※一部修正追記した再掲記事です。
ハイドーモ。
今回は恒例のディズニー・トゥーン・スタジオ回です。トゥーン・スタジオについてはこちらの記事を参照。
いっとき巷に溢れた所謂「ディズニーヒット作のひどい続編」の主犯格としても名高いこのスタジオですが、これまでも語ってきたように実は素敵な作品もいくつも世に送り出しているんですよね。
今回はそんなトゥーンスタジオの作品の中から、日本でも劇場公開され特に高い評価を得たこちらの作品について語っていきます。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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ピーター・パン2 ネバーランドの秘密
(原題:Return to Never Land)
2002年
監督
ロビン・バッド
ドノヴァン・クック
データ
前作から約50年の歳月を経て劇場公開されたディズニークラシック不朽の名作ピーター・パンの正統続編。
監督はディズニー作品初監督となるロビン・バッドと「ミッキー・ドナルド・グーフィーの三銃士」の監督でも有名なドノヴァン・クック。
脚本は「リトル・マーメイドⅡ」のテンプル・マシューズと「くまのプーさん クリストファー・ロビンを探せ!」のカーター・クロッカー。
音楽は「ティンカー・ベル」シリーズでお馴染みのジョエル・マクリーニー。
オリジナル楽曲はシンガーソングライターのジョナサ・ブルックをはじめロックバンドのゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツ等、多方面のアーティストが参加。
原作はイギリスの劇作家ジェームス・マシュー・バリーの戯曲及び小説ですが、今作に関してはほぼモチーフ程度であり基本的にはディズニーオリジナルのストーリーとなっています。
前作に登場したウェンディの娘ジェーンを主人公に、過酷な現実の中で夢を失くした子供とピーター・パンの冒険を描いたファンタジーアドベンチャー。
主人公ジェーンの声優を務めるのはハリエット・オーウェン。
日本語版は上戸彩さん。
ズートピアの時に【初めてのディズニー作品】とよく謳われていましたが正しくはこちらが初となります。
ピーター・パン役はブレイン・ウィーバー。
日本語版は林勇さん。
どちらも二代目ピーター・パンとしてもうお馴染みですよね。
フック船長役は、数々のディズニー作品を担当しているベテラン声優であり東京ディズニーランドやシーのアナウンスでもお馴染みのコーリー・バートン。日本語版はこちらもベテランの内田直哉さん。
トゥーンスタジオ久々の劇場公開作品であり、日本でも全国上映された今作。
何よりもあの【ピーター・パン】の半世紀ぶりの続編という事で大いに話題になりました。
当初はOVAとして制作されていた為2000万ドルという低予算ながら興行収入は1億ドルを突破し、本家作品「トレジャー・プラネット」等を上回る数字を記録。
評価面では賛否ありながらも、ディズニー版1作目の精神を忠実に引き継いだ作りや現実の世界大戦とネバーランドの対比、何よりラストの【再会】シーンが多方面で好評を得る形となり、トゥーンスタジオを代表する成功作となりました。
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あらすじ
舞台は第二次世界大戦中のロンドン。
幼少期、ピーター・パンとネバーランドで大冒険を繰り広げたウェンディは大人になり、二児の母親となっていた。
こんな苦しい時代でもウェンディは夢を忘れたことはなかった。子供達にピーター・パンとの冒険譚を毎日のように話し聞かせた。
幼い息子のダニーはかつての自分達のようにピーターに憧れていたが、年頃に差し掛かる娘のジェーンは違った。
ロンドンには爆撃が降り注ぎ、父親は徴兵で戦地へ赴きいつ帰るかもわからない。
そんな状況で見たこともない【ピーター・パン】【ネバーランド】【妖精の粉】を信じろと言う方が無理な話しだった。
外では爆撃が降り注ぐ中、ピーター・パンに憧れはしゃぐダニーに苛立ちを隠せないジェーンはついに「ピーター・パンなんか居ない。作り話だ。」と怒鳴りつけてしまう。
