ディズニー映画語り きつねと猟犬 | すきなものしか語れない

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元ディズニーシー長年単パサー。今はおもにディズニー映画中心に好きなものだけ勝手に語るつまらないブログです。Dヲタだった頃の記事は思い出として残してます。



はぃどぅもぉ。


さて、今回はディズニーアニメーション映画史時代は1980年代、ディズニーアニメーションスタジオの暗黒期と言われている時代へ。



圧倒的リーダーであったウォルトその兄ロイ他界も乗り越え残ったクリエイター達で生み出した「ロビン・フッド」「くまのプーさん 完全保存版」も無事にヒット。

そして大きな予算をかけた大作「ビアンカの大冒険」大ヒットを記録しウォルト亡き後もディズニーの勢いは衰えない…と思われていましたが、、次作となったこの1本からその流れは少しずつ変わり始める事になります…。



(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)


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  きつねと猟犬

(原題:The Fox and the Hound)
1981年
監督
アート・スティーブンス
テッド・バーマン
リチャード・リッチ

データ


ウォルトディズニーアニメーションスタジオ24作目の長編アニメーション。



原作はダニエル・P・マニックスによる同名小説。

当時スタジオの中枢を担っていたウォルフガング・ライザーマンが自身の家族で狐を飼ったことがある経験から、ストーリーアニメーションに最適だと判断し1977年に制作がスタートしました。


大まかなストーリーや設定等は原作に準じていますが、動物が喋る、トッドとコッパーの関係等のオリジナル要素が加えられた他、クリエイター達の意見対立を経て物語の重要な部分にも大きな改変が行われました。



人間に育てられた狐トッド猟犬であるコッパー立場を越えた友情と自然と社会の厳しさを描いたドラマチックバディアニメーション



70年代低予算によるドル箱作品が続いていたディズニーでしたが、前作「ビアンカの大冒険」に引き続き今作大作映画として高額な予算を投入して制作されました。


ベテラン達の指揮のもと、1970年代半ばにディズニーが採用した新世代アニメーター達が中心となって制作を行った最初の作品


その新世代メンバーの中には…


ジョン・ラセター

ティム・バートン

ジョン・マスカー&ロン・クレメンツ

(リトル・マーメイドアラジンモアナと伝説の海等…)

グレン・キーン

(塔の上のラプンツェル)

クリス・バック

(アナと雪の女王)


などなど後のアニメーション界・映画界を背負う事になりる錚々たる顔ぶれが名を連ねています。


であると同時に、これまでディズニーアニメーションを支えてきたベテラン集団ナイン・オールドメンのメンバーが最後に参加した長編アニメーション作品でもあります。




制作中クリエイター間の様々な意見の対立により主要アニメーター達が集団で突然退職する等制作が難航新世代と旧世代での衝突等もあり決して良好な環境とは言えない中、約4年の歳月をかけて完成にこぎ着けた1本。


ここから少しずつスタジオ内の環境は低迷の道を進み、80年代暗黒期の幕開けになったと言われています。


又今作はディズニーで初めてCGによる映像を本格導入した長編アニメーションとしても知られています。



監督を務めたのは前作「ビアンカの大冒険」にて制作中に亡くなったジョン・ラウンズベリーの代理監督を務めたベテランアニメーターのアート・スティーブンス

同じくアニメーターとしてはベテランのテッド・バーマンと若手のリチャード・リッチがスティーブンスの補佐として共同監督に抜擢。

この2人は後の「コルドロン」の監督も務める事になります。


脚本とストーリーは今作が最後の作品となったベテランのラリー・クレモンズヴァンス・ジェリー、さらに70年以上のディズニーキャリアを誇り2023年に亡くなったレジェンドバーニー・マティンソンも参加しています。



音楽は東京ディズニー・シーのセンター・オブ・ジ・アースホーンテッドマンション等多数のパークミュージックを生み出した事でも知られるディズニーレジェンドバディ・ベイカー


楽曲は多数の映画音楽を手掛けテレビスターとしても活躍したソングライターのジム・スタッフォード等。



本作の主人公であるきつねのトッド役を務めたのはミッキー・ルーニー子役としてスターとなり成長後はコメディ俳優として地位を築く等、実に90年近くに渡って第一線で活躍を続けた稀有な名優です。日本語版は池水通洋さん。


