はぃどぅもぉ。
さて、今回はディズニーアニメーション映画史。時代はついに1990年代、ディズニーアニメーションスタジオの第二黄金期【ディズニー・ルネサンス】と言われている時代の真っ只中。
暗黒期と呼ばれた1980年代の低迷から、起死回生の一本「リトル・マーメイド」と共についにその財政と世間の評価・信頼を大きく回復させる事に成功したディズニー。
さらに前作の「美女と野獣」では、そんなリトル・マーメイドを遥かに凌ぐ収益と共に【アニメーション映画史上初のアカデミー作品賞ノミネート】という偉業も成し遂げ、続く「アラジン」ではさらにその上を行く興行収入を記録。
メガヒットを連発したディズニースタジオは、次作の大本命として実在のネイティブアメリカン・ポウハタン族の女性を題材にした「ポカホンタス」の制作を開始。
それと並行して、当時主力ではなかったアニメーターや、動物好きなスタッフ達による「動物モノのサブプロジェクト」も進行させました。
大ヒットは狙わず安定感のある動物モノを2軍スタッフ(自身達がこう言っているのであえてこう表現します)で一本、、
と考えたわけです。
そしてその2軍によるサブプロジェクトが…アニメーション映画界の歴史に残るこの名作に大化けする事になります…。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240506/18/yuzupill/5b/da/j/o0726108015435296821.jpg?caw=800)
ライオン・キング
(原題:The Lion King)
1994年
監督
ロジャー・アラーズ
ロブ・ミンコフ
データ
ウォルトディズニーアニメーションスタジオ32作目の長編アニメーション。
原作の無いオリジナルストーリーではありますがイギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピアの舞台劇「ハムレット」や1942年のディズニーアニメーション「バンビ」などから多大なインスピレーションを受けた物語となっています。
この作品は1980年代後半に企画が立ち上がってから何度も脚本のリライトや担当者の目まぐるしい交代が行われながら、美女と野獣やアラジン、ポカホンタスという本命作品の裏側でゆっくりと制作が進められました。
意外かもしれませんが、今作はディズニーの長編アニメーションの中で、動物の擬人化であるロビン・フッドを除くと人間が一切登場しない純粋な動物のみの史上初の作品となります。
そして明確な原作の無いディズニーによる初の完全オリジナル作品でもあります。
(わんわん物語もオリジナルとされていますが細かく言うとこちらは一応原作が存在しますので)
監督はロジャー・アラーズとロブ・ミンコフ。
クリエイターとして様々なディズニー作品で活躍していた2人ではありますが、長編アニメーション監督を務めたのは今作が初めてでした。
脚本は「美女と野獣」で長編アニメーション映画の脚本を初めて執筆した女性となったリンダ・ウールバートン。更に後に「ノートルダムの鐘」等も手掛けることになるアイリーン・メッチとジョナサン・ロバーツがディズニーアニメーションに初参加となりました。
ストーリーアーティストとして「リロ・アンド・スティッチ」のクリス・サンダースや70年以上のディズニーキャリアを誇り2023年に亡くなったレジェンドバーニー・マティンソン、「モンスターズ・インク」「カーズ」のピクサーの仕事で知られるジョー・ランフト、「美女と野獣」の監督ゲーリー・トゥルースデイル等の錚々たる顔ぶれがそれぞれ部分的に携わっています。
音楽はディズニーアニメーション作品初参加となったハンス・ジマー。アフリカに縁のある作品を手掛けた実績からの抜擢となりました。
そして彼の紹介でアフリカのシンガーソングライターレボMが楽曲制作に協力。
世界的に有名となった映画最冒頭「Circle of Life」最初の歌声は彼による物です。
オリジナル楽曲は超著名ミュージシャンのエルトン・ジョンが担当。
さらに「アラジン」でハワード・アッシュマンの跡をつぎ名曲を産み出したティム・ライス。
主人公のシンバ役を演じたのは映画やブロードウェイで数々のヒット作に出演し多数の賞も獲得している実力派俳優マシュー・ブロデリック。
歌はロックバンドTotoのジョセフ・ウィリアムズ。日本語版は宮本充さん。
シンバの幼馴染の雌ライオンナラ役には当時駆け出しの女優であったモイラ・ケリー。余談ですがシンバ役のマシューは今作の収録をほぼ一人で行った為、ナラ役がモイラだということをプレミアで初めて知ったそうです。
歌はサリー・ドワースキー。
日本語版は華村りこさん。
シンバの父ムファサをスター・ウォーズのダース・ベイダーで有名な伝説の名優ジェームズ・アール・ジョーンズ演じます。日本語版は大和田伸也さん。
ヴィランのスカー役を様々な映画の名悪役としても有名なジェレミー・アイアンズ。日本語版は壤晴彦さん。
他にもプーさんの専属声優ジム・カミングスや「ミスター・ビーン」で有名なローワン・アトキンソン、「天使にラブ・ソングを」のウーピー・ゴールドバーグなど、、脇を固めるキャスト陣も非常に豪華です。
