会話って、何? ─『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』(川添 愛)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 言葉がわかるロボットを作ろうと、イタチたちはカメレオン村へ行きました。

 すると、カメレオン村には確かに、カメレオンと会話をしているロボットがいました。

 でも、よく聞いていると、そのロボットは、あるきまりに従って話しているだけのようなのです。

 例えば・・・

 

①相手の言うことを繰り返す。

(例)「最近、食欲がないんです。」→「ほう、最近食欲がない、と。」

 

②もっと話すように促す。

(例)「ほほう、もっと聞かせて下さい。」「具体例を挙げてもらえますか?」など

 

③相づちを打つ。

(例)「ふむ、それで?」「それは大変ですね。」など

 

④その他、定型的なやりとりをする。

(例)「最近どう?」→「まあまあだよ。」

   「もう、ムカつくんだけど。」→「怒られた~。ぐすん。」

 

 その仕組みが分かったイタチたちは、文句を言います。

「相手が言ったことの中身をちゃんと分かってるわけじゃないし、本当に思っていることを言ってるわけでもない。ああ、だまされた」

 それに対するカメレオンの答えがこれ。

 

「そう言うけど、あんたたち自身はどうなのよ? 会話をするとき、いつも『相手の言ったことの中身をちゃんと分かってる』の? そして、いつも『本当に思っていること』を話してるの? 適当に相づち打ったり、適当なことを言ったりしないわけ?」

 

 身につまされます。

 ロボットを「機械的」というけれど、自分たちもまるで機械のようになってしまっていないか─。

 

 では、ロボットではない、人間らしい会話とは、どんな会話か。

 それは、また次回、考えてみましょう。