お別れまでの大切な時間 ─『長いお別れ』(中島京子)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

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日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

『長いお別れ』

かつて中学校の校長を勤めていた東昇平は、認知症と診断されます。

しだいに症状は進み、20年間住んだ家の住所も、妻、という言葉も、家族、という言葉も忘れてしまいますが、「たしかに存在した何か」が、家族をつなぎます。

そして、昇平は亡くなる直前まで、さかさまにしたまま、お気に入りの本を読み、最後は家族に見送られながら旅立っていきます。

 

「『長いお別れ(ロング・グッドバイ)』と呼ぶんだよ、その病気をね。少しずつ記憶を失くして、ゆっくりゆっくり遠ざかって行くから」

 (中島京子、『長いお別れ』より)

 

 

この本を購入したきっかけは、この表紙の絵が、私の父にそっくりだから。

しかも、父も元校長先生。

まだしっかりしているとはいえ、80歳を超えています。

 

昇平の「長いお別れ」は10年間でした。

もしかしたら、父との間に残されている時間は、そんなに長くないのかもしれません。