ディズニー映画語り わんわん物語 | すきなものしか語れない

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元ディズニーシー長年単パサー。今はおもにディズニー映画中心に好きなものだけ勝手に語るつまらないブログです。Dヲタだった頃の記事は思い出として残してます。


はぃどぅもぉ。


さて、今回は2週目のディズニーアニメーション映画史時代は1950年代、ディズニーアニメーションスタジオの安定期


シンデレラの大成功のおかげで傾いていたスタジオは完全に持ち直し、これまで保留となっていた作品達の制作とリリースが続々と行われていく事になります。


「ふしぎの国のアリス」そして続く「ピーター・パン」大ヒットを記録し、勢いにのるディズニー。ウォルトは映画製作と平行して大詰めとなったディズニーランド建設に注力していきます。


そしてまさにディズニーランドオープンを目前に控えた1955年。ウォルトが制作に注力できない新体制のスタジオから、歴史に残る傑作アニマルムービーが産声をあげます。



(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。


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  わんわん物語

(原題:Lady and the Tramp)
1955年
総監督
ケン・ピーターソン

データ

ウォルトディズニーアニメーションスタジオ15作目の長編アニメーション。



ディズニー長編作品初のオリジナルストーリー


とされていますが厳密に言うと原作はあります。


元々は1937年にディズニーの有名アニメーター、ジョー・グラントが提案したレディという自身の飼い犬から着想をえてウォルトに提案した物語が発端です。


しかし計画は長期の棚上げされます。


1945年に発行されたウォード・グリーン小説を読んだウォルトは、この小説に登場する野良犬とグラントレディを組み合わせる案を思い付き、制作を開始。


さらに物語を大衆に馴染ませる為、ウォードに制作中の映画に基づいた小説を依頼し1953年に発行され、正式にはこの小説と1945年「ハッピー・ダン、シニカル・ドッグ」がこの映画の原作とされました。


一方レディネズミイジワルな猫おばさんなど、今作の基盤となったストーリーを創造したグラントウォルトとの意見の衝突により1949年ディズニーを退社


この映画に彼の名前が原作クレジットされる事はありませんでした…。



制作を指揮したのはケン・ピーターソン

ベン・シャープスティーンの後継として今作から1960年代までディズニー作品を支える人物です。

 


監督を務めたのはディズニー最初期メンバーであり、特に1950年代の各種作品を中心となり支えたウィルフレッド・ジャクソン

さらに同様に当時のディズニーの中核を担っていたクライド・ジェロニミハミルトン・ラスクが務めました。


前作「シンデレラ」「ふしぎの国のアリス」「ピーター・パン」と続いた監督布陣による最終作となりました。


脚本には「ファンタジア」「シンデレラ」「ふしぎの国のアリス」等の脚本も務めたアードマン・ペナーなどが担当。


音楽はこの時期のディズニーミュージックの要として大活躍していたオリバー・ウォレス


楽曲は世界的に著名なグラミー賞アーティストであるペギー・リーソニー・バークが担当。


ディア家の愛犬レディと風来坊の野良犬トランプのロマンス、そしてペットと人間の絆を描いたアニマルロマンスミュージカル



主役のレディを演じたのは眠れる森の美女のメリーウェザーやプーさんシリーズのカンガ役で知られるバーバラー・ルディ
日本語版は藤田淑子さん。

もう一人の主人公トランプを演じたのはラリー・ロバーツ。日本語版はベテランの中尾隆聖さん。

また楽曲制作も担当したグラミー賞アーティスト、ペギー・リーダーリング、シャム猫のサイとアム、保健所の犬・ペグ4役を演じた事でも有名です。

セーラおばさん役にはアリスのハートの女王やシンデレラのフェアリー・ゴッドマザー役等で知られるヴェルナ・フェルトン。日本語版は京田尚子さん。

日米ともに実力者が揃った豪華なキャスト陣と鳴っています。
 
今作はディズニー映画ではじめてシネマスコープ方式を採用した作品であり、同時にはじめて自社配給(ブエナビスタ)で公開された作品。

正に新たな時代新たな体制での作品となった一本ですが、興行収入としては白雪姫に次ぐ、シンデレラピーター・パンを越える大ヒットを記録しました。

ただし、公開時の評価面に関しては非常に賛否真っ二つとなりました。

【全てが驚きの無い標準以下の作品】【アニメーションの質がこれまでと違う】【ディズニーランドにかまけ過ぎた】という声と【トータルクオリティの圧倒的高さ】【色彩の美しさ】【犬達の繊細でユーモラスな描写力】を称える声が主に上げられましたが、結果的に多大な収益を上げた作品にも関わらず白雪姫シンデレラ程の大きな話題にはならず、やや時代に流された作品でもあります。

