ディズニー映画語り メロディ・タイム | すきなものしか語れない

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元ディズニーシー長年単パサー。今はおもにディズニー映画中心に好きなものだけ勝手に語るつまらないブログです。Dヲタだった頃の記事は思い出として残してます。



はぃどぅもぉ。



さて、今回は2週目のディズニーアニメーション映画史時代は正にディズニー長編アニメーション黎明期全てが始まり動き出した時代です。


史上初の長編カラーアニメーション「白雪姫」空前の大ヒットを記録したディズニーでしたが、その後の超大作「ピノキオ」「ファンタジア」等の収益的失敗、さらに第二次世界大戦の過激化もありその後は苦境を強いられることになりました。



「ダンボ」から始まった低予算作品継続するしかない状況だったディズニーは国務省から依頼されたプロバガンダ映画2作品を公開し、これが収益面でも評価面でも成功を納めます。


倒産の危機は免れたディズニーでしたが、主要スタッフの徴兵による欠損、さらのその上でプロバガンダ作品人員と時間が割かれてしまう等、思うような映画製作が行えない歯痒い状況終戦後も続くことになりました。


状況を打破するため長編大作「シンデレラ」の制作に入りますが、完成までの資金集めと時間稼ぎの為にオムニバスパッケージ長編はいましばらく継続


前作「ファン・アンド・ファンシー・フリー」で温めていた長編用2作のアイデアを一気に使用してしまったスタジオは前々作「メイク・マイン・ミュージック」同様の方法で再び音楽をベースとした短編アンソロジーを発表します。




(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)



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メロディ・タイム 

(原題:Melody Time)

1948年
監督
クライド・ジェロニミ
ウィルフレッド・ジャクソン
ハミルトン・ラスク
ジャック・キニー


データ

ウォルトディズニーアニメーションスタジオ10作目の長編アニメーション。


第二次世界大戦影響が色濃く残る1948年に公開されました。



「メイク・マイン・ミュージック」実質的な続編ポップ版ファンタジアとも言われている作品。

音楽をベースとした7つの短編が文字通りオムニバスで収録されています。


全体制作を指揮したのは黎明期ディズニーを引っ張った名プロデューサーのベン・シャープスティーン

監督はクライド・ジェロニミウィルフレッド・ジャクソンハミルトン・ラスクジャック・キニーの四人。


この時期のオムニバス作品は実に様々なディズニースタッフがアイデアからストーリー、アニメーション、構成まで少しずつ携わり形作られているのがとても特徴的であり、一本の映画の中に実に沢山の異なった趣向や傾向が見られるのが面白い所です。


音楽も同様にエリオット・ダニエルポール・スミスケン・ダービーを筆頭に、ディズニー内外の様々なジャンルの才能が集まって作られています。


絵筆によるペイントが自在に躍るプレショーを縦軸としたオムニバスで、音楽を主軸においたキャラクターカートゥーン、偉人伝、イメージアニメーション等様々な趣向の7つのエピソードが展開されていきます。

原作はそれぞれ絵本ポエム伝記など様々で、原作を持たないオリジナル作品も多数。
又「ラテン・アメリカの旅」「三人の騎士」続編にあたる短編エピソードも収録されていて、ドナルド・ダックホセ・キャリオカが出演しています。

本作はキャラクターに台詞がないエピソードが多く、全体ナレーターとして人気歌手のバディ・クラークが出演。日本語は田中秀幸さん。

歌や語り部としてアンドリュース・シスターズデニス・デイ(日本語版・竹本敏彰さん)等の著名人も出演しています。

さらに実写パートにはロイ・ロジャース「南部の唄」「ファン・アンド・ファンシー・フリー」ルアナ・パットン、さらに初代ピーター・パン声優であり31歳で若き死を遂げる事になるボビー・ドリスコール

「サンバは楽し」でドナルド達と共演する女性をエセル・スミスが務めました。



ディズニーの連続オムニバスシリーズもこれで5作目。流石に大衆も痺れを切らしてきていたのは否めない状況であり、収益面では前作までのオムニバスよりも1段階劣る形となってしまいました。

評価面でもその内容以上に【そろそろちゃんとした長編作品を作るべきだ】【あの白雪姫やピノキオを作ったスタジオと思えない】等現状のディズニーの制作姿勢に対する不満の声が高まり、あまり芳しい評価を得た作品とは言えません。

