猫木葵 さま

 

プロムナード、クラッシュ   4完 →からの

                    勝手に続き妄想

 

副題?(*´艸`)

 

、「キョコの公開告白?公開処刑か?」

 

 

え~とですね、「此処で終わりなの~~。続き書かせて~~」とのたまったあげく、勝手に続き妄想的に書かせて頂きました。のが、このブツです!
ご本人様は「此処(4話目)が書きたかったの」だそうですが、
私にはイヤーーーーーー!となりまして、ご許可頂きまして書かせて頂きましたが、あの…猫木さん家のご本家とは別物ですからね、いつもの如く(^_^;)
私的には欲しい甘みをプラスして、長~~~くしております。

 

 

[プロムナード・クラッシュ]4 猫木葵 さまの

           勝手に続き妄想!

 

副題?(*´艸`)
【キョコの公開告白?

       それとも公開処刑?(*´艸`)】

 

   では大丈夫な方?どうぞ?いるのか?(^_^;)

 


 敦賀さんの目に映る自分なんて、ただのピンクお化けのバカな女でしかない。まだ見慣れているだろうから、他の人みたいに異星人みたいな顔になっていないだけ。
 だから敦賀さんが、自分が招いたバカ女を恥ずかしいと思って真っ赤になっていても、そんなのは私には想定内!
 敦賀さんには申し訳ないけど、私には敦賀さんが思いを告げたい人を見て、本当の失恋をして……それを目に焼き付けたい…のに……。

 

 そして、敦賀さんへの告白の後、敦賀さんの望むラブミー部の卒業をして、敦賀さんの…それでも敦賀さんが好きな人を……告白する人を、敦賀さんが好きだから、敦賀さんが愛する人を見なきゃいけないのに……。
 そうやってハッキリと失恋したら、敦賀さんはその人と幸せになるけど、私は失恋しながら呪いながら地獄に落ちていけばいいのに……。
 そう思っていたら…立っている力が抜けて……膝から崩れ落ちて、床に座り込んでしまった。
 思い切り叫んだら…もう力なんか入らなくなっていたぐらい、凄く気を張っていたんだって分かった。
 一世一代の…ただただ…敦賀さんへの本当の恋の告白だもん…。
 だから床に座り込んだら、全ての力が抜けたせい?
 ……目に映るモノがぼやけて…涙腺も壊れちゃった…?
 さっきまでキレイに見えた盛大なパーティーが、何も見えない。

 

「ぐず…ふん………ぐず……ぐず……」

 

 声なんか出ないのに、出せる言葉なんかないのに、せめて大声で泣くのだけはご迷惑だからしたくないのに、涙と一緒に鼻水まで出て来て…面倒くさい。
 それでもぐちゃぐちゃな顔でも、ちゃんと敦賀さんに失恋しなくちゃ……。敦賀さんが幸せに見つめる人を見て、失恋しないと……ちゃんと失恋しないと…敦賀さんを諦めきれない…。

 

 ……あ…うんん……違う……。

 

 敦賀さんが幸せに見つめる人を知って、私…敦賀さんの幸せな顔を見たいんだ。敦賀さんが幸せなら、敦賀さんを諦めきれなくても…敦賀さんをずっと好きで、大好きで、敦賀さんが見つめる人を呪うような気持ちになっても、私の心がずっと一生痛くても……敦賀さんの笑顔さえあればいいんだ……。

 

 敦賀さんの笑顔が……あればいいの……。
 私を見て浮かべてくれる笑顔でなくても、敦賀さんの幸せな笑顔なら……。
 ……でもそれって……強がり…だよね……
 地獄に落ちたら…笑っても、泣いてなんかもいられないもん……。
 パーティーでの大声での告白なんて、失恋の告白なんて恥ッ晒しもいいところだもん。
 叫ぶように敦賀さんに告白して、折角の敦賀さんのお祝いの席に、ど派手でしか無いピンクツナギなんて、他の出席者の人達は、ドレスコードのオシャレな姿なのに……。

 

 ホントは…違う……。
 ホントは…敦賀さんが……思いを伝えたい人の姿を見たい訳じゃ無い。敦賀さんが好き人の姿なんて…見たいなんて思わない!
見たくなんか無いの! 敦賀さんが愛しい瞳で見る人なんか……

 

