はいどぅも。
さて、今回は恒例のディズニーアニメーション映画史。時代は輝かしい黄金期・ディズニールネサンスと言われた1990年代を終えて【ディズニー第3の暗黒期】とも言われている2000年代に突入中です。
前作の「ラマになった王様」ではコメディ主体の軽い作風で新たな境地を開拓したディズニーでしたが興行収入面では振る舞わず、大きく数字を落としてしまう結果となりました。
他スタジオによる3DCGアニメの台頭がより顕著になり、人々の関心は手描きアニメからフルCGへ完全に移行しつつあり、ディズニーは苦しい状況に追い込まれていきます…。
そんな中次に公開されたのは、あの「美女と野獣」のゴールデンコンビが再びタッグを組み制作した渾身の一本となる、こちらの作品でした…。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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アトランティス 失われた帝国
(原題:Atlantis: The Lost Empire)
2001年
監督
ゲイリー・トゥルースデイル
カーク・ワイズ
データ
ウォルトディズニーアニメーションスタジオ41作目の長編アニメーション。
ウォルト・ディズニー生誕100周年記念作品として公開されました。
ベースとなったのは古代ギリシアの哲学者プラトンが提唱した「アトランティスの伝説」
並びにフランスの小説家ジュール・ヴェルヌによる「海底二万里」。
【これまでのディズニーのミュージカルやファンタジー路線とは全く違う骨太なSFアドベンチャー】を念頭に1996年から製作がスタート。
ディズニーアニメーション史上これまでで最大規模のCGIが使用されたり、今作の為だけに言語学者のマーク・オークランドがオリジナルの言語【アトランティス語】を開発する等、1億ドルを超える巨額の予算が投入された一本。
ミュージカル完全撤廃で、謎の古代帝国アトランティスを巡るこれまでのディズニーアニメーションにあまり無かった本格的なSFファンタジーアドベンチャーが展開されます。
監督は「美女と野獣」や「ノートルダムの鐘」を手掛けたゲイリー・トゥルースデイルとカーク・ワイズ。
脚本は同じく「ノートルダムの鐘」そして「ターザン」のタブ・マーフィ。
音楽は「ダイナソー」同様ベテランのジェームズ・ニュートン・ハワード。
声優陣が非常に豪華な事でも有名なこの作品。
主人公のマイロ役はあの「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のマイケル・J・フォックス。
日本語版はV6の長野博さん。
さらにアトランティスの王役として「スター・トレック」のレナード・ニモイも出演。
日本語版は平幹二朗さん。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と「スター・トレック」の二大SF俳優の共演は大きな話題になりました。
ヒロインのキーダ役にはテレビ作品を中心に数々のディズニーキャラクターを演じるクリー・サマー。日本語版は木村佳乃さん。
他にもクラウディア・クリスチャン、ジョン・マホーニー、ジェームズ・ガーナー、コーリー・バートン、ジム・カミングスなどが出演、日本語吹き替えではDREAMS COME TRUEの吉田美和さん、高島礼子さん、内藤剛志さん等多方面から錚々たる顔ぶれがキャスティングされています。
1億2000万ドルもの制作費が投入された美女と野獣コンビの渾身の意欲作でしたが、収益面では前作のラマになった王様を僅かに上回る程度で振るわず、停滞ムード打破の一手にはなりませんでした。
評価面でも、アクションや映像表現など全体クオリティの高さを称える声もありながら基本的には賛否両論であり、ストーリーやキャラクター性に関しては厳しい声も多く上がりました。
しかし、現在ではその緻密なディティールや他ディズニーアニメーションとは毛色の違う本格SFの作風が多くのファンから支持されており、一般認知度はあまり高くないながらもカルト的人気を獲続けている【ディズニーファンから愛されるディズニー作品】の代表核の一つとなっています。
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あらすじ
変わり者の言語学者マイロ・サッチは博物館で働きながら冒険家であった亡き祖父の遺志を継ぐため、幻の古代帝国アトランティスについての調査を続ける毎日を過ごしていた。
ある時アトランティスに関しての大きな手がかりを発見したマイロだったが、誰にも相手にしてもらえない。
失意の中帰宅すると目の前に突然謎の女性が現れ、冒険家であった祖父を良く知るウィットモアなる人物のもとへと連行されることになる。
ウィットモアは亡きマイロの祖父との約束を守るため自身の資金を投じアトランティス探索を計画している人物だった。
その探査隊に参加することを決意したマイロは、個性的な隊の仲間達と共に幻の古代帝国アトランティスを探すため旅立つ事になるのだが…
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感想
うーん。
なんか凄いコルドロンを思い出しましたね。
今までのディズニーでやってなかった新しい路線に果敢に挑戦してる感じと、それによってディズニー映画ならではの良さが少なからず犠牲になってしまってる感じが。。
いや勿論全体ディティール等本当に細かい所まで拘っているのでクオリティがとても高くストーリーもしっかり面白くて、自分はかなり楽しめた方ですが…
諸々気になる部分残念な部分が多いのも事実で、所謂’ディズニー映画'としてはやはり少々物足りない一本かなぁというのが正直なところです。
単純に一本の映画として見ると凄く良い作品なんですけどね本当に!
