はぁいどぉぅもぉ。
さて、今回はディズニーアニメーション映画史。時代はついに1990年代、ディズニーアニメーションスタジオの第二黄金期【ディズニー・ルネサンス】と言われている時代の真っ只中。
暗黒期と呼ばれた1980年代の低迷から、起死回生の一本「リトル・マーメイド」と共についにその財政と世間の評価・信頼を大きく回復させたディズニー。
さらに「美女と野獣」「アラジン」「ライオン・キング」では正にルネサンスの絶頂期とも言える歴史的なメガヒットの連打を実現します。
しかし、正に飛ぶ鳥を落とす勢いだったディズニースタジオですが95年の「ポカホンタス」から徐々に興行収入は下降線へ。
難しい題材と大人向けの内容が増加し、多方面で様々な物議を醸す事も多くなりました。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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ヘラクレス
(原題:Hercules)
1997年
監督
ジョン・マスカー
ロン・クレメンツ
データ
ウォルトディズニーアニメーションスタジオ35作目の長編アニメーション。
原作は伝承文化であるギリシャ神話。
しかし人名や一部の設定以外は非常に大きな改編が施されており、特にストーリーに関してはほぼディズニーによるオリジナルと言える内容になっています。
古代ギリシャを舞台に、人間として育った神の子ヘラクレスがヒーローを目指して悪と闘うアクションコメディミュージカル。
監督は前述通り「リトル・マーメイド」や「アラジン」でルネサンスの起爆剤を作ったジョン・マスカーとロン・クレメンツの黄金コンビ。
脚本は監督の二人が兼務で執筆している他「ライオン・キング」「ノートルダムの鐘」のアイリーン・メッキ等も参加しています。
音楽と楽曲は「リトル・マーメイド」「美女と野獣」「アラジン」「ポカホンタス」の四作連続でのアカデミー賞受賞という快挙を成し遂げ、ディズニーを代表するミュージックメイカーとなったアラン・メンケン。
作詞は後に「ムーラン」でも活躍するデイヴィッド・ジッペル。
主人公のヘラクレス役を務めたのはテイト・ドノヴァン。人気ドラマ「24-TWENTY FOUR-」等にも出演する実力派俳優で、テレビ作品やゲーム等以降の同キャラクターボイスを長きに渡り務めています。日本語版はTOKIOの松岡昌宏さん。
若き日のヘラクレスはジョシュ・キートンが演じました。日本語版は秋山純さん。
ヒロインのメガラ役にミュージカル版美女と野獣のベル役やわんわん物語Ⅱのエンジェル役でも知られるスーザン・イーガン。日本語版は工藤静香さん。
ヴィランであるハデスを演じたのは様々な映画やドラマで活躍する俳優のジェームズ・ウッズ。今作での彼の演技は多方面から絶賛されました。
日本語版は嶋田久作さん。
ヘラクレスのトレーナー・フィル役には実写版「ダンボ」や「ホーンテッドマンション(2023)」等でも知られるダニー・デヴィート。
日本語版は永井一郎さん。
これまで続いた大人向けのシリアス路線を大きく軌道修正した今作でしたが、興行収入面での連続低下を止めることは出来ず、前作ノートルダムの鐘よりもさらに数字を落としてしまいます。
評価面では賛否両論大きく分かれる結果に。ハデス役のジェームズ・ウッズの演技やキャラクター、ファミリーエンターテイメントとしての完成度の高さは高く評価されたものの、漫画家のジェラルド・スカーフをモチーフとしたその独特な作画デザインやエンタメ重視のストーリー、ギリシャ神話の大胆な改変には多くの批判もあがりました。
しかしそのキャラクターや世界観は劇場公開後も根強い人気を持続しており、テレビシリーズ等の続編も展開。
他のルネサンス期作品と比べると若干知名度は下がるものの、ディズニーの代表作の一つとしてしっかりと存在感を示しています。
さらに日本でも人気ゲーム「キングダムハーツ」への登場等をきっかけにその認知度を格段に高め、ハデスのキャラクター人気等も相まって、ファンの非常に多いディズニー作品として広く知られる一本となりました。
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あらすじ
古代ギリシャ。
オリンポスの神ゼウスの息子として生まれたヘラクレスは、オリンポスの支配を企む死者の国の神ハデスの策略により人間になる薬を飲まされ、果てには人間界に置き去りにされてしまう。
通りすがりの夫婦に保護され育てられたヘラクレスは順調に成長。
しかし、突出した自身の身体能力が原因で他の人々に馴染めないことに悩む。
そんな様子を見かねた両親から、ヘラクレスは実は自分が本当の息子ではないこと、拾われた時に首にゼウスの紋章のメダルをかけていたことを知らされる。
本当の自分を求めゼウスの神殿に向かい、実の父であるゼウスから、自分が本当は神であり、あるべき姿に戻るには人間界で本当のヒーローになるしかない事を告げられたヘラクレス。
