代〜の短編作品は、メインである長編アニメーション浮き沈みとは裏腹に非常にクオリティと評価の高い物がとっても多いんです。
アカデミー賞受賞作品もいくかあったりするんですよ。
今回はそんな作品群の中から、あの超有名シュールレアリスムアーティストであるサルバドール・ダリとの奇跡のコラボを果たしたこちらの1本について語っていきます。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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デスティーノ
(原題:Destino)
2003年
監督
ドミニク・モンフェリー
データ
2003年にアヌシー国際アニメーション映画祭で初上映され、2004年に限定的に劇場公開されたウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ制作の短編アニメーション映画。
もともとは1940年代に、兼ねてから親交のあったウォルトと当時から既に著名アーティストとして活躍していたサルバドール・ダリとのコラボレーションとして、ダリと当時のディズニーの主力クリエイターであったジョン・ヘンチを中心に制作が進められていた作品。
既に多数の絵コンテやテストアニメーションも制作されていましたが、第二次世界大戦開戦やスタジオの収益悪化で已む無く制作は断念されます。
その後半世紀の時がたち、ウォルトの甥ロイ・E・ディズニーがファンタジア2000作成の際この眠っていた企画を再び始動させたのがこの作品です。
ファンタジア2000には間に合いませんでしたが、2003年に晴れて公開が実現しました。
死にゆく運命をせおい荒野を彷徨うダリアという女性とクロノスの叶わぬ恋路を描いた映像作品。
制作を指揮したロイ・E・ディズニーの命により「ヘラクレス」や「ターザン」等の様々な作品でアニメーターを務めたドミニク・モンフェリーにが監督を務め、これが彼の初監督作品となりました。
ストーリープロットはオリジナル制作当時のサルバドール・ダリとジョン・ヘンチの物がほぼそのまま使用され、ファンタジア2000のドナルド・W・アーンストも調整に参加しました。
音楽も1945年制作当時の、メキシコのアーティストアルマンド・ドミンゲスが制作し「三人の騎士」での出演もしているドラ・ルスが歌唱した物がそのまま使用されています。
制作はダリの妻ガラ・ダリの残した手記やヘンチの助言を借りながら進められ、大きな改変を行うことなく当時のプロット・構想のまま完成されました。
この作品はアメリカで限定上映された後、世界各国のダリ展にて続々と公開されその注目を集めました。
日本でもダリ展で数回の展示が行われています。
難解ながらもダリの数々の作品からインスパイアされたその世界観は、特に彼のファン達から好意的に評価され「サルバドール・ダリの入門作品」として指示されています。
ディズニーファンからはそのファンタジアの流れを汲む作風が同作のファンから注目され「マッチ売りの少女」等と並ぶファンタジアのエクストラエピソードの1つとして高く評価され続けていて、2003年のアカデミー賞にもノミネートを果たしました。
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あらすじ
とある荒野。
時の神クロノスと死の運命を背負った女性ダリアはお互いを求め続ける。
しかしそれは叶わぬ恋であった。
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感想
ウォルトがその生涯で目指したものは大きく2つ。
ファミリーエンターテイメントの最高峰とアニメーション映画の可能性の拡大。
今作はその後者に対しての大きな取り組みの1つでした。
子供の娯楽としか思われていなかったアニメーションを芸術の域まで高める挑戦。
この壮大な挑戦は、結局ファンタジアの商業的失敗と世界大戦等の世情変化によって志半ばとなってしまった感が強いのですが、ウォルトには様々なヴィジョンがありました。
その中の1つが、このダリとのコラボレーションです。
それをなるべくオリジナルの構想通りに具現化した作品がこの2003年の「デスティーノ」。
1940年のファンタジアのその先に、ウォルトがやりたかったことの片鱗を垣間見れる作品となっています。
おときちはダリはほとんどわからず詳しくないので、ディズニー側寄りの感想にはなりますが…
この作品…やはり評論としては「芸術作品」「難解」「ディズニーらしくない」という物が多いのですが、率直な個人的感想としては…
「ディズニーの芸術志向作品郡の中ではかなり正統派でわかりやすい作品」
だと感じました。
特にそれこそ1940年代のディズニーの作品にはもっとぶっ飛んだ物がゴロゴロしています。
これが発表された2003年というのはディズニーの手描きアニメーション終焉期でもあり、正直アニメーション自体の質はあまり良くありません。
ダリアのダンス等も作画は美しいのですがアニメーションとしては少々ぎこちなくおざなりな所も散見されます。
おそらくこの部分は、構想されていた1940年代にもし作品化が実現していたらもっと恐ろしく凄い物になっていたでしょうね。
ただ、それを補って余りある美的な部分のセンスと世界観形成力がこの作品は半端ないです。
ダリの作品をコンセプトとしたその映像力は半端なく、詳しくない自分でも彼のアーティストとしての物凄さが充分伝わってきます。
さらにそれを上手に包み込むディズニーの全体世界観の構成力は流石です。
タイトルロゴからスタッフロール、映像展開の構成、文字フォントデザインに至るまで、この繊細な世界をしっかりと引き立てています。
そして何よりも個人的に自分がこの作品で一番良いと思ったのは「音楽」です。
この作品の為に作られたラテンでありながらなんとも美しく力強いテーマソング。
これが本当に名曲で。
一見なんの関係もなさそうなこの作品の楽曲が何故ラテンなんだと不思議に思った方もいるかと思います。
これは実は当時ディズニーが置かれていた状況が関係していて。1940年代中盤、ディズニーは政府の依頼でプロバガンダ映画の制作に追われていました。そしてその政府から与えられた指名というのが南米との関係良好化だったんです。
「ラテンアメリカの旅」や「三人の騎士」をご存知の方ならお分かりですよね。
当時最もディズニーが馴染み深く、仕事を共にしていたのが南米出身のアーティスト達だったんです。
ダリの出身がスペインであることも影響しているかもしれませんが、何にせよドミンゲスが作曲しドラ・ルスが歌ったこの曲が本当にどハマリしていて。
この作品の切なくも力強い世界観を見事に形成しています。
個人的には、このウォルトのアニメーション芸術の探求はファンタジアが至高であり、それ以降はあまり上手くいかず「ディズニーランド」の誕生でほぼ完全に消滅してしまった遺産だと思っています。
こちらの方向でもしも大当たりしていたら、ディズニーランドも、エンタメの覇者としての栄光も、おそらく無かったでしょう。
しかしファンタジアが今では映画史に残る名作とされてる事が象徴するように、そのウォルトの志は未だに息づいていて、ディズニー内外の様々な作品に大きな影響を与え続けています。
2003年に奇跡の完成を果たしたこの作品もその1つです。
もちろんファンタジアの系譜を汲んでいる作品なので、しかもシュールレアリズムの神様ダリなので、バリバリに人は選ぶし間違っても子供向けではありません。
ストーリー等エンターテイメント作品として面白い物では決してありませんが、ダリの作品、又はディズニーの芸術志向作品が好きな方にとっては堪らない1本である事は間違いないでしょう。
「デスティーノ」は現在ディズニープラスで配信中です♪
もし少しでも興味がお有りの方は、ウォルトがファンタジアの先に見た世界を、ダリがディズニーと表現しようとしていた世界を…是非1度この作品で味わってみて下さいね♪