↓詳しくは以下で〜↓
ディズニー映画のジレンマ
コルドロンの時もそうだったんですがディズニースタジオは何作かに一回必ずこういう
「'ディズニー映画‘のジレンマ」
に陥ることがある気がします。
映画ではなく【ディズニー映画】という世間の価値観は制作者にとって時に強大な呪縛になるのでしょうね。
そしてそれをどうしようもなく解きたくなる時がある。
今作はそれに真っ向勝負で挑戦した作品だったと思います。
自分の中では間違いなく三本の指に入る、良い意味での「ディズニーらしくないディズニー映画」だと思います。
ウォルト生誕100周年として生前情熱を捧げていたアトランティスを題材にしたのはわかります。
だけど作品内容としてはウォルトリスペクトよりも、【ディズニー映画】ではなく真っ向から【本格SFファンタジー映画】に挑戦した作品だという意気込みがひしひしと伝わります。
声優にSF映画のスターを起用したり劇中に登場するアトランティス語を言語学者がこの映画の為にオリジナルで制作していたり。
デザインに漫画家のマイク・ミニョーラを起用して他作品とのデザイン的差別化を計ったり。
とてつもない拘りを感じます。
【ディズニー要素】を可能な限り排除して傑作を目指したディズニー映画はこれまでもいくつかありましたが、しかしこの挑戦って実は物凄くハードルの高い事だと思うんですよね。
結果的にどうなるかというと、、
ディズニー映画として観ると【凡作以下】
SFファンタジー映画として観ると【凡作】
に収まってしまいがちんですよ。どうしても。
この手のジャンルに基本慣れていないスタジオとスタッフが作るんですから、当然といえば当然なんですよね。
だって、、美女と野獣の監督の作品ですからね…これ。
ディズニーが培ってきた技術と経験と伝統。
そして純粋な映画としての面白さ。
この2つが完璧にマッチした時「美女と野獣」のような傑作が生まれると思うんですが、今作は特に前者の要素を極力排除しようという方向性が強すぎて、結果「悪くないけど特段良くもない、ありふれたSF映画」になってしまっている気がします。
いや何度も言いますが良い映画なんですよ。
好きな方ごめんなさい。。
例えば今作は人が凄い死ぬ映画です。
作中で描かれるだけでも三桁以上の人が死んでいます。
だけど結局どう頑張ってもディズニー映画はディズニー映画なんで、その描写に慣れていないしあまりあからさま過ぎる表現も出来ない。
だから結局すごく印象が薄くなっちゃうんですよね。
こんなに死んでるのに。。
こういう描写の迫力や説得力はどうしても【ディズニーじゃない映画】には敵わないんですよね。
いやぁ。
本当に気持ちはわかるんですけどね。
まさにジレンマ…。
そしていつの日か
【まったくディズニーらしさの欠片もないディズニーの大ヒットアニメーション映画】
を観てみたいという気持ちもあります。
でもこれって本当に難しい事だと思いますね。
ストーリーのクオリティと細部の軽薄さ
大筋のストーリー展開や演出は本当によく練られていて素晴らしいと思います。
ちゃんと先が気になりながらワクワク観ることができました。
ただ、その分細部の疎かさもちょっと出ちゃってましたね。
特に気になったのがキャラクターの心情変化・心理描写の不足です。
後述するようにキャラクター自体は魅力的な物が多くて良いんですけど、この描写の部分が圧倒的に足りないので薄く見えちゃうんですよね。
マイロとキーダの関係性の変化
隊員達が終盤マイロにつくまでの心理変化
マイロがアトランティスに残る決断をするまでの心理経過
この辺が特に気になりました。
結局【ストーリーの為にキャラクターが動かされてる感】がちょっと出ちゃってるんですよね。
これが見えちゃうと観てる方って一気に冷めちゃうんですよ。どうしても。
特に隊員達は折角ひとりひとり良いキャラしてるのに、もったいなかったです。
それと作画とアニメーション。
CGや特殊効果は文句なく素晴らしいんですが、正直肝心の手描きアニメーションに本家スタジオのナンバリング作品とは思えないくらい粗い部分が所々あります。
今作は確かに独特なキャラクターデザインなので難しかったのはわかりますが、ここもちょっと残念でしたね。
魅せ方の上手さ
まとめ
ストーリーは面白かったし特殊効果やCGも見応えあり、キャラの個性も活きている。
間違いなく良い作品でした。
ただやはりしつこいですが【凡作SF映画】の域は出ていないと言わざるをえないですよね。
とても拘って作られたのはよくわかるのですが…。
「ノートルダムの鐘」同様「THE.ディズニー映画!」を期待して観るとちょっとキツイとは思います。
逆にディズニー映画はあんまり…という人の方がすんなり楽しめるかも知れませんね。
ミュージカルとかではない分、そのディティールやアクション等の正攻法でしっかりエンタメしている、一本の娯楽映画としては凄く良く出来た作品です。
本当に。
間違いなく意欲作です。
ただやはり…
【ダイナソー→ラマになった王様→今作】
と順番に見ていると、、
「ディズニー…迷走してるなぁ、、」という感覚は、、芽生えざるを得ませんかね。。
一本一本はどれも全然悪くないんですけどね。。
定まってない感じ、答えを見つけれてない感じはビンビン伝わりますね…
ちょっと取っつきにくいかもですが…とっても面白い娯楽作品なので、未見の方はぜひとも一度は観てほしいですね。
特にSF好きの方にはオススメです!