早稲田大学でのLC/MS技術指導 | 日本一タフな質量分析屋のブログ

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日本で唯一、質量分析に関するコンサルタント、髙橋 豊のブログです。エムエス・ソリューションズ株式会社と株式会社プレッパーズの代表取締役を務めます。質量分析に関する事、趣味の事など、日々考えていることや感じたことを綴っています。

今月も13日に、早稲田大学での月1回のLC/MS技術指導に行ってきました。

 

この技術指導の依頼は、理工学部のある教授から(大学としてではなく)個別に受けているものです。天然物から薬理作用をもつ化合物を探索する研究を行っており、微量で活性をもつ化合物を完全に単離する前の段階で、高分解能LC/MS/MSを用いて、ある程度の構造推定を行っています。

 

その中で、LC/MS/MSを単に分析ツールとして使うだけでなく、装置の構造や原理を理解し、装置の性能に頼りきることなく自分自身でデータの信頼性を担保できるようになって欲しいと言う教授の考え方に共感して、格安で指導を引き受けています。

 

主な指導対象は、今年度は4年生7名中の3名。今の時期は、大学院修士2年(M2)と学部4年(B4)の修論&卒論準備のためのデータ測定が多くなりますが、他の学生の試料を預かってきて測定するだけにならないように、データをしっかり検証できるように、それを学生達がちゃんと意識するように、気を配っています。

そう言う意味では、指導の日は多少装置の調子が悪い方が良い訳です。その原因を考えさせられますから。

 

で、今月は都合良くチョッとしたトラブルがありました。良くありがちな液漏れですね!

 

測定は、東京女子医大と早稲田大学の共同施設(TWins)にあるSciexのQTOF、TripleTOF4600をお借りします。装置のセットアップや測定は、4年生全員既に問題なくこなします。セットアップが終わった頃様子を見に行くと…

 

4年生:いつもよりカラム圧が低いんですよ。

私:そりゃあ、どっか漏れてんじゃねーの?

 

ほどなく、HPLCからエラー音が…

やっぱりリーク(液漏れ)でした。

 

ポンプ、オートサンプラーなどのモジュールが別々になっている装置は、モジュール毎にエラーが出るので、どのモジュールでリークが起こったのかは一目で分かります。

 

4年生はリークセンサーが何処にあるか知らなかったので、場所と、仕組みを簡単に教えて…

 

多くのHPLC装置では、各モジュールの低部、隅の辺りに液を溜めるような小さな窪みがあり、その中にリークセンサーがあります。電気抵抗のような形状で、液に濡れると、通常は絶縁されている二本の電極が導通して電流が流れて、液漏れを検知します。復帰させるには液を拭ってセンサーを乾燥させる必要がありますが、電流が流れるに伴って発熱するので、火傷しないように注意が必要です。ピンセットを使うと良いです。

 

今回は、オートサンプラー内の六方バルブの、カラムへ向かう出口ポートの接続部の高耐圧手締めコネクターが緩んでいました。

液漏れ部分を捜すにも効率良い手順があるので、それも教えました。

 

大きな企業であれば、液クロの1台や2台暫く動かなくても業務に大きな支障はないと思いますが、中小や零細企業で、ギリギリの装置で仕事をしている場合は、一刻も早く装置を復帰させることが、業務の効率化にとって重要です。

 

私が技術指導している学生達には、分析・データ解析等の技術を身に付けること以外にも、HPLCやMSの一寸した修理やメンテナンスはできるようにして社会に送り出したいですね。

 

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エムエス・ソリューションズ株式会社
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引用元:早稲田大学でのLC/MS技術指導