 でも、目の前はもう殆ど見えない…。調度いい…。
 周り中のステキなドレスアップした女性の服も、
 エスコートするタキシードの男性の服も、
 ハッキリ見えるモノなんて無くなって、
 私だけがピンクツナギのピエロで踊ってるのが分かってる…。

 

 こんな状態なのに、敦賀さんの晴れの場なのに、ぐちゃぐちゃな顔で泣いているのは私だけで、それでも敦賀さんから離れる為には、ラブミー部も卒業しなきゃいけないのに、それでも胸の中は敦賀さんが好きだって気持ちで一杯で、あの…社長さんの前で真っ赤に目を泣き腫らした時と…何も変わってない。
 敦賀さんが誰を好きでも、敦賀さんを好きで、好きで、大好きで…地獄に持っていく気持ちも……変わるどころかもっと大きくなってるのに、敦賀さんの気持ちをお祝いなんて出来るの…?
 敦賀さんを忘れるなんて……出来るはずないのに…?

 


 ぺたんと床に座っていたら、コツコツと響くキレイな足音が近付いてくるのが分かった。
 それは…背の高い誰かの足音で…。
 ……違う……誰だかなんて…、ぼやけていたって、日本人離れした背丈に、肩幅、足の長さ、歩幅だって……私の知っているのはたった1人の人しかいない。
 モデル立ちのその足は、片方は前を向いて、もう一方は45度ぐらいの斜めを向いている。

 

「ふぅ~……最上さん…」
 その言葉と共に、背の高い…顔がぼやけても誰か分かる男性が、右膝を付いて、私の目の前で腰を落として、右手を出しているのがなんとか分かった。
「君って言う人は……そのね……はぁ~~~」
 溜息を吐きながら、敦賀さんの顔がまだ赤い気がするけど、呆れてるんだろう。
 こんなバカな娘、恥ずかしいわよね?
 はっきり見えなくても敦賀さんのことなら想像つくもん。
 赤い顔を見られるのは恥ずかしそうに、大きくて優しい片手で顔を少し覆って、「このバカな娘は何を叫んでるの?」って顔で私を見てるのよね?

 

「こんなバカで、バカで…」
 ご免なさい。すみませんと謝ろうとしたら…。
「あ~~ごめん。君に先を越されるとは思わなかった」
「はっ? わた…しが……先を…超す…?」

 

「告白を君に…先にされてしまって焦ったけど、俺がこの場所で思いを告白したかったのは、最上キョーコさん。君だからね」
「…えっ…?」
「だから俺は不意打ちで、赤面するという失態もしてしまった。君にパーティーに着て欲しいと思った真っ白な羽根の…君の純真な気持ちのようなドレスを贈ったけど、それが何故か君のラブミー部のピンクツナギで驚いて、俺からのつもりの告白も先にされてしまって、俺にとっては全部手詰まりのこの状態で、敦賀蓮としてはとっても情けない状態なんだよね? 俺の映画の晴れ舞台でもあったけど、それよりも俺には君の方が大切で、君に告白して、君の手をやっと取れると思ったのに……君が先にしてくれるというのは、男としては情けなくないかな?」

 

「………はっ?」
「だから…そんな宣戦布告の為に、君はそのピンクツナギを着てきたの? ラブミー部の衣装だね。仕事として…じゃないよね?」
 キョーコは思い切り首を振った。
「君は此処に…戦いに来た? 俺が招いた場所に、俺に告白という戦いを挑みに来た? もしかして…俺が受け取らないと思った気持ちを、ぶつけに来たのかな?」
「そ…です……」
 キョーコは蓮の言葉に、真っ直ぐな瞳に…顔を上げられないまま何度も首を振った。

 

「でも…ぶつける為だけじゃなく、気持ちを伝えて、地獄に堕ちる為の服です。…でも…地獄に堕ちていい程に、敦賀さんが好きなのに、…地獄に堕ちたくないって気付きました…」

 

 キョーコの強い思いの中に落とし穴があった筈なのに、急に不安になった顔が可愛くて、蓮は目だけ少し笑いながら聞いてみた。

 

「どうして?」
「だって…神の寵児である敦賀さんなら、地獄に堕ちたら…その姿を見れなくなるじゃないですか? 眩しくて地獄の底からなんて…敦賀さんを見る事なんて出来ない。近付くことが出来なくても…でもせめて……その姿を見ていたい………。せめて…その姿だけでも見ていたいというのも、我が儘ですか?」

