生活が言葉をつくる ─『「言葉にできる」は武器になる。』(梅田悟司)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 生まれる言葉、消えていく言葉について、先日の朝日新聞「天声人語」に書かれていました。

 「ONE TEAM」が流行語大賞になったこと。一方で、ICカード世代の若者にとって「切符」という言葉が死語になりつつあること。これからは、もしかしたら「電話」「紙幣」「印鑑」という言葉が消えていくのではないかということ─。

 言葉は生活と密接につながっています。生活が変われば言葉が変わる。だから、生活が貧弱になれば、言葉も貧弱になる。読解力の低下がよく話題になっていますが、それも言葉だけの問題ではなく、生活が影響しているのかもしれません。

 

 日本語が本来持っている動詞が衰えている根本的な理由は、実体験が減っているからではないかと考える。

 時間に追われることで、道草を食う、ことがなくなった。

 スマートフォンばかりを見ているため、空を仰ぐ、ことがなくなった。

 最愛の人といつでも連絡が取れるので、やきもきする、ことがなくなった。

 

 こうした体験の減少とともに、動詞は姿を消し、語彙力の衰退を起こしている。

 (梅田悟司、『「言葉にできる」は武器になる。』から抜粋)

 

 便利な世の中が、生活を単純にし、言葉も単純になっている。そんな気がします。