はぃどぅもぉ。
さて、今回は2週目のディズニーアニメーション映画史。時代は1970年代、ディズニーアニメーションスタジオのドル箱期とも言える時代へ。
この時代からディズニーの低予算・短期間でヒットを生み出そうとする所謂【ドル箱路線】が本格化し「ジャングル・ブック」「おしゃれキャット」は立て続けに成功を記録します。
しかしその最中にウォルトがまさかの他界。
そしてそのわずか5年後にはディズニーを経営手腕で支えていた兄のロイも他界してしまい、ディズニースタジオは大きな岐路に立たされます。
そんな中公開された次作は、ウォルト不在の状態で1から制作が行われた初めての長編アニメーション映画となったのでした…。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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ロビン・フッド
(原題:Robin Hood)
1973年
監督
ウォルフガング・ライザーマン
データ
ウォルトディズニーアニメーションスタジオ21作目の長編アニメーション。
ディズニーの長編映画で初の人間が一切登場しないアニメーション作品です。
イギリス中世イングランドの伝説の人物とその逸話を原作とし、それを動物の擬人化で表現した作品。
この企画の始まりは元々1930年代から映画化が検討されていた民間伝承のきつねの寓話「Reynard the Fox」ですが「自分の利益の為に人を騙すきつねはヒーローにふさわしくない」というウォルトの懸念から制作は数十年に渡って何度も棚上げされ続けます。
ウォルトの死後、スタジオの中心人物の一人だったケン・アンダーソンが「ロビン・フッド」とこのレイナードの要素を融合する事を発案し、本格制作が開始されました。
ウォルトが初期草案以外制作に全く関わっていない【完全にウォルト抜きで作れられた】最初のディズニー長編作品です。
又今作は低予算や制作の遅れ、ウォルトの死後のごたごたでスタジオ内のスムーズな制作進行が行えなかった事を理由にロトスコープ技術によって【過去の名作から数々のシーンが'リサイクル'使用された】作品としても有名な1本です。
キャラクターのベースや大まかな筋・時代背景は原作ロビン・フッドに基づいてはいるものの、全てのキャラクターが動物で描かれている事をはじめ前述のように民間伝承【レイナード】の要素も含まれており、有原作ではありながらもディズニーのオリジナル要素が非常に強い作品となっています。
監督を務めたのはベテランアニメーション職人集団であるナイン・オールドメンのメンバーウォルフガング・ライザーマン。
脚本とストーリーは当企画の考案・発案者であるケン・アンダーソンやナイン・オールドメンのフランク・トーマスの他、ラリー・クレモンズやヴァンス・ジェリー等が「おしゃれキャット」に引き続き手掛けました。
音楽は「101匹わんちゃん」から5作目となるジョージ・ブランズが担当。今作が彼の最後のディズニー作品となりました。
楽曲制作の中心となったのはカントリー・ミュージックで有名なシンガーソングライターのロジャー・ミラー。彼は声優として鶏のアラナデール役も担当しています。
本作の主人公であるロビン・フッド役を務めたのはイギリスの俳優ブライアン・ベッドフォード。
日本語版は大宮悌二さん。
ロビンの恋人マリアン役には同じくイギリスの女優モニカ・エヴァンス。前作「おしゃれキャット」アビゲイル役でも活躍していました。
日本語版は新道乃里子さん。
ロビンの親友リトル・ジョンを演じたのは当時コメディアンとして活躍していたフィル・ハリス。「ジャングル・ブック」バルー役、さらに「おしゃれキャット」オマリー役が絶賛され3作続けての出演となりました。日本語版は八木光生さん。
ヴィランとなるプリンス・ジョン役にはイギリスを代表する名優の一人ピーター・ユスティノフ。
日本語版は川久保潔さん。
日米共に「ジャングル・ブック」「おしゃれキャット」から継続キャスティングが多くなされているのが特徴的です。
最大のリーダーであるウォルトを失った後の初の本格制作と言う事もありクリエイター同士の意見の対立やキャスティングの難航等、スムーズに進行しなかった部分も多かった今作。
ウォルトなしで果たしてスタジオを存続していけるのか…。
クリエイター達のプレッシャーや不安は最高潮に達していたといいます。
しかし蓋を開ければ興行収入としては「101匹わんちゃん」や「ジャングル・ブック」には及ばないものの充分な収益を上げる大ヒットを記録。
ウォルト不在であってもディズニーがアニメーションスタジオとして十二分に健在であることを世間に証明してみせました。