 

 キョーコが心の救いにしたいと涙に濡れる顔は愛しい思いが溢れて、同時に蓮の心の方が痛みを覚えてキョーコを強く抱き締めた。
 キョーコは驚くが、身体中から力抜けて…優しい匂いのする其処から動けない。
 蓮はそれだけの思いを向けてくれる存在を、愛する少女を、誰が失いたいものか…。
 そして…こんな孤独な心の少女を、本気で幸せにしたい。

 

「そんな寂しいこと…誰が君に許したの? 俺はさせないよ。君はずっと俺の傍に居るんだからね。君を地獄に行かせないから…」
「いえ…。だって好きな人が愛する人を…呪うような気持ちでなんて、地獄に行く程の気持ちだから…地獄に堕ちるしかないんです……」
「だったら俺も幸せになれないんだね」
 きっぱりとした蓮の言葉に、キョーコは何故?と言う顔をした。
「俺は君が幸せになれないなら、地獄も同じだよ。君を幸せにしないで、一緒に幸せになれないで…俺は幸せになんかなれないよ」

 

「どういう事ですか? だって敦賀さんは好きな方に思いを伝えて、幸せ…になると、告白すると…」
 そう思うだけでキョーコは胸が痛み涙が溢れてきた。

 

「だから、ここまで言っても君には通訳が必要なの?」
「通訳?」
「君にストレートに言葉が通じてないからだよ! 俺は君との幸せしか望んでない。君が…君だけが俺が思いを伝えたい人なんだよ!」

 

 そう言葉にすれば、蓮は思いの丈を込めてキョーコの唇に…今まで待ち続けた時間を重ねて、目を見開いて固まったキョーコの心を溶かすように離れない長い口付けは、キョーコが我に返るまで目を見開いたままだった…。
 それでもキョーコも気付いて真っ赤になると、蓮を離そうとするが男の力に敵うはずもない。蓮の目は薄らと開いて愛おしそうにキョーコを見るが、キョーコには恥ずかしさにその目を見つめることも出来ずに目を逸らし続けた。そして僅かに動ける腕で蓮の胸を叩くが、それに応えてそっと開く蓮の目は、もうキョーコを離さないと決意していた。

 

「敦賀さん! こ、こ、こんな場所で…こんな…////」
 やっと唇を離されると、キョーコは猛抗議した。
「こんな場所だからいいんだよ。誰の目にも分かるだろ? 俺のたった1人の相手は君だけだと、周り中の人に公言するにはいい場所だ。これで君も勘違いしようがないし、明日のニュースにもしてくれるから、見ていない人も知ってくれる。君との…今までの時間も大切にするけど、これからの君と過ごす時間ももっと大切にして生きていきたい。君に知ってもらいたいこともあるけど、君とだから大切にしてきたことも聞いて欲しい。俺とずっと一緒にいて…。永遠を…久遠の時を共に誓って欲しい」

 

「何を言ってるんですか! 敦賀さんの思い人に勘違いをされたら!」
「だからそれ君なんだ! いい加減に分かってくれない?」
「えっ…? わ、わたし…? え、え、えーーーーー!」
「やっと脳みそに到達したかな?」 

 

 相変わらずのキョーコの思考回路に、蓮は大きく溜息を吐いた。

 

「……もう…もう…訳が分からないです……。こんな場所で敦賀さんが…なに……////」

 

 キョーコは首を振りながら、蓮の強烈すぎる口付けで真っ赤になったまま、蓮の言葉がその眼差しの強さで嘘ではないと信じ切れないでいても、自分に都合良すぎる事ばかりで、本当の事だと信じ切れないでいた。

 

「君が本当に大好きで、愛していると言える程に君をずっと見つめてきたんだ。君は自分が幸せになれないと…なるはずないと逃げてるの? 君は芸能界で努力して、女優京子としても本物の輝きを出してるんだ。君の中の本物の輝きでもっと自信を持って、自分は幸せになれるのだと、幸せになっていい存在だって気付いてみて…」
「私が…幸せになれる……?」
「俺だって誰かと幸せになりたいと思っていた訳じゃない。でも君に恋して、君をずっと見つめてきて、君と幸せになりたいと思ったんだ。俺の気持ちを信じて受け取ってくれないか? 俺には君しかいないんだ。君だけを抱き締めていきたいんだ!」

