分析装置のソフトは100%は信用しない方が良いですよ | 日本一タフな質量分析屋のブログ

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日本で唯一、質量分析に関するコンサルタント、髙橋 豊のブログです。エムエス・ソリューションズ株式会社と株式会社プレッパーズの代表取締役を務めます。質量分析に関する事、趣味の事など、日々考えていることや感じたことを綴っています。

先日、分析代行を依頼されているお客様のLC-MS装置を使って分析していた時のこと。

以前から分析している一連の試料なのですが、どうにも以前とは異なるクロマトグラムが得られてきました。

全く同じ試料ではないので、多少クロマトグラムのパターンが異なることは有り得ますが、全く異なることは無い筈でした。

 

原因が解るまでに丸一日費やしてしまったのですが、結果としては、HPLCの移動相条件として設定したグラジエントのタイムプログラムが動作していませんでした。

まだ納品されて1年程度の、かなり新しい装置でしたし、今まで沢山のHPLC(メーカー&機種)を使ってきましたが、このケースは初めてでした。

この装置でも、私が知っている限り、この現象が出たのは初めてでした。

 

下の図は、グラジエントのタイムプログラムの設定および測定中のモニター画面です。左が正常に動作している時の状態、右は今回不具合が起こった時の状態です。違いは分かるでしょうか?

グラジエントのタイムプログラム

 

グラフ中の緑色の塗りつぶし部分は、測定中に経過した時間を示しています。

時間経過に従ってB%が増加する設定なので、タイムプログラムが正常に動作している時は、経過時間の増加に伴って、グラフ中の緑色の塗りつぶし部分が右に動いていくと伴に、グラフ上のB%のバーが上がっていきます。

しかし、不具合が発生した時は、グラフ中の経過時間を示す塗りつぶし部分は右に動いていくので、一見すると動作しているようなのですが、グラフ上のB%は初期値のまま動いていませんでした。

 

この現象が分かった後、装置とPCを再起動して両者を再接続したらその後は正常に動作し、その後もこの不具合は発生していいません。PC画面の写真も撮影しましたが、写真を載せるとメーカーや機種が分かってしまうので、今回はイラストにしてみました。

 

私自身、前職では質量分析計の制御ソフトの開発に少し携わっていたことがあります。分析装置とその制御ソフトは、発売までの開発中に長い時間をかけてテストとデバッグが行われます。しかし、“これで100%問題ない”という状態までもって行くことは不可能です。現場で分析装置を使う人の中には、ソフトを100%信用してしまう人が少なからずいますが、それは危険です。ソフトの動作不良というのは、必ずしもバグではないケースが多いです。装置の使用状況に応じた不具合というものが発生することがあり、それは個々の状況に依って変わるので、メーカーによるテストでは再現しないこともあります。

 

測定は100%装置任せにせず、自分の目で確認できることは確認する。そうすることで、トラブルをいち早く発見することができ、結果として生産性の向上につながると思います。

 

*分析代行:装置はあるが使う人が居ない、あるいは装置のパフォーマンスを発揮できているか自信がない。そのようなお客様の現場に出向いて、私が分析を代行するサービスです。

 

 

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引用元:分析装置のソフトは100%は信用しない方が良いですよ