『さよならは小さい声で』と『八月の鯨』 | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 紹介されている本の言葉も、紹介している葉菜さんの言葉も、きれいで、心ひかれました。

「わたしね、この物語みたいに、
なんにも起こらない普通の生活というのかしら、
そんな生活の中にある小さな幸せとか、喜びとか、
なんてことない楽しさとか、
そういうのがほんとうに好きなの」
 (葉菜さんのブログに紹介されていた
  『さよならは小さい声で』(松浦弥太郎)より)

 

 学生の頃に見た『八月の鯨』という外国の映画を思い出しました。

 二人の女性の淡々と過ぎていく日常を描き、結局、お目当ての鯨も見れずに終幕。

 この映画を薦めてくれた人と一緒に見ていたのですが、失礼にも私は、

「え、これで終わり? どこが面白いの?」

と口にしてしまいました。

 でも、その人は、にこにことしながら、

「“ゆうさん”も、こういう映画がいいって思える日が来るよ」

と答えてくれました。

 

 あれから30年。

 自分では「おもしろくない映画」の部類に入れたはずなのに、『八月の鯨』の最後のシーン ─二人の女性が海を眺める映像─ が強く印象に残っています。

 今、もう一度この映画を観たら、あの頃とは違った感慨が生まれるのでしょうか。

 

 もう一度、観てみたい『八月の鯨』。
 読んでみたい『さよならは小さい声で』。