 

 それでもまだキョーコの目は何処か上の空のようになってしまう。

 

「それにね…君の気持ちを欲しいと思わない男が、何故君に…君にだけ着て欲しいドレスを贈るというのかな?」
「はっ?」
「君のドレスが今ないのなら無理だけど、君の言うドレスの意味を考えると、今着ているピンクツナギ…俺が脱がしてもいいんだね?」
「…はっ!?」
「脱がしたくて贈ったというなら、君への真っ白なドレスの方だったんだけど?」
「………ふぇ?」
「君に贈ったドレスは、君の中の天使の羽のような純粋さを形にしたつもりだった。一度傷付いて、怖くて怖くて膝を抱えた君が、もう一度…何にも汚れなく真っ白な真綿の中で傷を癒やして、やっと前に進み出そうとして、広げた天使の羽だ。俺が触れていい純白な気持ちか分からない。でも、君もラブミー部を卒業したい気持ちになったなら、俺も君へと手を伸ばしたいんだ。君が欲しいから、君を愛しているから、俺が贈ったドレスで、俺のモノだと周り中に公言したかったんだ」

 

「………えっ? だって、私には…何もしないって…」
 キョーコにとっては、一番の鎧の言葉。
 何もしない。何もする価値のない女だから、後輩から女性へと変わることのない、女ではない存在。
「何もしない? いつ言った言葉? いつの事?」
「ダークムーンの…打ち上げで…純情さんには何もしないって…」
「あぁ……そんな前か。ふうっ…そう思える程…君との時間も経ったんだね…。…まぁ…それに、あの時はそう言う以外に、言える訳無いだろ?」
「言える訳…無い? 何故?」
「だって、君を着飾らせた男を追い払ったばかりで、【俺も同じ男だ】って言ったら、俺は君の先輩の顔さえ出来なくなる。君の隣にいられる資格を、ひとつ失うことになる」

 

「先輩の顔? ……資格?……」
「俺は……君の隣にいる資格を、君が安心して傍に居られる場所になりたくて、先輩の顔でいたかった。それも他の奴には追い払えるだけ追い払って、俺だけはいつでも安心だという顔で…君との距離を保ちたくて…必死だった。君の隣にいられる場所を、ひとつでも失うことが…怖いぐらいに、君との距離を離してしまうことが怖かったんだ」
「何故…ですか?」

 

「君が好きだから、ただそれだけだ。君に嫌われたくないから」
「ウソ…」
「何故ウソだと? ここ最近でも、君に食事という理由を付けて、距離も、時間も、君と一緒にいられる時間が欲しかった。食事は…君との食事は全てを含めてだけどね。君を送る最後の時間までも…。ホントに……ただ君と一緒にいたかったんだ。わかってくれない?」
「敦賀さんが……私と…?」

 


「それに……俺のプレゼントしたドレスは? 君に着て欲しかった真っ白な羽根みたいなドレス……。君に凄く似合うと思って、見付けた時に直ぐに君用に買ったんだけどな…」
 顔を上げて敦賀さんの顔を見ると、本当に残念そうに溜息を吐いていて、今のラブミーツナギの姿が凄く恥ずかしく見えた。

 

「と、とんでもない! あんな真っ白なドレスなんて…私になんて、キレイ過ぎて似合いません! 私みたいな地獄に落ちるような女には、キレイ過ぎます! それに…あんなステキなドレスを女性に贈るには…私みたいな…む、胸…も色気もない…女に贈るのもどうかと思われます」
「女性に贈るドレスに、胸と色気? ……ふん…。俺は君には贈りたいと思ったけど、胸とか色気とかは個人の好みじゃないの? ドレスを贈るのに必要な条件なの?」

 

「……だ…だって! そ…そんなモノは……ぬ…脱がす意味の…ある人に……贈って下さい! 私なんかでは……」
 中に…胸も…何も無いし…何より……敦賀さんの意中の人じゃないじゃないですか?

 

 言っている内容にも、頭で言葉にしている事も破廉恥この上ないことが混じっていることに気付いてキョーコは真っ赤になった。

 

 敦賀さんに抱き締めてもらって、最高の微笑みを向けてもらえて、敦賀さんが……一番大切にしたい人に、一番のドレスを贈って、2人で最高の笑顔になればいいのに……。
 どうして私にドレスなんか贈るんですか?
 それも…あんなにふわふわの…こんな告白をして、地獄で敦賀さんの幸せを呪うように生きる私に…?