猟犬のコッパー役には著名な映画俳優であるカート・ラッセル。日本語版は石田太郎さん。

コッパーの飼い主であるハンターのエイモス・スレイドを演じたのはアカデミー俳優であるジャック・アルバートソン。日本語版は大塚周夫さん。

トッドの飼い主である農夫のトゥイード夫人役には女優のジャネット・ノーラン「ビアンカの大冒険」でもボイスキャストを務めました。日本語版は新道乃里子さん。


その他にもプーさんシリーズでお馴染みのジョン・フィードラーポール・ウィンチェル等、ディズニーのお馴染みのボイスアクター達が数多くキャスティングされています。


当時の作品群の中ではかなりの高額な予算を投入された大作でしたが興行収入ではそれなりの収益を上げることに成功します。

しかし評価面では一般評価・批判化レビュー共に賛否両論となり、その地味な作風展開の弱さ等に批判が集まりました。
しかし反面、安定感のある全体クオリティの高さクライマックスのシークエンス絶妙な塩梅で社会性を内包したテーマは批判家を中心に高い称賛も獲得しています。

現在では数あるディズニー作品の中でも一般的な知名度は低くマニアックな作品の1つとされていますが、前述の通り名だたる人物達のキャリア初期作品としてファンの間では有名であり、暗黒期と言われる80年代作品の中で特に良質なディズニーの佳作として長年愛され続けています。


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あらすじ





母を猟師に殺されたきつねトッドはフクロウのビッグ・ママ達の機転により、心優しい農夫のトゥイード夫人に拾われ愛情を受けて育てられる。

トッドは隣家に住む猟師の猟犬コッパーと出会い仲の良い友達となるが、2人はきつねと猟犬。
いずれ敵同士になる定めを背負っていた…。

そして隣家のハンターでコッパーの飼い主のエイモス・スレイドがトッドを捕える事に執念を燃やしはじめた事で、トッドに愛を注いできたトゥイード夫人はある苦渋の決断を下す…。


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感想




本国ではなかなかのヒットを記録し、日本でも東京ディズニーランド開演記念作品と銘打ち公開された本作ですが、残念ながら今日に至るまでディズニー長編アニメーションの中でも五本の指に入るほど知名度の低い作品となってしまっています。

内容は決して悪くなく、これまでのディズニーのやってきたことを見事に踏襲した内容で、ミュージカル要素が無い以外はまるでディズニー動物物のお手本のような作品。

それでいて新世代らしい新しい要素も取り入れていて、いかんせんタイトルあらすじキャラクター全てが非常に地味な印象は拭えないのですが、実は結構複雑な事をやっていると思います。

バンビジャングル・ブックで描かれた自然動物と人間。
わんわん物語等で描かれたペットと人間。
ディズニーがこれまで表現してきた物に新たに立場を越えた友情という社会性の強めなテーマを乗っけて混ぜ合わせたような、そんな感覚。

エンディングもどちらかというとハッピーエンドと言うよりは観ている側に投げかけるような落ちになっていて、勧善懲悪でポジティブだけだったこれまでの作風とは違う性質を確かに持っています。

明らかにこれは新世代達が吹き込んだ「ディズニールネサンス」へ向けた改革の息吹であり【ただ楽しいだけではなく社会へのメッセージや問題提起を内包した深みのあるディズニーアニメーションへ】の始まりとも言える大きな転換点だったと思います。

もちろんまだまだ未成熟ではあり、どっちつかずな部分も多々見られ、結果的には総じてインパクト不足な作品になった事は否めないんですけど。

【平均点で退屈】と言われることが多いこの作品ではありますが、実際はディズニー長編アニメーションの歴史上非常に大きな意味を持つ大切な1本だと感じますね。


全てがハイレベル



世界観が非常にミニマム登場人物がとても少ない映画なのですが、そのぶん各キャラクターがしっかりそれぞれの感情それぞれの目的を持って行動していて説得力があります。

主役のトッドコッパーだけではなく、トッドを引き取った夫人猟師、さらにコッパーの先輩猟犬チーフ、フクロウのビッグママ、女狐のビクシー等、それぞれの感情と行動が絡み合い物語が展開してく、この辺の組み立ては見事です。