しかし、時代が流れるにつれて再評価が進み、特に1980年代にはその古さを魅せないクオリティと、特にレディとトランプのロマンス描写の素晴らしさが大きく評価されます。

2人がスパゲッティを食べるシーンは正にロマンス映画史アメリカ映画史に残る名シーンとされ、「史上最高のラブストーリー100本」「オールタイムベストアニメーション映画25本」さらにイギリスの「映画史に残る最高のキスシーン50」選ばれる等大きな人気を博しました。

現在においても、白雪姫シンデレラには一歩及ばないながらディズニーの代表的な傑作クラシックとして不動の地位を築いています。

中でもスパゲッティのシーンは最早世界的に有名なシーンとして現在でも圧倒的人気を誇っていますよね。

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あらすじ



ニューイングランド。

クリスマスプレゼントとしてディア家にやってきたコッカースパニエルのレディは、愛情に包まれ幸せに育つ。

信頼の印である鑑札付きの首輪を貰い喜んでいたレディだが、ある日飼い主の2人に変化が訪れる。

それは【2人に赤ん坊が出来た】からだと友達のジョック・トラスティに教わるレディだが、赤ん坊が何かが理解できない。

やがて2人の間に男の子が生まれ、それはとても大切なものだと理解したレディだったが、そんな時2人が出かける間子守にやってきた親戚のセーラおばさんと二匹のネコによって、レディの運命は思わぬ方向に転がっていく…。

一方、自由気ままな暮らしを好む野良犬のトランプはある日、口輪をしたまま野犬から逃げる飼い犬を発見する…。

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感想




他のクラシック長編作品に比べると少々地味で、知名度としてはシンデレラピーター・パンピノキオ等と比べると一段落ちるかもしれませんが、内容クオリティはそれらの作品にまったくひけを取らない傑作だと個人的には思っています。

テーマ描きたい物がしっかりぶれずに、それに伴って脚本がよく出来ているんですよね。

そしてやはり特筆すべきはそのアニメーション技術作画素晴らしい進化

正直作画とアニメーションに関しては1937年の白雪姫〜1990年まで1番じゃないかと個人的には思っています。
それくらい素晴らしいです。

そしてよりポピュラーミュージックに重点を置いた多彩な音楽
これまでのクラシックオペラ中心ではなく、より大衆に浸透しやすいポップスの名曲が沢山登場しました。
これに関しては楽曲制作や声優を担当したペギー・リーの手腕が大きく貢献しています。


本当に何度観ても、観る度に改めて思うんですが、やっぱり相当完成度の高い名作ですよねこれは。圧倒的だと思います。


個人的には間違いなく、全ディズニー映画の中でもトップ10に入る作品ですね。

派手さはありませんが細かいところまで情熱かけて作り込まれていて正直の打ち所がありません

大好きな作品ですね。


ペットと人間



体裁としてはレディとトランプの立場を越えたラブストーリーと言うのが主軸ではあるんですが個人的にはこの作品は動物と人間の共存の物語メインなんですよね。


ディズニーで動物主体の作品というのは過去にバンビダンボでやってますが、それらの作品とこのわんわん物語が根本から決定的に違う部分が、という人にとって身近なペット目線を通して人間と動物の共存を描いたこと。

バンビダンボでは人間側動物側には大きな壁がありほとんど相容れることはない存在でした。


人間は信用できないと野良を選ぶトランプ。
人間は大切な家族だと信じるレディ。
保健所で殺処分を待つ野良犬達。

状況により変化しながらも変わらぬ愛を動物に注ぐディア夫妻。
暖かく野良犬を見守るトニーの店の人々。
犬に対してあからさまな嫌悪を向けるセーラ。


それぞれの立場信条を持つキャラクター達を交差させることで共存の難しさや歯痒さもしっかり描きながら、心情や種族を越えた生き物に共通する愛情について丁寧に描かれています。