評価面では賛否両論であり、ディズニーの伝統や技術・培ってきたものを多方面に取り入れたバランスの良い王道のファミリーエンターテインメント作品として高評価を受ける一方で、前述した【過去の自社名作から数々のシーンをリサイクルトレースした】そのアニメーション手法、全体の抜きん出たインパクトの薄さなどが批判点として多く挙げられ続けてもいます。
しかし時の経過と共にそのトータルクオリティの高さや完全なる動物の擬人化長編アニメーション作品のパイオニアとしての表現、リアルな社会性を内包したストーリー構成等が改めて評価され、現在でも一部からカリスマ的な人気を集め続けており、コアなファンの多い作品の1つなっています。
また近年ではディズニーのバイロン・ハワード監督が今作をインスパイア元に大ヒット作「ズートピア」を制作した事を公言し、その知名度はさらに上昇しました。
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あらすじ
動物の世界におけるイングランド。
狐のロビン・フッドと熊のリトル・ジョンは代理王プリンス・ジョンが敷く悪政により苦しめられる民衆を助けるため、「政府から盗み民衆に施す」義賊として暮らしていた。
人々は苦しい生活を敷いられながらもロビン・フッドの行いに感謝し、協力して日々を懸命に
生活していた。
しかしプリンス・ジョンの悪政は徐々に悪化し、増え続ける税金に民衆は追い詰められていく。
そんな中、リチャード王の姪でありロビン・フッドの意中の相手マリアン姫がプリンスジョン主催の弓矢大会にやってくる事を知り、ロビンはマリアンの救出を画策する。
しかしそれは、自身の政権に楯突くロビンを捕らえようとプリンス・ジョンが画策した罠だった…。
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感想
扱っている時代背景の暗さや重々しさに関わらず子供にもわかりやすい勧善懲悪のヒーローストーリーとなっており、展開も要所に山を作ってあるので子供も大人も飽きることなく最後まで見る事ができるレベルの高いファミリーエンターテイメント作品です。
本が開く演出から始まり、手書きのラフ線を残す作画、そつなく楽しい音楽、政治や社会を描いたストーリー、ドタバタ劇によるギャグとアクションの応酬…等とてもソツなくバランス良くまとまっています。
ディズニー映画入門編にも良いでしょう。
ただ、言葉を変えれば過去作の良いとこ取りの寄せ集め感がとっても強く、最初から最後まで「どこかで見た事がある」既視感のオンパレード。
現にこれはもう有名になってしまいましたが、前述の通りいくつかのシーンは似てるという種類の物ではなく、過去作のキャラモーションを丸々トレースして作られたアニメーションが使用されています。
敢えて具体的なシーンはここでは上げませんが、その数はかなりの量です。
これは製作時の背景が強く影響していて、平たく言うと製作の難航で予算と時間が大きく削られてしまったから、、という一言になります。
このロトスコープで過去作品をトレースする手法はこのあとの他作品でも結構あって、これ自体は別に自分達の過去作品のトレースだし何の問題もない賢い制作術だと思うのですが…
それを差し置いても、該当のシーンのみならずキャラ設定や演出、ギャグに至るまで全てにおいて「どこかで見た事がある感」がずーっと付きまとうんですよね。
別に過去の名作をオマージュするのは構わないんですがここまでやられちゃうともう流石に寄せ集め感が半端無いというか、、
ちょっと今作はやり過ぎです。
じゃあ他のところで目を見張る発想やアイデアが見られるかといったらそれもあまり感じられず、、。
一言で言うと圧倒的なオリジナリティが足りない…という言葉が一番しっくりくるでしょうか…。
挑戦はしてるのですが上手く行ってない…と言う方が正しいかもしれません。
映画制作の難しさ
経緯はともかくディズニーの良いところやらしさを他作品から集めて凝縮したような作品になっているので、間違いなくトータルクオリティは平均点以上です。
だけど寄せ集めは所詮寄せ集めなので、そこからさらに印象的な作品にするにはそれは穴埋めするくらいのオリジナリティが必要ですよねやっぱり。
色々やってるにも関わらず結局ドタバタギャグシーンが一番面白く印象に残るというのは、やはりこれまでのディズニーを越えられていないという事だと思います。
やはり大きなキーとなっているのは作品全体に流れるシリアスユーモアのどっちつかずな空気感。
というのもおそらく【人間のリアルな社会性を動物擬人化によりディズニー作品に内包する】というのが今作の大きなテーマであり最大のオリジナリティだったと思うし、これはまさにそのまま「ズートピア」に引き継がれていくんですが…
