my favorite 外道's(ヒブダイ) | ぽんのあれこれ

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徒然なるままに日暮し、スマホに向かいて心に移り行くよしなしごとを書き連ねます。基本的には忘備録。


気になったらお好きにコメントしていただければと思います。

  ヒブダイ

学名:Scarus ghobban Forsskål

英名:Blue-barred parrotfish


学名のScarusがブダイ科の魚を意味し、Scarus ghobbanでヒブダイ、Forsskålは発見者だと思います。フィンランドの冒険家だそう。


英名のbarredは縞のある、という意味。parrotはオウムですから、青い縞のあるオウムのような魚という意味。沖縄ではアーガイと呼ばれ、愛南ではキバンドウと呼ばれる。オスとメスでは体色が異なり、オスは大きいほど青い部分が多く、8割青じゃん!みたいになる。


最大80cmを越えるアオブダイ属の魚で、パリトキシン様毒による食中毒でお馴染みのアオブダイとは近縁になり、同じような所で釣れる。属を同じくするが毒化しないのはその食性によるもののようで、おそらく補食とする珊瑚の種類が違うのだと思われる。ニッパーのような歯の噛む力はすさまじく、金属製のフィッシュグリップさえ傷になる。絶対に指は出さないこと。


痛いでは済まない


浅い磯際を悠々と泳ぐものだから嫌でも目につくし、何なら補食シーンまでバッチリ見えてしまうが故にこれが見えると仕掛けを上げる釣り人も居るとか居ないとか。


それはひとえに大きな体から繰り出されるトルクはもちろん、デカい図体の割に俊敏なダッシュを見せつけ、一気に仕掛けを磯際の奥へと誘い、高価なウキを海の藻屑とし、仕掛けを一から作り直しさせられるという憂き目をみることになるから。通称、黄色い悪魔。


僕はこの魚の暴力的なまでの引き味はもちろん、丸太のような太さがあって太い柵が取れるし、小骨も無く、食べても最高に美味いという部分が凄く魅力的だと思っており、色味や風体、内容物でかなりの損をしている魚だと思ってます。


引き味はアオブダイ属NO.1間違いなしのダッシュ力を持ち、これが一瞬凄く期待してしまうようなパワーで、磯竿だと簡単にその性能ピーク付近の力を発現させてくれる上、簡単に食ってきてくれるので新しい竿の試運転に最高です。その割にスタミナはあまりなく、三度ほどの締め込みを交わせられたらあとは重いだけという潔さ。


  食材としての素晴らしさ

お腹がいつもパンパンで、巨大な肝臓と下痢の詰まった胃と腸があり、これが100%台所で割れて大惨事になる。肝臓は見たらフォアグラか?と間違えるような美しさだが、これが最悪な味(磯に砂撒いて集めたような味)でそれほどの大きさの肝臓が必要なほど何かを代謝している…と考えたら絶対に何か有毒なものを処理しているとしか思えない訳で、いくらヒブダイであってもアオブダイ属の魚なので食べない方がいい。


胃腸にはそのニッパーのような歯で齧り砕いた固着生物の残骸が砂粒以下の大きさになって入っており、沖縄の星の砂等はアオブダイ属の魚が食べた珊瑚のうんちだと言われている。大きな口の割に凄く細かい内容物なので、「良く噛んで食べよう!」のポスターには適任かもしれない。貝とか悪くなると凄く臭いと思うんですが、内臓を二日もゴミ箱に入れていると酷い悪臭が漂うため、お腹は全部現地の鳥のご飯にしてあげるのが良いと強く思うね。


血抜きはしてもしなくてもそれほど臭いが残らないタイプの魚ですが、抜いておいた方が白身の綺麗さが良いです。


ブダイ科なので、粘液のぬるぬるが凄く、排水口が詰まりがちです。まな板にも残りがちで残ると生臭くなるため、落としきってから捌くべきです。このぬるぬるはお酢をかけるとキシキシとした感じに固まるので、洗う際はお酢をかけて洗ってください。


血抜きしたもの。完全には抜けなかった。

鱗をはがした後、柵に取ると何だか既視感が…


オレンジの皮膚に青の縞…



モンスターハンターよりティガレックス

気付いてからずっとこれにしか見えない。という小ネタ。

さて、味の方はというと、沖縄の方ではアーガイとして高値が付くこの魚。やっぱりかなり旨くて見た目とのギャップにかわいそうになる。

刺身は、それほど締まった身ではないが、血合いがほぼ無く、旨味はちゃんとありながらも、癖とか独特の風味というのがない。言うなればプリプリしてないハタ。身に少し筋の入ったハタ。オオモンハタとかアオハタとかみたいな少し安めのハタね。皮目は火を通すと凄く旨味があるけれども、見た目がよろしくならないので外してしまえばいいと思う。養殖のタイなんかよりはずっと美味しい。

加熱調理はムニエルや天ぷら、唐揚げ、どれも最高で、特に磯辺揚げにするのが好きです。身質はブダイとは違い、加熱してもフワフワとしてジューシー。この身質を生かすため、天ぷらなんかは分厚めに切る。そして皮は必ず残す。こうすることで皮のゼラチン質の旨味を保ったまま、ジューシーな旨味をフワフワとした身に保つことが出来る。また磯辺揚げにすると皮の風味と海苔の風味
が最高にマッチして何個でも食べられる。天丼にしてもやっぱり最高にご飯が進む。

分厚めの磯辺揚げ最高

ムニエルも皮は絶対残す。身に脂が乗らないため、脂を補う料理との相性が凄まじい。フワフワとした身質のまま、厚い皮がパリッとして、バターがその身に溶け込む。まずいわけがない。

煮付けも分厚い皮から溶け出すゼラチンとフワフワした身に入り込む醤油と砂糖のハーモニー。ベラ系の煮付けの感じになる。

水炊きに入れるとトロッとした皮目が水分を含んでプリッとした身に旨味を加える。これも当たり前に美味い。

この魚は臭いが無く、分厚いゼラチンの皮と火を通しても締まらないフワフワした身という美味しくなる要素を兼ね備えている超優秀な魚なので、沖縄の人達がアーガイとして重宝してきた気持ちがわかる。青魚の臭いとかダメって人が食べてみたら世界が変わると思う。少なくともスーパーで手に入る白身の魚よりは間違いなく美味しいので一度食べてみてほしい。

…でも人気が出てみんな狙うようになったらそれはそれで嫌かも知れない。