やさしい勇気 ─『モチモチの木』(斎藤隆介)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

峠の猟師小屋に、じさまと二人暮らしの豆太。臆病者の豆太は、ひとりで雪隠にも行けません

ある日の真夜中、じさまは腹痛で苦しみ始めます。豆太は、必死で、真っ暗の山道を駆け下り、ふもとのお医者さまを呼びにいきます。霜が足にかみついても、こわくても、走り続けます。じさまが死んじまうほうが、もっとこわかったから。

何とかふもとにたどり着き、お医者さまにおぶわれて小屋に戻った豆太は、家の前で不思議なものを目にします。

「モチモチの木に ひがついている!」

でもお医者さまは、それはモチモチの木の向こうで光る月と雪だ、と答えます。

次の朝、元気になったじさまは豆太に言います。
おまえは、勇気のある者しか見えない、山の神さまの祭りを見たんだ、と。


さっき、帰路の途中、夜空を見上げたら…

モチモチの木に ひがついていました。

神さま、私にも、豆太のようなやさしさと勇気をください。