この肝の部分がイマイチうまくいってない。
時代背景とかバックボーンも相まって要所要所かなりシリアスで暗いテーマや描写になってるんですが、その反面ディズニーぜんとしたキャラクター達の軽さやコミカルさがマッチしてないんですよね。
代理王が過度な税金を民衆から取り立てまくり、反抗したら牢屋にぶちこむってリアル描写はもう少しなんとかしても良かったのではと。
ディズニー映画で「税金♪税金♪」歌いながら楽しそうにお金を巻きあげる政府って、なかなかですよね。
いや良いと思うんですがキャラ達の軽いノリと本当に合っていない。
ただここの描写を生々しくしてる事で、勧善懲悪の結末がより生きてる事は間違いは無いんですけどね。
それと悪役もただ意地の悪いアホ丸出しなキャラなのもちょっと勿体なかったです。
少しだけでも思慮深い面とかあると、より深みが出た気はします。
税金はそもそもは必要な物だし、ロビンフッドは民衆に与えるために政府から奪いますがこれは完全な善では無いですよね。
(実際最初この作品の打診があったとき、ウォルトはロビンが義賊であるという理由で没にしています。)
そこのところを多分もう少し突っ込んで描くか制作陣が悩んだ跡は伺えるのですが、結局くっきりとした勧善懲悪として描かれているのはやはり少し違和感です。
何よりロビン・フッド達が能天気すぎて、伝えたいものがだいぶボヤけちゃってる気がします。
ロビン達のキャラは軽くて好きなんですが、このキャラで行くなら王様の剣やおしゃれキャットのように全体にもう少し冗談感を出して欲しかったですし、反面あそこまで生々しいテーマ性をもたせた映画にするならもう少しコメディトーンを落としたほうが良かったと思うし…
この点がちょっとちぐはぐ過ぎるのが、作品全体のとりとめのなさを強調しちゃってる気がします。
今作のストーリーは発案のケン・アンダーソンと監督や他クリエイター間で意見がかなり割れたらしいんですよね。
その結果、ややどっちつかずな振り切れない作風になってしまった気がしますね。
こういう所に圧倒的リーダー・ウォルトの不在を強く感じてしまいます。
安定した品質の高さ
ギャグアクション・ドタバタコメディに関してもやはり何処かで見たことある既視感の強いものが多かったですが、ディズニー伝統のカートゥーン職人芸が詰めこまれた一級品であり、非常に良くできています。
個人的にハマったのはマリアン姫の乳母レディ・クラックの無双っぷりですね。
迫り来るサイや象の兵士達を次から次に片手で易々と払い落として行く姿は圧巻ですw(このシーンも昔のどこかの短編で似た物あった気はしますけど)
このシーンをはじめ弓矢大会でのシーンは本当にギャグアクションの見応えが満載でした。
蛇のサー・ヒスの風船での飛行シーンとかも素晴らしかったです。
作品通して小さな山がしっかり連なっていて見易い構成も流石でした。
アニメーションも本当に滑らかでユーモラスで秀逸な出来。
特に個人的に今作は画角構成が本当に素晴らしいと思いました。
ギャグもシリアスシーンも魅せ方がとても良いです。
ただ音楽の方は正直平均点。
もう少しパンチが欲しかったですかね。
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まとめ
まぁちょっとマイナス面をつらつら綴ってしまいましたが、決して出来は悪くなくストーリーや起承転結もしっかりしている、何も考えないで気軽に楽しめるディズニーの良質なエンターテインメント映画ではあります。
前述でああいう書き方はしましたが、やはり動物の擬人化長編アニメーションの1つのパイオニアではあると思いますし、現在でもファンが多いのも納得はできます。
ただやはり作品通してみるとその全体像に少々ブレがある…というのは強く感じますね。
クリエイター達が思い描いた形にしっかりなっていないんだろうな…という歯痒さもあります。
収益的にはまだまだ好調ではありましたが、確実に暗黒期の影がスタジオに忍び寄っている事が目に見えてわかる感じがするんですよね。。
この作品の不安定さはやはり「この部分を捨てたとしても、こういう映画にするんだ!」というウォルトの決断力やリーダーシップの欠如が大きく影響しているのは明らかです。
ウォルト亡き後のクリエイター達の手腕の素晴らしさを感じると共に、やはり、彼の存在の比類無き大きさを肌で感じる1本とも言えると思いました。
ファミリーエンタメ映画として、とても良い作品ですけどね!
「ロビン・フッド」は現在ディズニープラスで配信中です♪
機会があれば是非一度チェックしてみてくださいませ〜☆
はい。
というわけで今回はこの辺で!
今回も長文駄文にお付き合い頂きありがとうございました♪
しーゆーねくすとたぁいむー。