落ち込むダニー。弟に現実を突きつけるジェーンを見てウェンディは言う。
「それで大人のつもりなの?」と。
そしてついに子供達の疎開命令が発令され、翌日にはジェーンとダニーは汽車に乗りロンドンを離れることに。
疎開の現実と、弟に言ってしまった事で思い悩み、悲しみに暮れるジェーン。
そんな夜更け。
ウェンディの家に忍び寄る一隻の船と、鈎手の男がいた…
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感想
個人的には実は1より好きだったりします。
置きにきた感じの内容の薄い続編じゃなく、ガッツリ前作の'その先'に踏み込んだ内容になっています。故に評価も別れるとは思いますが。
個人的に1953年の「ピーター・パン」という作品はディズニー版のピーター・パンとネバーランドの紹介作品であってそれ以上では無かったんですよね。
「不思議の国のアリス」も同じ事が言えます。
映画一本使って【世界観の提示】のみで終わってしまっていると思うんです。
今回はその前作で提示した【ピーター・パンとネバーランド】を使って【夢を信じれない子供の成長物語】を見事に描いています。
主役はピーター・パンではなくあくまでジェーン。
このプロットがまず素晴らしいと思いました。
音楽や作画、演出も含めておそらくディズニー・トゥーン・スタジオ歴代No.1かNO.2のトータルクオリティじゃないでしょうか。
1よりもテンポが良くストーリーの起伏もしっかりついてるので、前作にそれほど思い入れが無い人も含め、どんな人が観てもそれなりに楽しめるエンターテイメント映画に仕上がっています。
ビデオ用に制作されながらも、その出来の良さから劇場作品に昇格したのも頷けますね。
毎度のことながら詳しくは↓↓で〜。
切っても切れない永遠のテーマ
この作品で描かれている【夢を信じたいけど現実がそれを許してくれない】ジェーンの状況というのは、実はディズニーにとって切っても切れない永遠のテーマだと自分は思います。
ディズニーが好きな人って、一度はジェーンと同じような気持ちを感じたことがあるんじゃないでしょうか?
この作品におけるネバーランドを例えばディズニーランドに置き換えてみるとわかりやすいと思います。
現実は常に動いている。
悲しい事も次々に起こる。
夢の世界も信じたいけれど、今はそんな事言ってられない。
そんな気持ちでディズニーランドに行く。
それは決して現実とは相容れない物だと頭ではわかっている。
だけど、今その瞬間だけは眼の前にある物を信じてみた。そうしたらとても楽しかった。
だけどそれはあくまで夢で、やがて現実に戻る。
それが例え夢だったとしても、その瞬間は決して無駄じゃないし、嘘じゃない。
何故ならその夢を信じたひと時が、これからの現実を生きる糧になるから。
なんか小説みたいになっちゃいましたけどw
原作は一旦置いといて、ディズニーが「ピーター・パン」を通して我々に投げかけているのは、正にこれだと思うんです。
ただ1作目は寄り道が多くて正直このテーマの伝え方がイマイチでした。
今作はジェーンというキャラクターと戦争中という設定、ネバーランドでの変化の描き方も凄くうまくて、ホントにこのテーマがダイレクトにしっかり伝わってくるんです。
おときちはこのピーター・パン2を初めて観たとき、これまでに無いくらいジェーンに共感し物語に引き込まれたんですよね。
自分が最初にディズニーを好きになった時の気持ちと凄くリンクするんです。
故に今でも【ジェーン】というキャラクターは
個人的にディズニーキャラの中でも凄く特別なキャラクターですね。
【現実を生きなきゃいけない事を誰よりもわかっている。だけど夢の世界だって本当は信じたい】
そんな人達の代弁者としてジェーンは実はこれまでにあまり居なかったディズニーヒロインだと思います。
ピーター・パンという題材を通してこのテーマをここまでダイレクトに、誰にでも伝わる物語としてまとめあげたプロットは本当に見事だと思うんです。
最近だと【プーと大人になった僕】等でもやってましたが、現実と夢の世界の対比というのをしっかり物語として着地させるのって結構難しいと思うんですよ。
このピーター・パン2はその数少ない成功作だと思いますね。