ただ、この作品も又各短編がそれぞれ単独での再リリース等が行われ、その中の数本は【ディズニーの最も優れた短編の一つ】といった非常に高い評価を獲得しています。

さらに「メロディ・タイム」という作品自体「堅実で彩り豊かなディズニーのミュージックショー」として2000年を過ぎた辺りから再評価の声が高まり、ソフト化テレビ放送配信化等が行われるようになった事で徐々にその知名度を上げてきています


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あらすじ



絵筆によるペイントが自在に躍るレビューショー「メロディ・タイム」。

彩り豊かな音楽とアニメーションが様々な世界に観客を誘っていく。


・冬の出来事
・クマンバチ・ブギ
・リンゴ作りのジョニー
・小さな引き船
・丘の上の一本の木 
・サンバは楽し
・青い月影


※「リンゴ作りのジョニー」

1800年代初頭のピッツバーグ。

りんご作りに精を出す心の優しい小柄なジョニーという一人の農夫がいた。

彼はある日、開拓者達が西部を目指し旅する様子を目撃する。

開拓者に憧れるジョニーだったが武器もなく小柄でりんご作りしか才能が無い自分には到底無理だと諦めていた。

しかしそんな時彼の前に一人の天使が現れる。

それはジョニーの守護天使だった。

彼の口車に触発され、ジョニーはついに西を目指して旅に出る決意をする。

持ちものは、リンゴの種と鍋の帽子、そして聖書というたった3つのみだった…


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感想



個人的には結構好きなんですよね。

前作メイク・マイン・ミュージックと同様ほとんど縦軸の無い無造作な短編作品の羅列ではあるんですが、肝心の各短編のクオリティが前作と比べて格段に良くなっています

どれもそれぞれに違った質感こだわりを感じられる上質な7本のミュージックエピソード

音楽キャッチーさとポップさがしっかり強化されていて耳に残るものが多いですし、ストーリープロット演出も各々が各々の方法でちゃんと引っかかるフックを作っていて、ワリと引き込まれちゃいます。

アニメーションのタッチ画風もそれぞれ全く違うのに、なぜか全てディズニーらしいと感じれてしまう不思議

メイク・マイン・ミュージックの時は売れ残りの寄せ集め感があったんですけど、今作に関してはディズニーの当時最新の引き出しを少しずつ全て魅せてもらってるような、そういうポジティブな感触があります。

繋ぎのシークエンスも全く無いわけではなく、ちゃんと一つのレビューショーのような形式で一応繋いでくれています。

個人的にこの繋ぎのシークエンス雰囲気やセンスも好きなんですよね。

各エピソード、主要となるキャラクター達がほとんど台詞を喋らず、極力歌で全てを伝えようとしてるのも統一されたこだわりを感じました。


同じように言われてるメイク・マイン〜の方には真っ向から異論を唱えますが、この「メロディ・タイム」に関してはまさしく【ポップ版ファンタジア】と名乗っても全く問題ない仕上がりだと思いますね。


こだわりが光る7つのエピソード




「冬の出来事」

名前の通りとある恋人のひとふゆの出来事音楽とパントマイムだけで描いた作品。著名な女優兼歌手のフランシス・ラングフォードによる歌い語りです。
コミカルさと写実性中間をいく非常に雰囲気のある作画が特徴的で、人間の真似をするウサギカップルやラストの写真立ての下りなど、小ネタ的ユーモアセンスも素晴らしいです。
単独で何度か再リリースされていて、のちのちちょっとだけ有名になった短編作品です。


「小さな引き船」

ディズニー短編ではお馴染みの【働く乗り物】シリーズ
安定の子供向けカートゥーンで安心して観れますが主人公の子供ならではの身勝手さと父親の成り行きが途中までとっても不憫だったり、白雪姫よろしく途中の演出がちょっとホラーっぽかったりディズニー的なエッセンスもたっぷりです。
これもセリフ無しのアンドリュース・シスターズによる歌い語り。圧巻のハーモニーが耳にこびりつきます。


