コペル君は、友達が上級生にからまれているときに、知らんぷりをしてしまいました。コペル君は、そのことをずっと悔やんでいます。
ある日、そんなコペル君に、お母さんは、自分が子どもの頃の話を語り始めます。
荷物を持って石段を登るおばあさんに、声をかけようかどうか迷ったこと。
何度もそのチャンスがあったにもかかわらず、結局声をかけることができなかったこと。
そして、人生で出会う一つ一つの出来事は一回限りのもので、二度とやり直せないこと。
でも、それは、決して無駄な経験ではないということ─。
「その事だけを考えれば、そりゃ取りかえしがつかないけれど、その後悔のおかげで、人間として肝心なことを、心に沁みとおるようにして知れば、その経験は無駄じゃあないんです。それから後の生活が、そのおかげで、前よりもずっとしっかりした深みのあるものになるんです。」
(吉野源三郎、『君たちはどう生きるか』より)
自分の勇気のなさ、ふがいなさをしっかりと見つめることで、そんな自分を乗り越えようと、次は何か自分を変えることができるかもしれません。もしかしたら、同じように自己嫌悪に陥っている友達の気持ちも、より深く分かる人になれるかもしれません。
時代は戦争へと向かう1937年に世に出たこの本が、今、再び脚光を浴びているのは、乱れた世の中にあっても、未来を創る子どもたちに、人としての大切な生き方を知っておいてほしいという願いからではないかと思っています。
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君たちはどう生きるか (岩波文庫) [ 吉野源三郎 ]
1,067円
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