そこには前作の主人公ウェンディの見事な使い方の上手さも、大いに貢献しています。
あの【ピーターパン】の続編として
ここに賛否があるのは仕方ないですね。
わかります。
1に比べストーリー性が高く、描きたい事がハッキリしてるのでネバーランドやピーター・パン自体の魅力は抑えめになってるとは感じます。
特にピーターの本来のダーティーさや無邪気さがあまり垣間見れないところ辺りは、原作や1の根強いファンに受け入れ憎い部分ではありますよね。
倫理的観点から前作で炎上したインディアン達を登場させられなかったのも大きいです。
ただ、個人的には1では描ききれなかったロストボーイズのそれぞれの個性がしっかり描かれている点。それと日本語版サブタイトルにもなっているネバーランドの秘密。
これ「秘密なんか全く描かれていない」と散々言われてますが、一応ちゃんと描かれているんですよ。
【ネバーランドに妖精を信じない者が居ると「光」が消え、妖精が死んでしまう】
というのがそれにあたります。
これはディズニーにおけるピーター・パン世界の結構重要な新情報だったと思います。
この2点は続編として素晴らしかったと思いますね。
まぁフック船長が絡んでくるので結局大筋が1と同じようになっちゃってるのは間違いないですが、実は結構新しい事を細々やってる続編だと思うんですけどね。
夢を信じたいのに現実がそれを許してくれない女の子と、相変わらず能天気なピーター・パンやロストボーイズの触れ合いはある種の緊張感をはらんでいて面白いですし、現実の戦時下のロンドンとネバーランドの陰陽のコントラストも絶妙な塩梅で描かれています。
個人的に今作で唯一ひっかかったのは
【フック船長とジョリーロジャー号がロンドンに行けた理由】
です。
だってこれ、妖精の助けが無いと無理な筈ですよね?
折角他が良く出来てるのに、この矛盾だけ残念でした!
作画と音楽
作画に関しては正直細部の決め細かさやなめらかさは本家スタジオには敵いませんし、CGの使い方も若干荒かったりもしますが、かなりの努力と健闘のあとは伺えます。
トゥーンスタジオは作画と画角の悪さには定評があり、酷いものは結構酷いのすが、この作品は特に演出と画角に関してはかなり頑張ってると思います。
音楽の部分ではジョエル・マクリーニーの劇伴の雰囲気はやはりこの世界にピッタリハマってますし、何よりジョナサ・ブルックが提供した名曲「アイル・トライ」が本当に素晴らしくて、本当に大好きですね。
ジェーンの揺れ動く心を的確に一曲で表現しています。
この作品を象徴する曲として今も尚根強い人気を誇っていますよね。
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まとめ【数少ない絶対に観て欲しい続編】
これまで色々語ってきましたが。
今作で最も素晴らしいと思うのは、やはり前作の主人公ウェンディの描き方です。
厳しい現実の中でも、娘から「ピーター・パンなんて馬鹿馬鹿しい話はやめてくれと」と言われても、信じる心を決して失わずに居続けた前作の主役ウェンディ。
幼少期にピーター・パンとネバーランドで過ごしたひと時をずっと信じ続けて、現実を生きてきたウェンディ。
そんな彼女とピーター・パンのラストの再会のシーンは、ファンには堪らない、ファンじゃなくても胸が熱くなる名シーンに仕上がっています。
言っては難ですが、トゥーンスタジオの作品とは思えないくらい、最高に情緒と雰囲気に溢れた素晴らしいシーンです。
何よりわかってほしいのは、当時のディズニー作品によくあった'おざなりな続編'とは全く別物の、本気度100%の正統続編だということ。
ディズニーのピーター・パンはこの作品をもって完結すると言っても過言ではない内容になっています。
前作を観ている人でまた未観の方は、絶対に観て欲しい。そう思える数少ないディズニーの続編作品ですね。
【ピーター・パン2】は現在ディズニープラスで配信中です♪
はい。
というわけで!
今回はこの辺で〜。
いつもこんな駄文にお付き合い頂き本当にありがとうございます。感謝です!
では、また次回!
しーゆーねくすとたぁーいむ。
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