 

「あの…ね、今の君の論法から言うと、俺は君の服を脱がす権利があるって事になるんだけど、此処で脱がしてもいいの?」

 

「は……はぃ?」
 キョーコには意味が分からなくて、初めて蓮を正面から見上げた。
 蓮がマンディのスーツに身を包み、その膝を折ってまで自分に手を差し伸べてくれていたのが分かるが、そんな姿で美しいどころか派手で仕方がないこのピンクツナギを脱がす権利があると聞こえ、しかもこんな人前で脱がすなんて……。

 

「そ、そ、そんなこと破廉恥すぎます!」
「うん。此処ではそれが正解だね。今は俺の贈ったドレスじゃないし、でも君の言ったことはそういう事だよね? 事実、俺は君しか脱がしたい女性はいないしね」
「………はへ?」
「君は頭がいいから、もし脱がしたら…その先のことも予想出来るよね? いくら君だって、男のすることぐらい…」
「は、破廉恥ですぅ~~~////」
「俺が贈ったドレスを着たら、俺は君の全てに触れてもいいという権利をもらえると言うことになるかな?」
 ニッコリと似非紳士の笑みも顔を出し、キョーコは言葉を失った。
「…………////」
「君に贈るドレスは脱がしてもよくて、君のその…素肌の胸にも触れてもいいって事になるようなんだけど、違うかな?」
 蛇に睨まれた蛙なのか、マングースに睨まれた蛇なのか、キョーコはピキリと固まってしまった。震えるリスなんて可愛いものではない状況……。

 


「あの社長?」
 社が本来の蓮のいるべきサイドのテーブルで、蓮とキョーコの遣り取りを聞きながら、社長にどう動くのがいいのか伺いを立てた。
「何だ。社」
「いつまであの状態をやらせておくんですか? キョーコちゃんの公開処刑になってませんか?」
 このパーティーの主役である蓮には、周りもその会話を楽しめるようにとマイクも付けらている為、性能のいいマイクは蓮だけでなくキョーコの声もしっかりと拾っていた。

 

「蓮の気が済むまでやらせてやれ。待たせて待たせて、やっと卒業だ。自分の状況を、最上君にも分からせてやればいいいだろ?」

 

 社としても蓮の気持ちも分からないではないが、社にとってはキョーコも可愛い妹だ。
 ここまで行くと俺にはキョーコちゃんが可哀想すぎる。当人達は2人で話してるつもりが、周りに丸聞こえって、内緒話のつもりだったら恥ずかしいよな…。でも蓮は知ってるんだからいい性格だなアイツ。

 

 蓮が深く溜息を吐きながら、キョーコの涙を拭いて真っ直ぐにその目を見つめた。

 

「俺が今…見つめているのは、最上キョーコという…俺にとってのたった1人の愛する女性だ。今日の姿は…俺としては意表を突いてくれたけどね。真っ白な羽の妖精じゃ無くて…君にとっての戦闘服とは、驚いた。俺は見慣れてるけど、流石に目に痛いかな? でも目立ってなかなかいいかもしれないね。あのドレスは…明日の会見の時にでも着てもらうことにしようか?」
「明日の会見?」
「俺の婚約者としての会見」
「こっ婚約…!?」
「明日は、ミス・ウッズに頼んであるから…あのドレスでお願いね」
「………はぁ…?」
「今夜はペーティーでの内々でもちゃんとお披露目して、明日は婚約会見。君が逃げられないように、皆にお披露目しないとね」

 


「おい、蓮。そろそろあっつい公開告白も、終わりでいいんじゃないのか?」
 2人のマネージャーはニヤニヤとした笑いを浮かべて近付いてきた。
「公開告白?」と、キョーコには意味が分からない。
「今日の主役だからね。俺にはインカム付けられてるんだ」
 蓮のオシャレなスーツにも、内側に目立たないように小さなマイクが付けられていた。
「イ、インカム~~!! ……ま、まさか……////」
「そういう事。今までの会話は、全部…聞かれてるって事」
 はいぃ~~…既にキョーコの口元は押さえられ、声には出せないが目が回っている状態だ。

 

 キョーコは手で押さえた中で、口をパクパクと開け閉じはするが、声などは出る筈もなく、ドピンクのツナギよりも目立つ真っ赤な顔で蓮を驚きの目で見ていた。

 