ヒーロートレーナーのフィルと共にヒーローになる為のトレーニングを開始するが、そんな矢先、美しい女性メガラと出会う。
彼女に夢中になるヘラクレスであったが、メガラには実は大きな秘密があった…
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感想
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240602/16/yuzupill/5c/60/j/o1080060715446513977.jpg?caw=800)
個人的には美女と野獣以来久々の痛快アニメーションでしたね。
この近辺の作品で、物語の奥深さや映画としての重厚さを意識するあまり少々置き去りになっていたディズニーの【誰でも楽しめるエンターテイメント】が見事に戻ってきました。
間違いなく新たな基軸に進化したディズニー流ファミリーエンターテイメントです。
ストーリーは決して小難しくなく単純明快。
デザインは独特だけどアニメーションはTHE・カートゥーンな親しみ易い仕上がり。
ミュージカルも重厚さよりポピュラリティに重点を置いたラフで楽しいラインナップ。
ダーティなシーンもありながら全体がカートゥーン式の「どこかテキトー」な世界観で包まれてるので前作までの重苦しさは全く無く、子供も大人も最後まで楽しめる極上のアニメーション映画となっています。
それと、これまでの作品とは違い女の子向けのロマンスだけではなくヒーローとかバトルとか男子が好きな要素も盛り込まれてるのがこれまでなかった新ポイントですね。
キャラクターデザインのユニークさやこれまでのノートルダムの鐘やポカホンタス等の重厚な作品との落差から、嫌遠されることも結構多い今作なのですが、、
個人的には正にこれを待ってた!
と、とても嬉しい気持ちになった一本でしたね。
ミュージカルディズニーの復活
まずは音楽とミュージカル。
これも世間的にはイマイチ…という論評が多いようなんですが、いやぁ個人的には久々にアラン・メンケン大爆発なんですよね。
作品テーマと全く関係ないジャンルの音楽をぶっ込んでくる時のアランは個人的に大体最高なんですが、今回はまさかの【ギリシャ神話=ゴスペル】です。
やられました。
しかもなんとストーリーテラーがまさかのゴスペルガールズ「ミューズ」達。
彼女達によるミュージカルでストーリーが進行するというなんとも大胆な作り。
これは好き嫌い別れそうですが自分は最高でした。しかもそのミュージカルシーンがちゃーんと作り込まれてるんですよね。
それとやはり忘れてはならないのが名曲「ゴー・ザ・ディスタンス」のシーン。
このシーンはなんとなくハワード・アッシュマン(リトル・マーメイドや美女と野獣を成功に導き40歳という若さで亡くなった作詞家)を彷彿とさせます。
曲の中でストーリーが大きく動くという、ミュージカルとストーリーが融合した逸品な作りです。
あと普通にめっちゃ良い曲ですよねやっぱり。
あとフィルが歌うコメディミュージカル「最後の夢」もなんかは、そのシーンも相まってまさにひと昔前のディズニーに回帰した感じが非常に強くして、大好きですね。
ゴスペルだけに頼り切らないでちゃんと名曲からコメディまでバランス良く散らしてくるのも流石アラン・メンケンです。
実に様々なジャンルを盛り込んだ今作の音楽ですが、通して言えるのは…直球勝負だと言うこと。
小手先で重厚な映画音楽を意識したようなものではなく、あくまでアニメーションの、カートゥーンミュージカルとして直球勝負してるのが最高に好きですね。
新しい事沢山やってるんだけど、同時に間違いなく原点回帰なんですよね。
コメディ・シリアスの黄金比
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240602/16/yuzupill/45/ce/j/o1080060715446513981.jpg?caw=800)
あくまでディズニー映画に限った話ですが、コメディとシリアスのバランスは全作品の中でも今作が絶対的な黄金比だと思いますね。
カートゥーンコメディとして名を馳せたディズニーならではの良さを十二分に発揮した王道のギャグの数々、単純化しすぎず、適度なダーク描写も入れ込みながらちゃんと大人も気になって観れるレベルに仕上げたストーリー。
美女と野獣以前のディズニーの良さを残しながら、以降の作品で手に入れた表現力もちゃんと活かしている。
このバランスが素晴らしいです。
これは後述しますがハデスのキャラが最高にハマったのも大きな要因ですよね。
それとストーリー関連で言うと、視聴者の目線と作品側の視点がちゃんと一致しているのもうまいなぁと思いましたね。
観てる人が観たいものを素直に見せてるというか。親切というか。
