ディズニー映画語り ファンタジア2000 | すきなものしか語れない

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元ディズニーシー長年単パサー。今はおもにディズニー映画中心に好きなものだけ勝手に語るつまらないブログです。Dヲタだった頃の記事は思い出として残してます。


Hi!どうも。


さて、ディズニーアニメーション映画史、時代は輝かしい黄金期・ディズニールネサンスと言われた1990年代を終えて、今回からいよいよ2000年代に突入です。


2000年代、特に前半から中盤にかけては世間的に【ディズニー第3の暗黒期】と言われている時代。


正直個人的には「暗黒期」だとは思っていないのですが、時代の変化競合会社の躍進、何よりも3DCGアニメーションの台頭等、様々な事案に悩まされた時代であった事は間違いないですね。


実際に前作のターザンに、まるで示し合わせたかのようにディズニーアニメーションスタジオ取り巻く状況悪化の一途を辿っていく事になります。



そんな苦難の時代の幕開けである2000年代最初の一本は、皮肉にもあのディズニーの歴史に残る大名作の、待ちに待たれた60年ぶりの続編作品となったのでした。




(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)




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  ファンタジア2000

(原題:Fantasia 2000)

2000年

監督

ドン・ハーン 他


データ

ウォルトディズニーアニメーションスタジオ38作目の長編アニメーション。


1940年に公開された「ファンタジア」の正式な続編であり、ディズニーではじめてIMAXシアター用映画として制作された作品。



制作総指揮はウォルト・ディズニーの兄ロイ・O・ディズニーの息子、つまりウォルトの甥であるロイ・E・ディズニー


兼ねてから浮かんでは消えてを繰り返していたファンタジアの続編案。ロイが当時のディズニーCEOマイケル・アイズナーを説き伏せて遂に実現に漕ぎ着けたのがこのファンタジア2000です。



監督は「美女と野獣」をはじめ数々のルネサンス期作品で腕を振るい黄金期を引っ張った名プロデューサーのドン・ハーンをはじめ「ポカホンタス」の監督や様々なディズニー作品への多大なる貢献で知られるエリック・ゴールドバーグ等、各シーン毎に8名が分担して担当しています。


前作同様クラシック音楽に乗せてアニメーションが展開する短編作品を連ねたオムニバス構成になっていて、今回はジェームズ・レヴァイン指揮シカゴ交響楽団による演奏。



前作から「魔法使いの弟子」デジタル処理を施しノーカット再収録されており、これによりミッキー・マウスと前作の指揮者レオポルド・ストコフスキーアーカイブゲスト出演を果たしています。


ミッキーは追加シーンもあり、そのボイスアクトはアーカイブ音声からウォルト・ディズニーと新作シーンを三代目専属声優のウェイン・オールウィンそれぞれ務めています。


ディズニー・スターからは新たにドナルド・ダックデイジー・ダックも出演。

ドナルドを二代目専属声優のトニー・アンセルモデイジーミニー・マウスの専属声優であるルシー・テイラーが担当しました。(但しデイジーの台詞は一度の叫び声のみ。)


さらに名優スティーブ・マーティン「美女と野獣」のポット夫人役で知られるアンジェラ・ランズベリー、さらに「ライオン・キング」ムファサ「スター・ウォーズ」ダース・ベイダー役ジェームズ・アール・ジョーンズ様々な俳優や音楽家ナビゲーターとして出演しています。



今作の興行収入はこれまでのルネサンス作品と比べると非常に低く(前作ターザンと比べると4分の1以下)数字だけ見ると【失敗と捉えられており、確かに収益的にはほぼ利益なしの結果とはなっています。


しかしこれは当時まだ現在ほど普及していなかったIMAX専用映画としての公開であった事が大きな要因であって、全米では当時のIMAX史上最大のヒット記録を打ち立て、日本でも4館のみでの独占上映から始まったにも関わらず、IMAXコンテンツでの驚異的なヒット作として記録される等決して失敗とは言えない功績を残しました。


