はぁあいどぅうも。
さて、ディズニーアニメーション映画史、時代は輝かしい黄金期・ディズニールネサンスと言われた1990年代を終えて、いよいよ【ディズニー第3の暗黒期】と言われている2000年代に突入中です。
実はこの暗黒期、収益的にはそれなりかそれ以上の高成績を残している優秀な作品が多いんです。
では何故暗黒期と言われるかというと…時代の変化や競合アニメーションの台頭、ルネサンス90年代との比較など、、様々な要因もありながら一番の理由はその【方向性が定まっていない作品郡】にあるのかなと思います。
他スタジオによる3DCGアニメの台頭や社内の変革、ルネサンスの終焉等の激動の中で、、「これでいく!」という道筋が立っていない時期なんですよね。
歴史あるファンタジアの続編から始まったと思ったら一作毎にCGになってみたりセルに戻ってみたりミュージカルしてみたり全くなくしてみたり激コメディしたと思ったら激シリアスしてみたり。。
まぁ言い方を変えれば実験期・摸索期ですよね。実に様々な事にトライし、可能性や方向性を模索していた時期だと思います。
2000年代後半からその方向性は徐々に定まってくるんですが、だから今観るとこの2000年代前半は本当にバラエティ豊かで非常に楽しい時期なんです。
一作毎のクオリティも高いですし。
個人的には暗黒期とはやっぱり思わないですね。
さて。
今回はある意味そんな時代を象徴するような、実験的・挑戦的姿勢に満ちたこの作品の登場です。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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ダイナソー
(原題:Dinosaur)
2000年
監督
エリック・レイトン
ラルフ・ゾンダグ
データ
ウォルトディズニーアニメーションスタジオ39作目の長編アニメーション。
ディズニー初の全編CGキャラクターによる、実写+CGという同スタジオにとって新たな機軸の作品。
元々は実写部門がストップモーション作品として開始した企画であり、実に10年以上の歳月をかけて試行錯誤を繰り返しながら制作された作品です。
原作のないディズニーのオリジナルストーリーであり、白亜紀を舞台に恐竜達の生き残りをかけたサバイバルが描かれたジュラシックアドベンチャー。
恐竜達キャラクターをCGで、自然を舞台とした背景を実写映像で表現しそれを融合するという手法が採用されています。
WDASの作品ではありますが基本的にはスタジオのクリエイター達とは別班によって製作されており、今作の為にディズニーが新たに設立した【ドリーム・ラボ】部門がその中心を担いました。
監督は「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」のアニメーション監修等を務めたエリック・レイトンと「ポカホンタス」の原案やスピルバーグ「恐竜大行進」の監督としても知られるラルフ・ゾンダグ。
クレジットはされていませんが「オリバー ニューヨーク子猫ものがたり」のジョージ・スクリブナーも制作途中まで深く携わりました。
脚本はジョン・ハリソン、ロバート・ネルソン・ジェイコブス、ワロン・グリーンという実写畑の面々。
音楽は後に「アトランティス」「トレジャー・プラネット」「ラーヤと龍の王国」等多数のディズニー作品を手掛けることになるジェームズ・ニュートン・ハワード。
主人公であるイグアノドン・アラダーを演じたのは様々な映画やドラマで活躍し、ディズニー作品では「ブラザー・ベア」等でも知られる俳優のD・B・スウィーニー。
日本語版は俳優の袴田吉彦さん。
ヒロインのニーラ役にはジュリアナ・マルグリーズ。人気テレビシリーズ「グッド・ワイフ」で主演を務めた事でも有名です。
日本語版は江角マキコさん。
ニーラの兄で今作のヴィラン的立ち位置となるクローン役を「リトル・マーメイド」シリーズのセバスチャン役で世界的に有名なサミュエル・E・ライトが演じました。
日本語版は中田譲治さん。