「な、な、な、何て事をするんですか!? 敦賀さんは…」
「君の本音を、俺の本音を、知ってもらいたかったんだよ。最初の…君の告白状態だと、悪目立ちしてしまえば、君だけ不埒な悪者にもなりかねない」
「不埒な…悪者?」

 

「簡単に言えば、売名行為に走った行動に見られる。君が売れてない芸能人ならそういう見方だって出来るということ」
「そ、そんな……」
「まあ、俺と君の仲の良さや、君も女優としても売れてるから、消去法としては薄いだろうけど、パーティーの大きさを考えれば意地悪にも考えられる。意地悪く考えれば『後輩として思い続けていたのに、フラれそうで告白しました』とかね。それも君が告白だけして直ぐに出て行ってしまったら、余計に可愛そうな後輩になるよ」
「そんな事…思っても、みませんでした……」
「君を可哀想なヒロインにも出来るし、意地悪で姑息な後輩にも出来る。人に見られる仕事をするなら、それぐらい分かった方がいいね」
 キョーコは蓮の言葉に、自分では考えてもいない裏側を見た気がした。
「でも……社長の視線が俺を見ているように、俺は君をそんな立場にするつもりなんかはないよ。勿論、君を好きだからだけどね」

 

 蓮はキョーコの両腕を取って立たせながら言った。
「だから、君を見世物になんかするつもりはないからね」
「見世物?」
「俺のパーティーに紛れ込んだ変な後輩じゃなくて、俺の大切な人だと宣言するから。このマイクでもう伝わってるけどね。それも別の意味で見世物になるのかな? でも、俺の大切女性だから、ちゃんと俺が守るけどね」
「……敦賀…さん」
「君は俺の好きな人で、俺から告白するつもりでいましたが、彼女に先に告白されてしまった情けない男です…ってね」
「そ、そんな~~」
 蓮が苦笑しながら言うと、キョーコはどんな顔をしていいのかわからなくなった。
「君は本当のところ、純粋なんだよ。さっきから聞いてると、呪うとか言ってるけど、自分が地獄に落ちればいいって…自分を貶めてるのは、相手を本当に呪ってないから」
「そんな事は…」
「それこそ芸能界もモデルだって、ライバルの足の引っ張り合いだってある。でも君はそんな事は絶対しない。正々堂々と役を勝ち取り、前に進んできた。そのよく伸びた背筋で堂々と勝ち取る姿は、こんな芸能界ではよくくすんだりしないと思う。だから天使の羽根のようなドレスが、似合うんだよ。わかった?」

 

「君の告白を聞いて、社長も俺を見てニヤニヤし始めて、もうね…どう考えたって社長が企んでる顔だよ。君の卒業と、俺へも幸せになれって顔だ」
「敦賀さんの幸せ?」
「そう。俺も嬉しい誕生祝いの告白にバレンタインで、セットだね」
 蓮は嬉しさにキョーコの頬にキスすると、キョーコがぼふんっと真っ赤になった。
「本当の部分もこのマイクが拾ってくれてる。その部分も…俺も君に伝えたかったこともね。そして、君が単なる目立ちたいが為の行動では無かったことも、何よりも…両思いだってことも此処にいる人には分かることだ。マスコミもいるしね」
「マスコミ……」

 

 キョーコは青ざめてしまった。
 ラブミー部の卒業と、蓮とのハッキリとした決別を頭には入れてきたが、そこまでアレコレは頭に入れていなかった。
 驚きのキョーコに、蓮はまさか…と声を掛けた。

 

「まさか、社長主催の俺の映画のパーティーが、華やかな招待客だけですむ訳無いだろ? 社長もマスコミをしっかり招いてる。そこで君にラブミー部の卒業をさせることになったら、俺が君をほっておく訳ないのも分かってる人だよ」
「社長…さんも…?」
「君が声を上げた時には流石に俺も焦ったけど、直ぐ横にいた社長は満足そうに笑っていたよ…」
「それは…それが私の……ラブミー部の卒業の条件だったから…」
「そうだとしたら…君の卒業の告白を、そのまま俺が…告白だけで終わらす訳は無いことを知っている人だからね…」
「えっ? どうして?」
「俺は君の気持ちまでは知らなかったけど、俺の君への気持ちは知っている人だからね」
「えっ!?」
「つまり、君が俺の前で告白しても、俺が君へと告白しても、答えが同じだと知っていたんだよ。アノ人は…」
「…………」
 蓮の言葉に…キョーコは顔を真っ赤にして恥ずかしくて堪らなくなった。
 最後の…卒業のテストには、答えはたったひとつだったというのに、ひたすらな思い込みで大勢の人の前で叫んで告白してしまったというのは、キョーコにとっては消えてしまいたい程に恥ずかしくて仕方が無かった。