前述の通り所謂2軍のクリエイター達によって進められた本命ではないサブプロジェクトでありながら、興行収入ではなんと「美女と野獣」「アラジン」を遥かに上回る歴史的な特大メガヒットを記録。
これまでのアニメーションの歴史を覆す記録をいくつも打ち立て、「Can You Feel the Love Tonight」で楽曲賞、そしてハンス・ジマーがスコア賞というアカデミー2部門受賞。
さらには圧倒的なアニメーション史上最高興行収入(当時)も達成。
なんと、2Dアニメーションの史上最高興行収入作品という記録は2024年現在に至るまで破られていません。
数々のグッズ展開やOVAでの続編展開、TVアニメ化、ゲーム化、パーク進出などなど、、まさに破竹の大ブレイクを成し遂げ、ブロードウェイミュージカル化も実現しました。
評価面においても一般評価・批判家レビュー共に圧倒的な高評価となり、演出やアニメーション、音楽…などが世界的な大絶賛を獲得します。
中でも子供だけではなく大人の心にも刺さるそのドラマチックな展開と演出が大きく評価されました。
この作品をもって「ディズニー第2黄金期」及び「ディズニー・ルネサンス」はまさに揺るぎないピークを迎えたと言っても良い、ディズニー映画史・アニメーション映画史においても非常に重要なマスターピース。
現在でもその圧倒的な人気と認知度は衰えることはなく、2019年の実写(CGI)版もこれまた記録に残る大ヒット。2024年にはスピンオフ続編も公開が決定しています。
公開から30年を迎えても尚ディズニー史上押しも押されぬ大ヒットムービーとして世界中の人々から愛され続けている作品です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あらすじ
アフリカの遥かなる大地・プライドランド。
この動物達の王国を治める王ムファサの一人息子・シンバはまだまだ好奇心旺盛な幼い子ライオン。
王としての務めや生命の輪について父親であるムファサから教えられてもイマイチピンと来ず、友人のナラとヤンチャをしては親に叱られる、どこにでもいる普通の子供だった。
しかしムファサの弟スカーの策略が引き起こした事件によって、シンバとムファサ、そしてプライドランドの運命は大きな岐路に立たされる事になる…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
感想
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240507/07/yuzupill/98/c5/j/o1080060715435526019.jpg?caw=800)
現在に至っても話題や注目が尽きることのないディズニーが誇る正真正銘の歴史に残るビッグタイトル。
個人的にそんな今作の一番の功績はやはり「ディズニーアニマルムービーの大復活」の一言に尽きると思います。
名作は数あれど、思えば「白雪姫」「シンデレラ」「リトル・マーメイド」「美女と野獣」等…ディズニーを代表する転機となるような大ヒット作はいつも人間が主体のプリンセスムービー。
このルネサンス期は、ちょうどそんな呪縛に囚われ始めていた時期でもありました。
いつしかディズニー=プリンセスムービーという印象が強くなっていく中で「ディズニーはプリンセスだけじゃないんだぞ!」というのをここにきて名実ともに立証してくれた作品がこの「ライオン・キング」です。
前にもチラッと書きましたが個人的にはこっち(アニマルカートゥーン)がディズニーの本質だと勝手に思っていますし、本当の得意ジャンルだと思っています。
しかし、この近辺はなんというか「大コケしないけど大当たりもしない無難な線…」として動物映画は扱われていて結構不憫な状況でした。
そろそろ渾身の一本がないと、ディズニーは本当にプリンセス一辺倒になるんじゃないかと…そんな矢先のまさに会心の一撃。
古くはバンビ、正解にはそのもっと前からディズニーが長い年月拘り続けたアニマルアニメーションへの挑戦がここに来て最大の実を結ぶ事になったのです。
このタイミングでアニマルアドベンチャーがこれまでのどのプリンセスムービーをも上回る最大級の結果を出した事実は、今後のディズニーの流れを左右する間違いなく非常に大きな出来事だったと今でも思いますね。
非現実の中のリアル
見ていただけるとわかりますが、今作の作画やアニメーションにはバンビやジャングル・ブックで培った動物描写のノウハウが最大限に活かされています。
何が凄いってこれを作ったのがそれらの過去作品を手掛けた面々ではなく、それに憧れた若きクリエイター達だということ。
実際には絶対ありえないファンタジーの世界において、その描写や表現を徹底的にリアルに描くことである種の説得力を生み出す事こそがディズニーの真骨頂。
それが最も上手くいっている成功例がこのライオン・キングだと思っています。
というのも、今作はそれが表現や描写の面だけではなくストーリープロットや脚本構成の上でも見事に実践できているからです。
