角野栄子さんが子どもの頃、お父さんのあぐらの中にすっぽり入って、お話を聞いていたそうです。
頭の上の方から、「どんぶらっこっこ すっこっこー どんぶらっこっこ すっこっこー」と声がふってきます。節のついた語りと、船のようにゆーらりゆらりと揺れるあぐらに包まれて、いつの間にか眠ってしまう。角野さんとお父さんとの懐かしい思い出です。
私にもよく似た経験があります。
私の父が本を読んでくれたのは、いつもお休み前の布団の中。気持ちよくなって目をつむっていると、父は、私が眠ったものと思って、読むのをやめてしまう。心地よい夢の世界に入りかけていた私は、その子守歌のような父の声が消えると、ふとこちらの世界に戻ってきて、「寝てないよ。」と言う。それを繰り返しながら、いつの間にか眠りに落ちていきました。
角野さんの、このお話の終わりは、次の言葉で締めくくられます。
本を読む子どもが少なくなったときく。それはきっと素敵に本を読んでくれる大人が少なくなったということかもしれない。
(角野栄子、『「作家」と「魔女」の集まっちゃった思い出』より)
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