童話や小説・偉人伝等をベースとしたファンタジーミュージカルが多かったディズニーにおいて、これまでの作品とは全く趣が異なり、尚且つ初のCG主体作品という事で客足や反応を不安視する声も目立ちましたが、興行収入としては実はルネサンス黄金期のムーランやヘラクレス、ノートルダムの鐘等を凌ぐ高成績を収めている作品です。
評価面ではそのCG+実写による映像表現の素晴らしが絶大な好評を博し、特にCG表現力は【トイ・ストーリーを上回っている】とまで言われています。
しかし、そのリアリティに長けたアニメーションとは反対に人語を自在に話す恐竜達のアンバランス感やキャラクター性やストーリーの薄さには批判も多くあがり、結果的には賛否両論の総評となりました。
本国等ではパークにアトラクションが作られるほど認知度と人気のある作品ですが、日本では特にディズニー映画の中でも1.2を争う程認知度が低く、知る人ぞ知る作品という立ち位置に甘んじています。
しかしその功績と作品完成度を評価する声は未だ多く、ファン達からは常に一定以上の人気と支持を集め続けている一本ともなっています。
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あらすじ
時は白亜紀末期。
イグアノドンのアラダーはひょんなことからキツネザルの一家に育てられて青年期へ成長。
種族の違いも問題にせず家族として楽しく平和に暮らしていた。
しかしある時、突如起こった巨大隕石の衝突。
地球全域に甚大な被害が及ぶ中、アラダーの仲間のキツネザル達も数匹を残し全滅してしまう。
失意の中彷徨うアラダーとキツネザルの一行は大移動中の草食恐竜の群れと出会う。
生き残りをかけて「命の大地」という楽園を目指しているという彼らに同行することにしたアラダー達は、自分勝手で冷酷な群れのリーダー・クローンと対立したり、その妹ニーラや他の恐竜達との交流を深めながら険しいサバイバルを続けていく。
そんな中凶暴な肉食恐竜カルノタウルスが獲物を狙い、少しずつ群れに迫っていた…
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感想
いやぁ全然悪くないですねー。
CGのキャラクターと実写の広大な風景による映像は美しいですし、この近年のディズニー映画の中ではダントツに写実的なキャラクターデザインや、ファミリーエンタメらしく子供にもわかりやすく簡素化されたストーリープロット、脇役をはじめどこかユーモラスなキャラクター達、要所に入るわりと重めの演出。。
粒揃いに良い点は本当に沢山あります。
ただ…何ていうか、、
それぞれのパーツはとっても拘って非常に良く作られているんですけど、それが一つになった時にちょっとアンバランス感が目立って、結局印象に残り辛い作品になっちゃってる感じなんですよね。
色んな美味しい食材入れたけど、結局何味かわかんないし、なんならあんま味がしない、、みたいな。
まさしく試験作といった仕上がり。
本当に全っ然悪くないんですけどね!
悪くない!としか言えない感じなんですよね。。
ただ本当に試行錯誤しながら情熱かけて作られた映画だということは、観れば伝わるんですけどね。
映像美と写実的なキャラクターデザインへの挑戦
この映画の最大の特徴である、フルCGによるキャラクターと実写映像による背景との融合はとても良かったと思います。
現在ではCG技術も進みこんなめんどくさい事しなくても全部CGで美しくやれるので、今となってはこの形式はやる必要がなくなってしまった手法だとは思いますがこの時代の、CG技術では他社やピクサーに大きく劣るディズニーがとった手段としては素晴らしい工夫だと思いますし、ピクサー作品にも引けをとらない画力を持った作品になってると思います。
そしてもう1つの挑戦だった写実性の高いキャラクターデザインですが、これ自体はとても力が入っていて恐竜のモーションや質感等もとても研究されていて素晴らしいなと思う一方で、どうしても気になるのはファミリーエンタメ映画としての作りとのアンバランス感。
この作品の作りはライオン・キングとかと同じでキャラクター化した生き物が人語を話して人間のように振る舞ったり会話したりする半擬人化。
