定年退職したら、
─自分の時間がたくさんある。
─職場の上司に気を遣わなくていい。
─孫をかわいがる、いいおじいちゃんになる。
しかし、事はそんなに単純ではないようです。仕事に打ち込んで来た人ほど、その時間が輝いて見える。そして、自分の居場所は、そこにしかないように思えてくる。 『終わった人』の田代荘介もその一人でした。
私もいずれ定年退職したら、同じように思うのかも知れません。
「あの頃は輝いていた」と。
でも、思い出は美しく見えるものです。
「思い出と戦っても勝てねンだよ」
(内館牧子、『終わった人』)
だから不毛な戦いをせず、私はやっぱり、定年退職したら、
─孫をかわいがる、いいおじいちゃんになる。