人間らしい会話って ─『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』(川添愛)その2─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

パターン化された会話は、ロボットのよう(前回のブログ参照)。

では、人間らしい会話って何なのでしょう。

その答えの鍵の一つは、「相手の思いや意図を慮ること」です。

次の話で考えてみましょう。

 

魚也は、別の湖に住むガールフレンドの魚香にブランド物のポーチをプレゼントすることにしました。

魚也はロボットにプレゼントを託し、プレゼントを受け取った魚香の感想を聞いてくるように命じます。

ロボットは、言いつけ通り、魚香にプレゼントを届けます。

 

魚香「えっ! 魚也さんからプレゼント!?」

 魚香はプレゼントを開封するなり大喜びでこう言いました。

魚香「サンマサ・サバサのポーチだ! しかも、これ、私がずっと欲しかったやつじゃない! もう、私をこんなに驚かせるなんて、魚也さんって、本当に憎いひとだわ!」

 ロボットは、魚也さんのところに帰り、魚也さんにこう伝えました。

ロボット「魚香さんは、『これは、私がずっと欲しかったやつではない。魚也さんが憎い』と言いました」

(川添愛、『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』より)

 

・・・悲惨な結果です。

言葉尻だけを捉えれば、ロボットのようにも取れるでしょう。

でも、相手の状況、表情、雰囲気、言葉の抑揚、いろいろなことから、文字面だけではないところまで考えられる。それが人間だけのなせる会話です。

 

名役者は、目のかすかな動きだけで、悲しみや驚きが表現できると言われます。

一方で、それをきちんと読み取れる受け手側の感性も同じくらい大切です。

両方あって、初めて意思疎通ができるわけですから。