 

「君のホールに響き渡る告白には、流石に素に戻って驚いたけど、君が本気で声を上げていることは俺にだって分かる。君を…俺がこれからもっと俺の思うように染めていっても、君はまた自分の色に染めていく…京子という女優はまだ真っ白で何度でも染まるという意味も…あのドレスには込めたんだよ?」

 

 蓮の言葉に、キョーコは真っ赤な顔のままそっと目線を上げた。
 腕の隙間からやっと目だけを出すような仕草でだが、そんなキョーコに蓮は笑みを浮かべた。

 

「勇気を出して俺に告白してくれてありがとう。本当は俺が先に言いたかったけど、俺も君が本当に好きだから、愛してるから…いつか俺のお嫁さんになって欲しいな。だからまずは…婚約して下さい。キョーコ…」
 そっとキョーコの目元にキスを贈り、また泣き出してしまったキョーコの手を取って、蓮は会場内のサイドテーブル、マイクの場所までキョーコを誘導していった。

 


 そこには蓮を始め、ドレスとモーニング姿の中を、キョーコのピンクツナギが目を引いたが、それも蓮が自らの上着を着せてキョーコを庇うようにしてしまえば、2人の視線の遣り取りが微笑ましい程に初々しい姿で気にならなくなる程だった。
 それに、先程のピンマイクを通して聞こえてしまった遣り取りで、周りにも経緯が伝われば可愛い恋人達の擦れ違いがあったのだと、恋もお手の物だと思った蓮にしては可愛い失敗だと噂話にされていった。

 

 ラブミー部としての最後の姿として、蓮の上着をピンクツナギの上から掛け、そのままエスコートしてマイクの前に立った。

 

「本日の…映画受賞のお祝いをして下さった方々には、少し派手派手しい姿で、派手派手しい告白をしてくれた恋人ではありますが、女優京子をご紹介致します。このピンクツナギは、彼女の苦労の形でもある衣装です。ですが俺の恋人になることで、今日で最後のお披露目となりますので、次に会見をさせて頂く姿が、彼女の本当の心からの姿になることと思います。よろしくお願い致します」

 

 蓮の言葉に、キョーコの涙は溢れて言葉にならない。
「さあ会場の人達に宣言したからね。本物の恋人だよ、キョーコ」
「告白するというのは、ホントに…私だったんですか?」
 キョーコは夢ではないかと確認するように、ハッキリと言葉で尋ねた。
「そうだよ。君しかいないけど? もしかして告白のこと、何処かで聞いたの?」
「あの…偶々…廊下で…」
「それで勘違いでもした? ヤキモチ焼いてくれた?」
「………」

 

 何処か嬉しそうに聞いてくる蓮に、キョーコは視線を合わせないように逃げてみた。

 

「そうか。だから余計にあんな風にムキになってたんだね。それも戦闘服で」
「でも…ホントに……私なんですか? 私で…いいんですか?」
「俺にとっては君しかいないから、次にあの天使のドレスを着た時の俺の役目は……分かってるね?」

 

 少しのイタズラな視線と、愛おしさの混じった蓮の目に見つめられながら、キョーコは頬を染めて蓮の腕に包まれた。

 


「まあいいけどね。俺が先か、君が先か、どちらにしても同じ結果になった訳だしね。俺としては、君に先を越された方が、幾らか悔しいかな…」
「悔しいの…ですか?」
「そうだろ? 男としては女性である君に告白して、君を俺が手に入れたようにして公表したかったのに、君が盛大に告白しては、俺は君に一生尻に敷かれると思われるからね。まあ…君になら一生尻に敷かれるのも悪くないか」

 

「敦賀さんを尻に敷く?」
「そういうこと。それもずっとだよ。一生だよ?」
「そ、そ、そ、そんな滅相もない!」
 キョーコは両手を振って、首も千切れそうな勢いで振ってみる。あり得ないと否定しても、蓮の笑みはキョーコを手にしたことで変わらない。