しかもバンビみたいに台詞数を極端に減らすとかの工夫もなく、普通のキャラクター映画と同等に喋りまくるし冗談やギャグを言ったりもします。
まぁだからディズニー十八番の設定なわけですけど、、
これがやはり写実的な恐竜のデザイン
や世界観とマッチしていないのは否めないんですよね。
リアルさを求めたデザインと、キャラクター映画としてのデフォルメした設定っていう相反する物を一緒にしちゃってるので、なんかやっぱずーっと軽い違和感が付き纏う感じがありました。
両方が良い仕事してるからこそ余計になんですよね。
言葉を話さない肉食恐竜のカルノタウルスやオープニングシーン等がなんか見てて一番しっくり来ました。
もったいない部分ですねこれは。
盛り込みすぎて薄まってしまったストーリー
ストーリープロットに関しても実は結構前述と同じような事が言えていて、例えばこの作品、流血描写とか仲間が普通に死んだりそれを喰われたり、、子供が観るには結構キツめの重たい描写がいっぱいあって、パッとみ自然の怖さとか生命の連鎖とかなんかそういう物を描いた、あたかもドキュメンタリー的な大人向けの重厚な物語に見えるんですよね。
でも蓋を開けてみると大筋の骨組みは「仲間と助け合うことは大切!」みたいな非常に単純なテーマの、ディズニージュニアでやってそうな子供向けプロットだったりするんですよ。
脇役キャラのノリも「恋人ができたね!ヒューヒュー!」みたいな時代錯誤満載で非常に軽い感じだったりで…
なんていうか、、どう観たらいいの?て感覚。
仲間が死んでしまう重たいシーンがあったと思ったら次にすごーく軽い描写が続いたりするんで、結局どうなるかというと両方印象に残らなくなっちゃうんですよ。
良いシーン結構あるのになんか、相殺しちゃってるんですよね。
最終的に何がしたかった映画なのかがよくわかんないで終わるという…
キツネザルの存在とか設定もとても面白い素材なのに活かしきれてなかったですよね。
仲間のおばさん恐竜達も同様。
もっと上手く活かしたら、凄く面白いキャラメンツだと思うんですけど…
これも本当に重ね重ねもったいないな〜と思いましたね。
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まとめ
本当に冒頭に綴った通り、方向性が定まっていない中で様々な事にチャレンジしていたこの2000年代のディズニーを体現するかのような作品でしたね。
長い年月をかけて練り上げた一大プロジェクトだったわけで、作品からもその片鱗や貫禄は充分ですし、何よりその映像表現は今見ても素晴らしいです。
劇伴のプロフェッショナルジェームズ・ニュートン・ハワードが手掛けた音楽とかも重厚でとても凄く良かったんですけどね。
なんていうか…
【各パートの演奏は凄く良いのにミックスに失敗した音楽】
みたいな感じなんですよね。
本当に有り体に言うとやはりもったいない!の一言につきます。
良い出来なんですよ。
名作になれる輝きは随所にあるんです。
重厚なドキュメンタリー風なのか恐竜モノの皮を被ったキッズ向けファミリームービーなのか…方向性をどちらかに明確に定めていれば…。
と思わざるを得ません。
なんか本当にこの時代のディズニースタジオを体現してる一本な気がしますね。
ただ、本当に悪くないんです。
あとやっぱりこの一本の経験が、のちのディズニー第3黄金期に確実に活きてるなというのも観ていてひしひし感じましたね。
結構見た目の地味さとか取っ付きにくさから敬遠してる人が多いようですが、実は(良くも悪くも)非常にスーッと見易い作品だったりします。
そして、ディズニーアニメーションスタジオにとって実は歴史的にとても大事な一本だと今になって本当に思います。
アメリカではアトラクションもあったりして結構メジャーな作品なんですけどね…日本では如何せん知名度が激的に低いんです。
結構ディズニーアニメーションファンでも「これだけ観たことない」みたいな声をチラホラ聞いたりするので、そういう未見の方は食わず嫌いせずに是非一度はチェックして頂きたい一本ですね!
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