「リンゴ作りのジョニー」

個人的に今作で一番好きなエピソード。
アップル社の社名の由来とも言われている伝説の開拓者ジョニー・アップルシードの人生をディズニーらしいコミカルな切り口で魅せてくれます。
作画、特に背景画とか素晴らしいです。
音楽になります。
これ、もうちょっと肉付けしたら立派な長編作品になったんじゃないかなと思うくらい出来が良いです。
アップルシードの伝説って、ディズニーの長編作品にピッタリな題材だと思うんですよね。ただこのテーマを描くにはちょっと尺が短すぎた気がします。ジョニーが行った偉業をもうちょっと長尺で丁寧に描いてほしかったなってのが本音ですね。
台詞はありますがデニス・デイによる独り語りです。

こちらも昨今ではほんの少しだけ知名度の上がり気味な短編作品の一つですね。

「青い月影」

伝説のカウボーイ、ペコス・ビルと恋人のスルーフット・スー悲しい(間抜けな)物語

実写パートもあり、ファン・アンド・ファンシー・フリーに続いてルアナ・パットン、さらに不遇な未来を辿る初代ピーター・パンのボビー・ドリスコールも登場しています。

東京ディズニーランドではお肉やハムがおいしいお洒落なショーレストランを商っているペコス・ビルとスルーフット・スーですが、この作品ではまぁ間抜けで悲しい最後を遂げています。

ブラックコメディとしてはかなり良く出来ていますが、見たあとには例のごとく教訓もへったくれもなにも残りませんw

最後まで見終えてはじめて、意味深な面持ち神妙に物語を語ってたロイ・ロジャース達めちゃめちゃ笑えるという。
本作最後のエピソードなんですが、前作「メイク・マイン・ミュージック」同様最後は悲劇で終わるんですよね。
まぁこちらは悲喜劇ですけどw
何となく次作の「イカボードとトード氏」通ずるものを感じる1本です。


「サンバは楽し」

これは「ラテン・アメリカの旅」「三人の騎士」続編にあたる短編で、ドナルドホセ・キャリオカアラクワンが再登場しています。
相変わらず実写とアニメーション融合させた陽気な実験映像です。
ただ前二作と比べて、演出映像表現は確実にクオリティアップしていてこの辺は流石だなと思いましたね。
一般向けのファンサービスのような側面も少なからずあったと思います。


「クマンバチ・ブギ」「丘の上の一本の木」ファンタジアの精神を色濃く受け継ぐイメージビデオのような映像作品。

この辺はもう酒でも飲みながら気軽にのんびり流し見するにはぴったりなセクションですね。

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まとめ





とまぁそれぞれ個性的ハイクオリティな短編が並んでいますが、やはり多少なりともファンタジアの流れを組んでいるのでちょっと子供には(場合によっては大人でも)退屈かなって部分は要所要所であります。

ただその配置全体の構成はしっかり考えられてはいて、総じて全体バランスはとても良い塩梅なんですよね。

重たい話もほとんど無くライトなタッチの作が多いので、それこそ1枚の音楽アルバムを聴くよう気軽に見れるのも良いですね。

何よりやっぱりそれぞれの短編作品に惰性がほとんど見られなくて細部までしっかりと作り込まれているのが他のオムニバスとは違う部分です。

如何にもボツネタって感じだったメイク・マイン・ミュージックとは違って「短編にしちゃったのがちょっともったいないな。」と思うエピソードも数作あるくらいでしたから。

もちろん以後に作られる名だたる名作達とはまたベクトルの違う作品であることは間違いないですが、観たあとに何も残らずただ彩り豊かな音楽とアニメーションが気持ちを少しだけ楽しくしてくれる、そういう面ではある意味でディズニーの真骨頂と言っても良い作品の一つだと思いますね。

やっぱりこういう作品にはそれにしかない良さっていうのがちゃんとあって、それはそれで個人的にホントに好きなんですよね。


改めてこの時期の作品群を見てると、今のディズニーには無い良さ今のアニメーション映画には無い良さっていうのを沢山感じることができる気がしますね。



てゆうか何度か言ってますが、、
そろそろホントに一回思い切ってまたオムニバス長編作ってみるってのは……どうでしょうかね?ディズニーさんw





「メロディ・タイム」は現在ディズニープラスで配信中です♪




はい。


というわけで今回はこの辺で!



今回も長文駄文にお付き合い頂きありがとうございました♪



また次回。



しーゆーねくすとたぁいむー。







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