原題「IF BEALE STREET COULD TALK」
もしビールストリートで(を?)話せたら、みたいな訳になるのかな?
ビールストリートでの黒人を取り巻く環境で起こる物語です。
原題からみるに、あまり公に語られない事実がここにあるのかな?
印象的なのは登場人物のたばこの煙が綺麗だった事だ。
一連の事件の中で、現在のシーンに過去のシーンが挿入されながらの構成。
一番最初の黄色に色づいたシーンは一体いつの話なんだろう?
そんな事が気になった。
この映画を深く楽しむためには、ビールストリートについて、そこにある黒人の歴史について知らないといけないと思うが、僕は全然知らない。
歴史的背景を知る事によって何倍にも自分にとって価値ある映画になるという経験は、少しだけならあるから、こういう映画を見ると自分が腹立たしいし、残念にも思う。
映画を通して知る事もできるが、それは映画で伝えたいと思ってる事のほんの一部だろうと思う。
この映画で知った事は、ビールストリートの黒人たちは、白人に搾取されていた事。理不尽が常に起こっているという事。
今の日本で、これを実感としてとらえる事はなかなか難しい。
仕事先の理不尽な先輩の態度や怒りなんてカスに思える。先輩がいくら怒っても、牢屋に5年入る事なんてないんだから。
映像の美しさには息をのむほどだった。
クリアでシャープすぎる映像が、時折出てくる黒人迫害の昔の写真と差がありすぎて、違和感だった。映画の世界からポッと抜けちゃった感覚になる。
何故だかわからない、ママのアップも綺麗だったし。ファニーの友達のフランク(だったような?)のアップなんて、この映画の中で一番綺麗に映っていたんじゃないかと思う。
ティッシュを献身的に支える家族が描かれないのは少し残念だった。
最後の方ファニーがなぜ急に獄中で涙を流しテイッシュに大丈夫だと何度も言い聞かせていたのかもわからなかった。
あのいわゆる覚醒のようなモノはなんだったのか。
ファニーが彫刻を掘ってる姿を神々しく映すなら、あの覚醒に至るまでをキチンと映像化してあげた方が良かったと思う。
入信しているママとその子供達についての表現がとても興味深かった。
深く入信する人を恥ずかしいと感じている人がいるという事だ。
日常からミサに行き、クロスを身につける人たちの環境においてもそういう人たちがいるという事は、とてもリアルだと思った。
黒人の人たちがアメリカで差別され迫害されてきた事は、浸透している。
こういった映画で表現される事は、もう周知されている事でもあると思う。
何度もやる意義は、忘れないためか。
観た後に残る余韻は寂しさだった。