また、いい本と出会いました。
角野栄子さんの『「作家」と「魔女」の集まっちゃった思い出』です。言葉に夢がいっぱい詰まっています。こんなエッセイを書く角野さんだから、あんなに夢のある『魔女の宅急便』が生まれたのだなあと思いながら読みました。
例えば、こんな話─。
ある時、角野さんが、外国の友人に、漢字の成り立ちについて話していました。
「山」という漢字は、山の形から生まれてきたこと。
「峰」は同じ山でも、険しくとんがっている山をいうこと。
「ほら字を見ただけでもわかるでしょ」
角野さんがそう言うと、その友人はため息をつくように言ったそうです。
「きみたちは言葉の中に絵を持っているんだね」
「そうなの、日本語はね、形を持っているのよ。絵みたいに」
そして、角野さんは、子どもの頃を思い出します。
・・・そこで思い出したのが、まだ就学前、父がよく口にしていた「いろはにほへと・・・」だった。「ちりぬるを」とか、「おくやまけふこえて」とかを口にすると、葉っぱが散る様子や、遠くの山など、しずかな景色が見えるような気がしていた。その後、一年生になって習ったのが「あいうえお」だった。いくら読んでも、音は面白いけど、絵を想像できない。いろはの方がいいのにと思った。今でもそう思っている。
(角野栄子、『「作家」と「魔女」の集まっちゃった思い出』から一部省略して抜粋)
世の中、効率性や合理性が大切にされ、「あいうえお」のように、音に沿ってきちんと整理されているものが多いけれども、でも、そうじゃないところに、いにしえの言葉のような面白さや美しさがあるように思います。
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