バンビ以降のアニマルムービーは、描写だけはリアルであってもストーリーや脚本に関してはどちらかというとコミカライズされた良くも悪くもカートゥーンな、軽めの作品が多い傾向にありました。
今作はそこがまずこれまでとは大きく違います。
これまでのコメディタッチなカートゥーンではなく「食物連鎖による生命の輪」「自然界の厳しさと美しさ」「父と子」等、バンビでも描こうとしていた重厚なテーマに改めて正面から取り組んでいるのに加え、人間も普段リアルに直面している問題「権力争い」「集団の統率」「生き方の選択」等を上手に落とし込んだ内容になっているんですよね。
動物が喋り歌い踊り、人間のような感情を持つファンタジーしかもディズニー流のミュージカル映画の中に、人間が、大人が、そしてそれを越えて【生命】が共鳴できるリアルを詰め込んでいる。
さらにそこまでドラマ性を追求しているにも関わらず、それでも尚上質な音楽やギャグを上手く配置することでファミリーアニメーション映画として奇跡的なバランスで成立している。
これがこの作品の凄さ、そして世界的なヒットを生み出した一つの要因だと思います。
生き方の物語
個人的に、ここがこの作品で最も好きなところであり、奥深い部分だと思うんですが…
この作品は、全く違う生き方に対する2つの考え方の対比を、誰にでもわかるようにとても上手に描いているんです。
具体的に言うと最終的にシンバが選んだ【運命に立ち向かい生きるべき世界で役目を果たすこと】
と
ティモンとプンバァが説いた【過去を忘れ気楽に悩まず生きること】の2つの生き方です。
この異なる2つの考え方をしっかりと提示してどちらも否定することなく破綻させずにしっかり主人公に選択させ決着をつけていること。
これがもう見事と言うしかありません。
ティモンとプンバァという2人の生き方。
この描写が無かったらこんなに深みのある作品には絶対なっていなかったと思います。
最終的に立ち向かう事を選択するシンバですが、失意の彼を救ったのは間違いなくハクナ・マタタでした。(余談ですがトゥーンスタジオ制作のライオン・キング3ではまさにこの部分に焦点が当てられています)
これ、大抵の映画とかだと自暴自棄になった主人公が悪い仲間と自暴自棄な時間を過ごして…みたいな感じで間違いなく腐する所なんですよ。後に真っ当な道に戻らせるために。
しかしこの作品は、このハクナ・マタタを全く腐してないんですよね。否定もしていない。
そのうえで主人公本人に道を選ばせている。
だから、ムファサやラフィキの導きがあったとしても最後の選択はシンバが選んだんだと、見ている方は納得できるんですよね。
この辺の観てるものを納得させる力がやっぱりこの作品は凄いです。
自分にとってライオン・キングは間違いなく生き方の物語なんですよね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まとめ
ちょっと今回は小難しい話になっちゃいましたが、単純に考えてもアニメーションの繊細さや美しさ、ヴィランであるスカーの圧倒的な負の存在感。
そしてユーモアとシリアスの両極を盛り込み、エルトン・ジョンのポップセンスとレボMらによるアフリカミュージックの見事な融合が素晴らしい音楽とミュージカル等、そのクオリティはどこを切り取っても隙がなくディズニー最高峰だと断言できます。
ただ、マイナス面も多々ありますし決して完璧な映画だとは思いません。
個人的にはキャラクター力と音楽面で言うとリトル・マーメイドやアラジンには及んでいないし、成長物語なので仕方ありませんが、主人公のシンバのウジウジにうんざりした人も多いでしょう。
そしてあくまで個人的にはですが、美女と野獣のヒットを意識して全体的に少し大人向けに振り過ぎたかなとも思っています。
それでも…
描写とストーリーに徹底的にリアルを詰め込むことで観てるものを納得させ、さらにそこにディズニーのエンターテイメントとしての魅力もしっかりと混ぜ合わせ、全てが高次元でまとめあげられた、今もなお最強のディズニーアニマルムービーとして輝き続けるこの一本は、やはり相当に特別で偉大な一本です。
このライオン・キングがあったからこそ「ターザン」「ブラザー・ベア」「リロ・アンド・スティッチ」「ズートピア」等、数多あるディズニーの非プリンセスムービーの傑作たちが生まれることができた。
それは間違いないと思っています。
制作スタッフ曰く「皆がポカホンタスチームに行きたがる」中、膨大な情熱と労力をかけてこの作品を創り上げた「2軍のライオン・キングチーム」には、やはり心から拍手を送りたいですね。
実写版しか見たことがないという方も、子供の頃見たっきり…という方も、是非改めてチェックして頂きたいですし、未見の映画ファン、ディズニーファンの方がいたら、何卒一度はご鑑賞頂きたい…そんな一本です♪
いつも長文駄文にお付き合い頂き本当にありがとうございます。感謝です!
![にほんブログ村 映画ブログ ディズニー映画へ](https://b.blogmura.com/movie/movie_disney/88_31.gif)
にほんブログ村