ディズニー映画語り ラーヤと龍の王国 | すきなものしか語れない

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元ディズニーシー長年単パサー。今はおもにディズニー映画中心に好きなものだけ勝手に語るつまらないブログです。Dヲタだった頃の記事は思い出として残してます。


はいどぅもぉ。


さて、今回は恒例のディズニーアニメーション映画史です。


【ディズニー第3の黄金期】と言われる2010年代を終え、時代はついに2020年代へ。


「塔の上のラプンツェル」「シュガー・ラッシュ」スマッシュヒットから始まり、2013年「アナと雪の女王」による特大ブレイク、さらに続くベイマックス」「ズートピア」も大ヒットを記録する等2000年代の低迷が嘘のような快進撃をみせたディズニー。


しかしその一方で、作品への思想やメッセージ性の露骨な内包様々な意味でのディズニーイメージ転換戦略近代映画トレンドに寄せた内容による伝統の破壊等からアンチが大量に発生するという側面も目立った今回の黄金期でした。



前作「アナと雪の女王2」ではメガヒット作の続編にふさわしい大成功で黄金期に有終の美を飾ったディズニーですが、ここからいよいよコロナ本格蔓延期・そして如実な方針変更による深刻な暗黒期に突入していく事となります。




まさに苦難の時代言える2020年代の幕開けを告げることになった一作が、こちらの作品でした。



(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)


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ラーヤと龍の王国 

(原題:Raya and the Last Dragon)

2021年

監督

ドン・ホール

カルロス・ロペス・エストラーダ


データ

ウォルトディズニーアニメーションスタジオ59作目の長編アニメーション。

 

監督は「くまのプーさん(2011)」「ベイマックス」等を手掛けたドン・ホールと「アナと雪の女王2」からディズニー作品に参加しているカルロス・ロペス・エストラーダ

脚本はほぼディズニー作品初参加となるクイ・グエンとアデル・リムというフレッシュな顔ぶれ。



音楽は「ダイナソー」「アトランティス」も担当し「トレジャー・プラネット」以来久々のディズニー作品となるジェームズ・ニュートン・ハワード


架空の聖地「クマンドラ」を舞台に世界を救おうとするラーヤと伝説の龍シスーの奮闘を描いたアジアンファンタジーアドベンチャー


原作の無いオリジナルストーリーですが作品舞台のモデルである東南アジア各国の伝説や伝統からインスパイアされ制作された物語となっています。


主人公ラーヤを演じるのは「スター・ウォーズ」への出演でも知られるケリー・マリー・トラン
日本語版は吉川 愛さん。

相棒となる龍のシスー役は中国系アメリカ人・韓国系アメリカ人の血を引く俳優オークワフィナ
日本語版は高乃麗さん。
実写版リトル・マーメイドスカットルモンスターズ・インクシリーズセリア等でも有名です。

ラーヤの父ベンジャ役には人気ドラマ「LOST」「24-twenty four-」でお馴染みのダニエル・デイ・キム。日本語版はズートピアニック等も務めるベテラン森川智之さん。


上記の配役含め原語版ではキャスト陣に東南アジアに縁のある演者さんが多く起用されていますが、「モアナ〜」の時ほど徹底はされておらず、その事がしばしば批判の対象にも上がっています。


本格的なコロナ禍に直面した中で制作・公開された初めてのWDAS制作映画でしたが、1000人近い人数が携わったリモートワークの制作をはじめ、急なスタッフ・キャストの変更、さらに公開の延期や上映劇場の縮小、ディズニープラスでの劇場との同時配信等、公開まで非常に多くの苦難に見舞われた作品となりました。

配信での収益はカウントされない他、ディズニーが実写「ムーラン」等で映画館への不義理とも言える行為を行った事で幾つかの劇場が作品公開を拒否した影響等もあり単純に判断はできませんが、興行収入自体はこれまでの黄金期作品とは比較にならない程低い数字を記録。


評価面では概ね好評を得ますが、それに関してもこれまでの「モアナと伝説の海」や「アナと雪の女王2」程の絶賛には届かず、前述した東南アジア題材の物語でありながらキャストやスタッフの器用にムラがあることや、作中の様々な国の文化をブレンドした表現には批判も多く上がりました。


しかし、近年のディズニー作品にはなかったアジア文化主体の世界観や漂う硬派な雰囲気にはファンも多く、現在でも根強い人気を得続けている作品でもあります。




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あらすじ




聖地クマンドラ。

自然に溢れ豊かなこの地で人々は龍と共に平和に過ごしていた。

しかしある日…クマンドラ一体に心を持たない魔物【ドルーン】が突如現れ、人々や龍は次々に石に変えられてしまった。

残った最後の5人の龍達はそれぞれの魔力を石に込め、最後の龍【シスー】に託す。
石の力によりドルーンは封印され、石に変えられた人々は戻ったが、そこに龍の姿は返らなかった。。。

それから500年。

残された龍の石を巡りクマンドラは大きく5つの国に分裂してしまう。そのうちの一つ【ハート】に石は保管されていたが、ハートの長ベンジャはかつて一つだったクマンドラを再興する為、対立している各国に働きかけ和平を目指していた。

