オトナの生き方 ─『白髪のニール』(重松清)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 子どもが生まれ、なぜかロックを始めた「先生」。でも、先生が求めていたのは、ロックではなく、「ロール」でした。

 先生は言います。

 

「ロックは始めることで、ロールはつづけることよ。ロックは文句をたれることで、ロールは自分のたれた文句に責任とることよ。ロックは目の前の壁を壊すことで、ロールは向かい風に立ち向かうことなんよ」

 じゃけん、と先生はつづけた。

「ロールはオトナにならんとわからん」

 

 大人になった「僕」は、白髪になってもステージでギターを弾く先生に語りかけます。

 

 転がり続けること。

 生き抜くこと。

 センセ、ボクはロールしよりますか。キープ・オン・ローリングしよりますか。

 止まってしもうとっても、もういっぺん動き出したら、まだ間に合いますか。

 

 止まらないということ。終わらないということ。生き抜くと言うこと。

 ずっと見ていないと、一瞬見ただけでは、それは気付かれません。目立たないけれど、「止まらない」「終わらない」「生き抜く」ことは、やっぱりオトナの生き方だと思うのです。