 

「もう君を手にしたからね、もうどうでもいいよ。でも逃げさせないことも忘れないでね」
「そ、それは…えっ…ふむ!」
 そこで蓮は、驚いているキョーコの唇を、誓いのキスとして塞いでしまう。キョーコは驚きで逃げようと藻掻きはするが、蓮が本気で掴まえれば逃げられるはずもない。

 


 キョーコもなんとか腰掛けたイスで、力の抜けてしまった身体でぼーっとしていると、蓮が近付いてくれば涙で赤くなった恨めしい視線を向けると、蓮は手に入れた宝物に嬉しそうな視線を向けて言った。
「君は変わらない。この世界で…変わらないでいられることは奇跡に近い。それでも何故だと思う?」
 キョーコはわからなくて首を振った。
「君はね…色々言って、念を飛ばしてみたりもするけど、基本がピュアなんだよ。だから、本当に君を汚そうとしても、出来ない、させてもらえない。でも明日は……羽根を俺色に染めさせてね?」

 

 蓮の言葉に、本日何度目になるのか…ぼふぉっとキョーコは真っ赤になって目を回して背もたれに倒れてしまった。
 その意味は…蓮と共に時間を過ごす夜の事だと、明日の羽根のドレスを自由にする権利を蓮は主張した。

 


「しっかし、おまえもなんだなぁ…」
 いつものニヤニヤと…だが優しさの潜む目で2人を見比べた。
 キョーコが蓮のキスで目を回していると、社がそっと壁際のイスで休ませていた。そんなキョーコを見て社長が呟いた。

 

「何がですか?」
「よくも舌が回りやがるな…」
「ボスに言われたくありませんね。その事に関しては」
「俺よりも言うようになったじゃねぇか?」
「本当のことですからね。彼女に関しては、いくら言っても心まで届かない。届いてくれない程に凍り付いた恋心です。真実でなければ届かない。だから何度でも抱き締めて言葉にします。愛していることを……」
「親父にそっくりになりやがったな……」
 海の向こうの愛をこよなく慈しむ親友にそっくりだ。

 

「最上君」
「はい!」
「蓮の性格は君も知っている部分はあるだろうが、敦賀蓮の皮を剥いだ男はこんな奴だからな。覚悟しておけよ」
「それは……敦賀さんなら…いいです。どんな貌をしていても、優しい人だって分かっていますから…」
「では、君の卒業を正式に認めよう。今までとそれ程には変わらんが、蓮との交際、ついでに結婚までもバックアップする。アイツは決めたことは守る。君を幸せにするだろうからな」
「敦賀さんとの…交際についてもですか?」
 キョーコが驚くが、ローリィーは今更蓮の思いを説明するのも面倒になった。

 

「蓮の奴が、有言実行をしない訳はないだろう! その手助けだけだ。社という優秀なマネージャーも、お前達の為ならいくらでも動くだろう。蓮が手に入れやがった幸せへの道を、しっかり自分達で歩んでいけ!」

 


 叩いて、叩いて、石橋さえも壊してきたキョーコの幸せへの道を、キョーコはこれから共に歩く為に差し出してきた手を、蓮と共に歩けることに、また夢ではないかと頬を抓り「イタイ!」と叫んだ姿に蓮が笑みを見せた。


「まだやってるの? そろそろ夢じゃないって、わかったかな? 俺だけのキョーコ…一緒に2人で歩いて行こうね。明日のドレスも楽しみだね♡」
 

 

 

♡FIN♡

 

言い訳的な【あとがき】っぽいモノ

 

猫木さま。ありがとうございました。

自分的には面白かったというか、

書いてて発見とかもありました。

ホントに、勝手に妄想をさせて頂きましたです!!

あースッキリしたかな?オイ?(^▽^;)

 

さて…皆様的にはどうなんでしょうね?(ドキドキ)

壊れた幸せへの道を、

蓮様と二人で頑張って作りながら

歩いていってもらえるといいな…。

 

書きながら、

「これって穿った見方するとアレだから、

インカム入りの方が、

キョコ的にはウギャーでもいいかも」が、

途中から『公開処刑か?』となりました。

 

その一方、

「パーティーで何いちゃついてんねん、この二人!」

一生いちゃついててもらいましょう。

 

 

 

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