例えばヘラクレスが自分はもう立派なヒーローになったと思いゼウスに会いにいくシーンがありますが、そこでヘラクレスは父ゼウスに「まだちょっと足りん」と言われます。
これ、ちゃんと観てる人もそう思えるように出来てるんですよね。
確かにこの時のヘラクレスは観客からしてもまだ「ちょっと足りない感じ」なんです。
あとハデスがヘラクレスの弱点を探すシーンで観てる人が「いやメガラだろ」ってちょうど思い始めたタイミングでハデスもそれに気付く…とか。
わりと痒い所に手が届いてるんです。
注目して観なきゃわからないけど、育ての両親がちょこちょこちゃんと出てきていたり。
擦れたり尖ったり、余計なものの無い素直な構成なんですよね。
久々に現れた愛らしいヴィラン
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240602/16/yuzupill/f5/41/j/o1080060715446513982.jpg?caw=800)
そしてやはりこの話題は外せませんよね。
唯一無二の個性派ヴィランハデスの抜群の存在感です。
このハデスは、現在では最早主役のヘラクレスを凌ぐ知名度を誇る押しも押されぬ人気ヴィランとなっています。
作中でも間違いなく全てを喰ってますよね。
この近辺のヴィランは本当に卑劣で悪列で憎々しいキャラクターが多かったのですが、今回のハデスは世間的に言うとピーター・パンのフック船長以来とと言える愛嬌いっぱいのコミカルヴィランとなりました。
悪いところはしっかり悪いんですけどね。ヴィランとしての迫力や狂気もあるし。
でもやっぱりコメディセンスがそれ以上に抜群なんです。
あと悪巧みもいちいちなんかちょーっとずつ間が抜けていて、どこか憎めない。
他のキャラクター達もしっかり個性があって魅力的なんですけど、ちょっとハデスは頭一個抜けてます。
ジェームズ・ウッズは勿論ですが、日本語声優の嶋田久作さんの演技も最高にハマってましたね。
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まとめ
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240602/16/yuzupill/31/ba/j/o1080060715446523356.jpg?caw=800)
間違いなく、ルネサンス期を代表する傑作カートゥーンの一つだと思います。
黄金期の絶頂とそれ故に迷い込んだ迷路を抜け出して一回り大きくなった、最高峰のディズニー流ミュージカルコメディです。
本当にこの作品は…もっと評価されて良い作品だと思うんですよね。
名作を生み出してきたジョン・マスカー&ロン・クレメンツ作品の中でも三本の指に入るくらい好きですね。
ギリシャ神話が題材ですが小難しさは全然ないし、子供も大人も頭空っぽで楽しめる最高のバランスです。
ギャグも面白いですしキャラクターはハデスを筆頭に皆魅力的ですしね。
紹介しきれませんでしたがメガラやフィル、そしてゼウスなんかもしっかり作り込まれた素敵なキャラクター達ばかりです。
それと、決して題材に忠実な作品ではないんですが、ギリシャ神話を元にしたギャグや小ネタなんかもよく見たら結構あって、詳しい人はより面白いと思いますね。アキレスとかね。
ただ、好き嫌いは確かに別れるかなぁとは思います。ディズニー作品の中でもノートルダムの鐘とかズートピアが好きな方には…もしかしたら合わないかもしれません。
良くも悪くも単純明快な痛快アニメーションですからね。
そして最後にもう1トピック。
前述した通りこの作品は興行収入こそイマイチでしたが公開からだいぶ経ってからある事がきっかけで再評価された作品の1つでもあります。
そう、皆さんよくご存知の(?)、あの最も有名なディズニーゲーム「キングダムハーツ」シリーズですね。
このゲームでヘラクレスは、ミッキー達レギュラーを除けばブッチギリの最多出演。
ナンバリング作品には全てにガッツリ登場していて、作品の知名度に反してそりゃもう驚くほどの優遇ぶり。
キングダムハーツでヘラクレスを知ったって人は実はかなり多くて、そこから作品のファンになった人も結構いるそうです。
実はトロンとかもそうなんですが、こういう事がきっかけで、これまであまりスポットが当たらなかった作品に注目が集まるのはホントに良い事だなぁと思います。
実際ディズニーは「不遇の名作」が結構多いですからね。
まぁ何はともあれ。
ホントに個人的にはこのルネサンス期で「美女と野獣」に次ぐ超オススメ作品です。
一言で言うと、本当にアニメ映画らしいアニメ映画だと思います。
未見の方はパッとみのクセの強さに臆せず…ぜひ一度観てチェックしてみて欲しいですね。
いつも長文駄文にお付き合い頂き本当にありがとうございます。感謝です!
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