評価面ではアニメーションクオリティ音楽とのシンクロ具合独創性等の一作目からの低下には批判も目立ったものの、前作の難点であった「娯楽映画としての間口の狭さ」を大きく改善したそのオムニバスエンタメ作品としての質の高さ、中でも【ラプソディ・イン・ブルー】をはじめとする数点のエピソードに関しては非常に大きな称賛を集めています。


現在でも、傑作ながら少々敷居の高い感のある【ファンタジア】というコンテンツ上質な入門編として、そして何よりもファンタジアをもう一度世に復活させたという功績は大いに讃えられており、沢山のディズニーファンから愛され続けている一本です。




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あらすじ




名優や音楽家達のナビゲートと共に音楽からインスパイアされた様々な短編アニメーションがシカゴ交響楽団の演奏と共に展開されていく構成。


アニメーションパートは一部を除いて台詞なし。


☆収録作品


1.交響曲第5番

2.交響詩「ローマの松」

3.ラプソディ・イン・ブルー

4. ピアノ協奏曲第2番~アレグロ

5. 動物の謝肉祭より「終曲」

6. 魔法使いの弟子

※前作よりデジタル・リマスターにて再収録

※ミッキー・マウス出演

7.威風堂々

※ドナルド・ダック及びデイジー・ダック出演作品

8.火の鳥


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感想




まず最初に言わなければならないのは自分が生粋のファンタジア信者だということ。


ディズニーだけではなく、全ての「映画」の中でファンタジアが一番好きな人間です。


そして同時にファンタジアみたいな映画は最も評価やレビューが意味を成さないタイプの


好きな人は無条件に感覚で好き。

無理な人は無条件に感覚で無理。


そういう【感覚】の映画だと思っています。


あくまでも一作目に関しての話ですが。



なので、そういう人間からするとこの「ファンタジア2000」は、どうにも冷静には語りにくい作品なんですよね。。


なので今回は出来るだけ短めに、冷静に、端的に。これを心がけて頑張ってみます。






ファンタジアか否か




いきなりですが

これは申し訳ないけど「否」です。


クオリティ云々ではなくそもそもの作り方というか概念が大きく違うからです。


そもそもファンタジアという作品は大前提として…


音楽からアニメーター達がインスパイアされたイメージや情景を具現化した映像作品なんです。


もちろん体裁の話ですが。


つまり音楽が主役というか先にある作品なんですよね。


だからこそ音楽とアニメーションが文字通り融合した作品になってるんです。

だからこそ今でも禿山の一夜を聴くと沢山のひとが今作のチェルナボーグを思い浮かべるんです。


どうしたってそれがファンタジア最大の特徴だと思うんです。


それに対してこの「2000」は、間違いなくアニメーションが先にある作りなんですよね。


「こういうアニメーションを作ろう」→「じゃあこの曲にしよう」という具合です。


実際に作品内でもそれは語られていて、ナビゲーターが「すずの兵隊のアニメーションを作ろうと考え、それに似合う音楽を探して見つけました。」というような話をする場面があります。


ファンタジア2000のエピソード達は、普通に質の高いアニメーションクラシック音楽が「付いている」短編作品なんですよ。


ドナルドとデイジーの短編威風堂々が流れてるだけなんですよね。


融合していないんですよ。

 

これは別に悪い事でも何でもないしアニメーション映画を作る際の当然の真っ当な流れです。


タイトルが「シリー・シンフォニー」とか「メロディ・タイム2」とかだったら手放しで絶賛していたと思います。


だけど、ファンタジアか?と聞かれたらこれはどうしても「否」なんです。


めんどくさい信者で本当ごめんなさい。




一本の映画として間口を広げた優しい作り




今作は前作で散々言われていた「大衆性の無さ」を見事に徹底的に改善しています。


上映時間は前作の2時間越えから75分に大幅短縮

各エピソードに関しても比較的短めの尺で制作されていて、一番大きいのはほぼ全てのアニメーションに明確なストーリー性が用意されていること。

さらに、ほぼ音楽とアニメーションのみに特化していた前作と違い、各作品の継ぎ目にはハリウッドスター達が登場し軽妙なトークを繰り広げます。


これによって一本のアニメーション映画としての見易さ格段に上がり、指摘されていた「大衆性の低さ」をしっかりと改善大人も子供も楽しめるエンターテイメント作品としてファンタジアを見事にリファインすることに成功しています。