作画地味ですが丁寧で堅実な完成度ですし、動物の描写や表現は相変わらず良くできています。
音楽もこれまた地味ですが決して悪くない

コメディ部分も非常に良い仕事をしていて、特に森の住人である二羽の鳥達、ディンキーブーマー一匹の芋虫を狙って四苦八苦する本編とは無関係なギャグシークエンスが終始随所に差し込まれるのですがこの辺はもう職人芸ですね。
本当に素晴らしい

総じて大きな粗のない、全てが高い次元でまとまった優秀なアニメーション映画と言えるでしょう。


散らかり気味のストーリー




ただ残念なのは肝心のストーリー構成

大きなテーマや要素3つほど描かれていて、そのほとんどがとても中途半端に終わってしまっていることです。

トッドとコッパー立場に遮られる友情メインとして描きたかったのですが、その他の要素が何かと多くて。。
メインのテーマから観客の気をそらしちゃってる気がするんですよね。

トッドと夫人に代表される人間と動物の関係性、さらにトッドの森での生活やロマンス等で描かれる自然動物界などなど。

そしてそれらの要素達が何とも中途半端で、うまく着地していない

観ていただければなんとなくわかってもらえるかと思います。

結局蓋を開けたら何を一番言いたかったのかよくわからない映画になってしまっている気がします。

良く出来てるだけにこの辺のストーリーライン違和感がちょっと惜しい。。

この展開を好きな人もいそうなので賛否別れるところでしょうが。
個人的にはもっと洗練させてメインのテーマしっかり魅せて欲しかった気がします。
折角クライマックス〜ラストの投げかけの流れとかとても良いのに、勿体ないと思いました。

夫人とトッドの関係性も消化不良だし、トッドのロマンスとかを結構長々見せるくらいなら、コッパーとの絆の強さを感じさせるもう一押しが欲しかったし…といった感じです。

テーマは違いますが作品のイメージとして一番近いのはバンビでしょうかね。バンビ色々な要素をくっつけた感じの印象です。

文字通り旧ディズニー新ディズニーマインド作品内でせめぎ合ってるのが透けて見えるんですよね。


あとはやはり主役のトッドとコッパーにもう少しキャラクターの魅力欲しかったのは否めないところですかね、、。
キャラとしての肉付けはどちからというとサブキャラクターの方が丁寧に描かれていた印象です。


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まとめ




まぁただ、それを差し引いても基本的には地味だけど一つ一つの仕事を丁寧に作られた出来の良い映画です。


なんにせよ基本が良くできているだけに、キャラクターや全体の地味さ冒険の無さ、ストーリーの散らかり方焦点のブレ惜しまれる、そんな作品でしたね。

なんか3本くらいの映画を1つに無理やり詰め込んだ感じをどうしても受けちゃうんですよね。


決して悪くない。けど名作には届かない。

なんか…まさしく暗黒期の始まりといった雰囲気をひしひしと感じる作品ですね。
それと同時に間違いなく90年代の黄金期へ繋がる【ウォルトに依存しない新しいディズニー】がしっかりと蒔かれた事を感じる作品でもあります。

ここから始まったスタジオの雰囲気の悪化は次作のコルドロンでさらに拍車がかかる事になります。

しかし、ここからの暗黒期と言われる作品群。この作品を含めて決して駄作は1本もありません。それぞれに良さがあり、一作一作毎にここで蒔かれた種がしっかりと育っていくのを感じる魅力的な作品達に溢れています。


この「きつねと猟犬」もまさにそんな1本。
エンターテイメントとしての派手さは無いですがディズニーの魅力が沢山詰まっていて、さらに現在の作品にも通ずる深み】も付与された素敵な作品である事は間違いありません。


知名度の低さから未見の方も多いとは思いますが、ぜひ一度は沢山の人にチェックして頂きたい作品ですね。




「きつねと猟犬」は現在ディズニープラスで配信中です♪



はい。


というわけで今回はこの辺で!


今回も長文駄文にお付き合い頂きありがとうございました♪


しーゆーねくすとたぁいむー。