人類の物語 ─『21 Lessons』(ユヴァル・ノア・ハラリ)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 力のこもった文章を読むと、伝えたいことがたくさん出てきます。

 今回、出会ったのは、ユヴァル・ノア・ハラリさんの『21Lessons』です。

 

 ハラリさんは、現代の世界を「物語のない世界」だと言います。

 

 ・・・私たち人間は、選択肢として、1938年には、三つのグローバルな物語を提示され、1968年には、選択肢は二つに減っており、1998年には一つしか見当たらないようだった。そして2018年には、選択肢は一つもなくなっていた。

 ・・・物語が一つしかないのは、あらゆる状況のうちでも最も安心できる状況だろう。すべてが明確そのものだからだ。それが突然、物語がまったくなくなってしまえば、私たちはぞっとする。

 (ユヴァル・ノア・ハラリ、『21Lessons』より)

 

 ここでいう「三つのグローバルな物語」とは、①ファシズム、②共産主義、③自由主義、のことです。

 物語は、「①②③」→「②③」→「③」と淘汰されてきました。しかし、最後に一つ残り、最良のシステムとさえ思われた自由主義も、いまや安心できるものではなくなってきています。

 信じられる物語のなくなった今、私たちは、何を信じればいいのか。どこへ向かおうとしているのか。

 

 今回から何回かにわたって、『21Lessons』の中の言葉を取り上げ、世界について、人間について、自分についてなど、考えていきたいと思います。