オンライン脱塩カートリッジを用いたLC/MS:ピーク形状から未分離成分の情報が得られた例 | 日本一タフな質量分析屋のブログ

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日本で唯一、質量分析に関するコンサルタント、髙橋 豊のブログです。エムエス・ソリューションズ株式会社と株式会社プレッパーズの代表取締役を務めます。質量分析に関する事、趣味の事など、日々考えていることや感じたことを綴っています。

LC/MS用オンライン脱塩カートリッジ(ソルナックカートリッジ)を用いて、お客様から依頼された試料の分析(医薬品の不純物分析)を行った時のことです。日本薬局方で指定された分析条件(50 mMリン酸塩/メタノール、UV検出波長215 nm)を用いました。移動相流量は0.8 mL/minでした。ソルナックカートリッジのサイズは内径4.6 mm、長さ50 mm。リン酸塩濃度が高いために、図1のようにソルナックカートリッジを配置して、UVクロマトグラムの目的ピークの前1分間&後ろ3分間のみ導入しました。

ソルナックLC-MS_装置構成例

 

移動相流量とソルナックカートリッジのサイズより、UVクロマトグラムからどの位遅れてMSのシグナルが観測されるか判断できるため、その時間を目当てにMSで検出されているイオンを探索しました。

 

得られたマススペクトルに観測されたイオンから、強度が変化しているイオンについて抽出イオンクロマトグラム(EIC)を作成したところ、図2のようになりました。本物のデータは載せられないので、イメージ図です。

ソルナックLCMS_医薬品不純物_データ例

 

UVクロマトグラムのピークからEICピークが遅れて観測されているのは、ソルナックカートリッジの内部容量と、分析種とイオン交換樹脂との相互作用に依ります。また、EICのピーク幅はUVクロマトグラムより若干広がります。ここで注目すべきは、EIC-1EIC-2のピーク形状です。2つのイオンのm/z値により作成したEIC-1, 2のピーク形状は、明らかに異なっていました。UVクロマトグラムの目的ピークは単一成分に見えますが、実際には2成分が未分離状態で混在していて、それらはカートリッジの樹脂とそれぞれ異なる相互作用をしたため、このように異なるピーク形状のEICが観測されたと推測されます。

 

UVクロマトグラムで単一成分に見えてもLC/MSでは複数成分観測される」ケースは多々ありますが、脱塩カートリッジを用いることで、EICピーク形状からそのことが推測できた例でした。

 

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