前回の記事は、ゲーテの描いた戯曲『ファウスト』でした。
悪魔に魂を渡したファウストが、最後は神に救われるという結末。
今日、紹介するのは、もう一つの「ファウスト」、ゲーテの『ファウスト』の元となった話です。
ゲーテの時代を遡ること200年余り。ドイツには「ファウスト伝説」がありました。
知識欲旺盛ファウストは魔法で悪魔を呼び出し、「24年間は悪魔の援助を受けて、地上のあらゆる知識と快楽を得る代り、期限がきたら、魂と肉体を悪魔の自由にまかせる」という契約を結びます。
24年間、ファウストは、メフォストーフィレスを従え、大胆に瀆神の行為を続けます。
しかし、24年間が過ぎた後、ファウストの嘆きと後悔も空しく、その生命は一瞬のうちに断たれ、彼の魂は地獄に堕ちて永劫の罰を受けるのでした。
最後、神に救われるファウストと、悲しい結末を迎えるファウスト。
私が惹かれるのは、後者のファウスト、つまり「ファウスト伝説」の方です。快楽の時間が限られているが故、そのときのファウストの心情にとても共感できるのです。例えれば、子供の頃、いずれ必ず終わりを迎える夏休みの日々が、かけがえなく貴重で、いつまでも続いてほしいと願っていたような気持ではないかと思うのです。