現在では動物映画と言えばディズニーの真骨頂の1つとして広く認知されていますが、実はこういう動物と人間のシビアな問題に切り込んだ作品というのは少ないんです。
大体が人間と動物どちらかの立場に大きく偏った作品になるんですよね。

今作はどちらの立場も心情もしっかり描写しながらも動物とペットについて非常に真摯に向き合って描いています。

それも、まったく説教臭くなることなく、です。

この辺のバランスはこの後の作品も含めてディズニーの動物モノの中でも一番巧みに、丁寧に描かれていると思いますね。

この映画のトニー達に【野良犬に餌をやるな】というクレームの声が大きく出てこないのは実はとても凄いことだと思います。


そしてこれに通ずる話として、今作にはヴィラン(悪役)がいないというのも特徴的です。


主人公達の立場からするとそれに値しそうなキャラクターは居ないわけではないのですが、あくまで立場の違いの話であってそれらのキャラが悪物として描かれているかと言われればそうではない、という。


今でこそ多様性が叫ばれるディズニー映画ですが、実はそれを最もうまく表現してる作品の1つがこのわんわん物語じゃないかな、と最近思いますね。

犬と人間。
犬を嫌う人間。
犬を愛する人間。
人間を嫌う犬。
人間を愛する犬。

その全ての人達の立場をしっかりとさり気なく描いてるのがは本当に見事なんですよね。


もう冒頭のナレーションからしてまず最高なんですよ。

「犬を喜ばせ尻尾を降らせることは、お金だけではどうにもなりません。この映画は、血統書付き、野良、全ての犬に捧げます。」


もう、、本当に素晴らしいです。。


エンターテイメント映画として



そして作画と演出の素晴らしさ。

まるで実写のような見事な背景画
その仕草を細かく反映させた緻密犬のデザインや動作アニメーション

犬の目線の高さに拘り、人間の顔があまり映らないその画角構成

そして何より名曲ベラノッテが流れる中レディとトランプが、トニーの用意した特性スパゲッティを食べながら不意にキスをする有名なシーンは本当に逸品です。


でも結局これも、人間同様に暖かく野良犬達に接し、粋にもてなすイタリアンレストランの店主・トニーの性格が効いてるからこそのシーンなんですよね。

(実はこのスパゲッティのシーン、ウォルトは最初大反対していたという裏話があります。)


そしてこの頃にはすっかり根付いてきたディズニー映画における名脇役のおもしろさ
この作品でも主人公のレディの飼い犬友達であるジョックトラスティが映画全体の隠し味としてとても良い味をだしています。

特にトラスティですが、この犬にはある仕掛けがありまして、その仕掛けの見せ方も非常にうまいんですよ。

本当にこの作品の良いアクセントになってるんですよね。

作品全体に広がりと深みを両方与えてくれました。

そして一方で、人間の母が子を想う愛情をストレートに歌った名曲ララルーと共に、レディの飼い主であるディア夫妻の純粋なキャラクター像もストーリー全体の端々にとても活きています。


さらに言うと短時間の出演ながら絶妙なタイミングで登場しアメリカ的な笑いをもたらしてくれる動物園のビーバーや、保健所で死を待つ犬達の悲哀を表したシーン等、どれも無駄がなく効果的


エンターテイメントとして細部まで本当に抜かりがないんですよ。

もう、、褒めるとこしかないですw


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まとめ



いやぁ、、何度見ても傑作ですね。

ディズニーの良いところが全部詰まった一本じゃないでしょうか。


ウォルトがほとんど制作に関われなかったということもあり他有名作品に比べ派手さはありませんが、非常に堅実でおさえるべきところを全ておさえた玄人好みの名作となっています。


と同時にこのわんわん物語は、続く101わんちゃんおしゃれキャットオリバー等、後のディズニー作品の所謂「動物冒険物」という1つのスタンダードパターン確立させた作品でもあります。

決してスパゲッティだけの映画ではありません!w

ストーリー、テーマ、美術センス、エンタメ性、全てが高いレベルで完璧にまとまった名作アニマルムービー


もっともっと、評価されても良い作品だと思いますね。心から。



「わんわん物語」ディズニープラスにて現在配信中です♪

沢山の映画好きの人達に是非1度は観て欲しい、自身を持ってオススメできる一本です!



はい。というわけで!


今回はこの辺で。


いつも長文駄文にお付き合い頂き本当にありがとうございます。感謝です!


では、また次回!


しーゆーねくすとたぁいむー。