これに関して本当に素晴らしい努力だと思います。



アニメーションの完成度



肝心のアニメーションですが、これに関しては正直ムラがあるなというのが第一の感想です。


良いものは本当に良いです。


特に評価が高いのがラプソディ・イン・ブルーですが、これは本当にアニメーションストーリープロット素晴らしい短編作品に仕上がっていると思います。



その他に関しては素晴らしい描写美しいシーンも沢山あるんですが、細部の描き込み不足引き絵の誤魔化し等も散見され、詰めの甘めな印象がちょっと強いです。


CGも現在ほど技術が円熟してないににも関わらずかなり露骨な使い方をしていて、今観ると前作とは違った意味古さ感じるかもしれません。




非常に意欲的な試みを沢山していて、現代のCG時代に繋がるノウハウ作りにも間違いなく一役買っているとは思うのですが…

セルアニメにおけるCG使用という点においてはターザンのような自然で効果的な魅せ方はできていない気はしました。


それとこの作品で一番大切であろう音楽とのマッチングですが、合わせよう合わせようというあざとさをちょっとだけ感じてしまうんですよね。


んー。

ごめんなさいやっぱりどうしても辛口になっちゃいますね…。


良い作品なんですよ!


それは間違いないんです。



賛否の分かれる「再収録」



それとこれだけはどうしても言っておきたいのですが、前作の「魔法使いの弟子」全編ノーカット再収録なんですけど、これはファンタジアがどうとかじゃなくて一本の独立した新作映画として御法度だと思うんですよね。


一部の使用とか大きくアレンジやリメイクしてならまだわかりますが、、そのまんまですからね…。


だって見たことあります?

新作を謳った続編映画10分前作とまったく同じ映像を見せられるって。


いやわかるんですよ。

気持ちは本当にわかるんです。


ミッキーの出演する「魔法使いの弟子」ファンタジアを象徴する作品ですし、商業的に失敗と言われたファンタジアのこの作品を今改めて皆に観てほしいって気持ち。


本当にわかるんですけど。。


他にやり方はあったと思うし、確かにファンタジアは当初【セットリストを数曲変えて繰り返し上映する構想】ウォルトにあって、それを実現したかった気持ちもわかるんですけど、、60年ぶりの続編だったわけですから…。


ミッキーを出演させたいならミッキーの新作をやっぱり2000で作って欲しかったですね。



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まとめ




繰り返しになりますが…

ファンタジアとしては「否」です。


これはどうしようもないです。


ただ一本の「長編ディズニーアニメーション映画」としては間違いなくこちらの方が数段良く出来た質の高い作品になっていると思います。


そもそも1940年ファンタジア「大衆娯楽」である映画においては「失敗作」なんですよね。これは認めざるをえないんです。


そんな中でファンタジアの精神出来るだけ引き継ぎつつ、映画としての欠点であった部分を躊躇なく改善し、クオリティの高い一本のオムニバス映画としてリファインさせた今作はある意味、【似たようなファンタジア】を作るよりも同作への熱意リスペクトを感じる、本当に価値のある素晴らしい作品だと思います。


多分物凄く勇気がいる事だったと思うんですよね。ちなみに元チーフのジェフリー・カッツェンバーグ最後までこの作品の制作に反対していたそうです。



あくまでもあのファンタジアとはまた別物として。

ハイクオリティな誰が観ても楽しめる「平成のディズニーミュージックオムニバス」映画として、躊躇いなくオススメできる素敵な一本です。



そしてやはりいちファンとして「ファンタジア」というコンテンツもう一度世に送り出してくれた事実には本当に心から感謝ですね。




「ファンタジア2000」は現在ディズニープラスにて配信中です♪







やっぱりちょっと感情的になっちゃいましたね。



ファンタジアにはどうしても思い入れが強いもので…。


失礼致しました。



というわけで、今回はこの辺で!




長々とお付き合いいただきありがとうございました。



しーゆーねくすとたいむ〜。