ベンジャの一人娘ラーヤもまた父を尊敬し、クマンドラ再興を信じていた。

しかし、その足がかりとなるはずの5カ国出席の親交の席で事件は起きてしまう…


それから数年後…

クマンドラ一体は封印から放たれたドルーンが蔓延り、退廃の一途を辿っていた。

そんな中、石になった父を救うため【最後の龍シスー】を探して大きなダンゴムシに乗って荒野を疾走する1人の女性がいた…

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感想



ストーリープロット、世界観、アニメーション、音楽、全てにおいて高品質な良い映画です。

【信頼】というテーマもとてもポピュラーでわかりやすく表現されています。

キャラクターも魅力的に描けている。

コロナ禍絶頂期にこれだけのもの、しかも他文化を主題とした作品を制作するのは本当に大変だったでしょうし、素晴らしいクオリティだと思います。

ただ、個人的にはですが全てにおいて想像を越えて来なかったというのが正直なところでした。


詳しくは↓↓で〜。


単純な程難しいテーマ



この映画では【信頼】というのが大きなテーマとして描かれています。

「シンプルに描けている」と前述しましたが、この【他人を信じること】というテーマは、シンプルなようで実はかなり難しい、というかほとんど人間の永遠のテーマと言っていい程の代物だと思います。

一本の映画の中でわかりやすく物語にのせてしっかり描き切るのはやっぱり無理があったかな、と。

過去にあった事が理由で他人を信じれないラーヤ無条件に信じようとしてしまうシスー対比で主に描かれていますが、もちろん物語的に最後はシスーが正しかったという流れになっていきます。

いやこれは当然そうだと思うんですが、ただ【人を信じる一歩を踏み出すことが大切】と着地させる根拠が一本の映画の中では圧倒的に弱いんですよね。

【試しに信じてみたら結果良い方向に転がりました。】という感じに見えてしまう。


その過程で重要になるのが各国でそれぞれ敵として出会ったブーンら仲間達

それぞれ良いキャラしていて大好きなんですが、彼らと結ばれる絆が【人を信じること】の根拠になるハズだしそういう構成だと思うんですが、ここの描写が致命的に薄いんですよね。

成り行きで仲間になり最後まで…その最後もラーヤがああいう行動を取ったから致し方なく…といった感じにしか見えず…。


何が言いたいかと言うと【一本の映画ではこのテーマを描ききるには全く足りない】という事なんです。

テーマだけじゃなく、この映画のプロット自体間違いなく長期シリーズ向けなんですよね。


テレビシリーズとかで見たかったですね。
折角ワールドディテールもメチャメチャ凝っているので。
各仲間との邂逅信頼関係の構築をもっと丁寧に魅せて、じっくり描いていたらとんでもない名作になってたんじゃないかな…と。

この世界の物語やテーマを描くにはどうしても尺が足りなかった。故に急な心情変化無理矢理なご都合主義シーンが増えている感じで、それは残念ですね。


コメディと世界観の関係



この作品でもう一つ気になったのはコメディ世界観のアンバランスさです。

これは実際にアメリカでは結構批判の的の一つとなったようですが、確かに今作はちょっと久々に目立ちますね。

モアナやアナ雪ではうまくやってたんですが。

ラプンツェルくまのプーさん(2011)等でも顕著だった【時代設定と不一致な現代的なギャグ】が多いという事ですね。

本作のもう一人の主人公とも言えるシスーはとても良いキャラをしていて面白いんですが、放たれるギャグのノリや固有名詞等がやはり世界背景と一致しない物が多く、別に時代設定は明確にされてはいないんですが違和感が強かったのは事実ですね。

もちろん過去にはアラジンのジーニーを代表するぶっ壊しキャラも多数いて、違和感なく認められている物もあるのですが、今作に関しては世界観がやはり硬派である事や東南アジアの伝統に重きをおいているので余計に現代アメリカ的ジョーク浮いてしまったんでしょうね。


個人的には基本的に有りだと思うしシスーのキャラも大好きですが、違和感を感じてしまうという事は作品全体の世界観やプロットの邪魔をしてしまっているという事なので…難しいですよね。

アラジンやラプンツェルでは有りだけど、プーさんでは無理だった…というのと同じですね。

世界観が独特な作品程、細部まで気を使わないといけないってことでしょうね。

たかかギャグ、されどギャグです。

そう考えると本当にジーニーって、奇跡的なキャラクターだったんだなぁとつくづく思います。


娯楽映画として



色々綴りましたが、いちエンターテイメント映画としては間違いなく素晴らしい出来です。


目に見えて目立つ余計な社会風刺等もなく、純粋にアクションアドベンチャーとして最後まで楽しく観ることが出来たのはホントに良かったです。


シスー達ドラゴンのシーンも幻想的ですし、何よりアクションシーン実写映画さながらの臨場感ある作りになっています。


仲間達の個性もしっかり出ていて、このパーティーの旅をもっと見たかったなぁと思ってしまいましたね。



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まとめ【新たな旅路】




重ねてになりますがコロナ禍の完全リモートワークでこのクオリティは本当に凄いと思います。

反面、もしこれがコロナ禍制作でなかったら…
というのも正直考えてしまいましたね。
もっと現地取材やスタッフでのディスカッションがもっと綿密に出来ていたら…

さらに凄いものが出来ていたんじゃないかと思わざるを得ません。

コロナ直撃による低収益に加え、同年に公開される事となる次作「ミラベルと魔法だらけの家」に注目度や各種トロフィー等を軒並み持っていかれる形となり、実際確かに惜しいと思う部分も多い少々気の毒な立ち位置となってしまった今作ですが、間違いなく娯楽映画として高品質の佳作であり、ディズニーの2020年代新たな旅路の始まりに相応しい、沢山の可能性を感じる素敵な作品だと思います。


はい。


というわけで今回はこの辺で!



今回も長文駄文にお付き合い頂きありがとうございました♪



また次回。



しーゆーねくすとたぁいむー。




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